鍋のふたを開けると、まず酢のつんとした香りが立ち、そのあとから赤唐辛子の辛さと、骨付き鶏肉の湯気が上がってきます。濃い色のしょうゆと酢の煮汁で、鶏肉をゆっくり煮込む。カドゥン・ピカは、そんなチャモロの鶏の煮込みです。北マリアナ諸島のロタ島の市長室(Office of the Mayor of Rota)は、これを辛い鶏のシチュー(spicy chicken stew)として、島のチャモロ料理の一つに挙げています。
酢の酸味、しょうゆの塩気、唐辛子の辛さを、ココナッツミルクで丸くする
酢の酸味、しょうゆの塩気、唐辛子の辛さを、骨付きの鶏肉にじっくり煮含めます。仕上げに、火を止めてからココナッツミルクを混ぜて角を丸めます。火が通ったかどうかは、時間ではなく肉の中心の温度で判断してください。
この記事のレシピは、グアム日本人会が掲載している家庭の一例にそろえています。鶏肉を約5cm角の骨付きに切って油で焼き色をつけ、玉ねぎ、にんにく、黒こしょう、水、酢、しょうゆと一緒に弱火で約1時間煮て、火を止めてからココナッツミルクを加える、という流れです。材料も作り方もこの一つの資料でそろうので、ほかの家庭の分量は混ぜず、そのまま使います。
このレシピは、編集部ではまだ台所で試作していません。分量と1時間の煮込みは原典のとおりです。唐辛子を入れる時点など、原典に書かれていない細部は編集部の判断で補っていて、その箇所にはそう明記しています。
名前の綴りは、Kadun pika、Kadon pika、Kådun pika などがありますが、どれも同じ料理を指します。グアム日本人会の説明では、kadon はシチュー、pika は辛いという意味です。
ロタ島とカドゥン・ピカ — 島の紹介に名前が挙がるチャモロ料理
ロタ市長室は、島の食文化をいくつもの影響が出会ったものとして紹介し、その中でチャモロ料理の一つとしてカドゥン・ピカを挙げています。ただ、そのページが説明しているのは料理の内容までで、レシピや、この料理がどこで生まれたかは書かれていません。そのため、この記事はカドゥン・ピカをロタの発祥とは書きません。以下のレシピを、ロタの標準的な配合とも呼びません。
レシピそのものは、グアム日本人会が紹介した家庭版です。同会はこれをグアムの人気のローカルメニューとして紹介し、家庭ごとに唐辛子の数を加減することにも触れています。地域の背景(ロタ)とレシピの出どころ(グアムの一家庭)は別々の資料に基づくので、ここでも分けて書いています。
同じ名前でも鍋の中身は違う — 家庭ごとの違い
カドゥン・ピカに、これが唯一という配合はありません。公開されている版を見比べると、ココナッツミルクの量や辛さが家庭によって大きく変わることがわかります。
| 版 | 特徴 | この記事での扱い |
|---|---|---|
| グアム日本人会(K.P.さんの家庭レシピ) | 鶏肉2 pounds、ココナッツミルク1/2 cup、赤唐辛子2〜4本、ココナッツミルクは火を止めて加える | この記事のレシピ |
| Guampedia(Frances Reyesさんのレシピ。1985年のグアムの料理本から許可を得て再掲) | ココナッツミルク1 cup、donne'(唐辛子)は任意、煮汁の脂を取り除く別工程あり | 比較のみ |
| Annie's Chamorro Kitchen(Carolynさんの版) | Tabasco(大さじ2)とタイ唐辛子8本を使い、白いご飯と食べる | 比較のみ |
ほかの2つの版は、この料理の幅を知るうえで参考になりますが、分量は下のレシピに混ぜていません。試してみたい場合は、その資料を別のレシピとして、最初から最後まで通して作ってください。
途中で見つける、味の決め手
道具
- フタ付きの厚手鍋
- 食品用温度計(瞬間読み取り式)
- 唐辛子、玉ねぎ、にんにくを切る包丁とまな板
- 鍋を火から下ろして置く、鍋敷きなどの耐熱の台
選び方と代用
- 鶏肉:丸鶏を約5cm角の骨付きに切ります。家庭で骨を叩き切るのは手間もかかり、危なくもあります。骨付きのぶつ切りになったものを買うか、店で切ってもらうほうが安全で楽です。量は2ポンドのままにします。
- 酢:クセの少ない普段使いの酢を使います。果実や米の香りが強い酢は、鍋全体の香りを変えます。
- しょうゆ:減塩しょうゆを使います。通常のしょうゆを使うと塩気が強く出ます。初回は量を変えず、結果を見て次回に調整してください。製品ごとの味がわからないまま量を変えるのは避けます。
- 赤唐辛子:生の赤唐辛子を刻み、煮汁と一緒に入れます。辛さは品種や個体で大きく違うので、まず下限の2本から始めてください。
- ココナッツミルク:缶やパックの無糖のものを使います。加糖のココナッツドリンクは使いません。
しょうゆには大豆や小麦を含む製品が多く、この料理にはココナッツミルクも使います。購入する製品の表示を確認してください。
うまくいかないとき — 焦げ、塩気、辛さ、火通り
| 困りごと | 考えられる原因 | 対処 |
|---|---|---|
| 鍋底が焦げつきそう | 火が強い、または煮汁が煮詰まっている | 火を弱め、煮込み中はふたを保ち、必要に応じて開けて煮汁の状態を確かめる。水を足すのは原典にない編集部の調整なので、少しずつ |
| 塩辛い | しょうゆ製品ごとの塩分の違い。減塩ではなく通常のしょうゆを使った場合に出やすい | 今回は白いご飯を多めに添える。次回は減塩しょうゆを使うか、今回の結果をもとに量を調整する |
| 辛すぎる | 唐辛子の品種、大きさ、刻み方 | 次回は下限の2本から始める |
| 中心が75°Cで1分間に届かない | 身が厚い、または火が弱い | ふたをして加熱を続け、いちばん厚い身をもう一度測る |
| 甘い味がする | 加糖のココナッツ製品を使った | 次回は無糖のココナッツミルクを使う |
火を止めた完成後の鍋に生の唐辛子を足す方法は、原典の手順にはありません。辛さを足したいときは、次回、手順4の唐辛子の本数を変えてください。
残り物と温め直し
この料理に固有の保存期間は確認できていないため、ここでは日数を示しません。残った分は、日本の厚生労働省の家庭向けの一般的な案内に沿って扱ってください。浅い清潔な容器に小分けして、早く冷まして冷蔵し、温め直すときは十分に加熱します。これは残り物全般の目安で、カドゥン・ピカで検証された保存期間ではありません。
資料の範囲でできる変化
- 辛さを抑える:このレシピの範囲の下限、唐辛子2本にします。
- ココナッツミルクを多くする:Guampediaが再掲する1985年のグアムの料理本の版は、ココナッツミルクが1 cupで、donne'は任意、煮汁の脂を取り除く工程もあります。ここで1つだけ分量を変えるのではなく、その版を別のレシピとして作ってください。
- もっと辛く、Tabascoを使う:Annie's Chamorro KitchenのCarolynさんの版は、Tabasco大さじ2とタイ唐辛子8本を使います。別の家庭のレシピで、上のレシピの調整ではありません。
ココナッツミルクを使わない版がほかの家庭にあるかもしれませんが、この記事のレシピではココナッツミルクを料理の一部として使います。
よくある質問
カドゥン・ピカとカドン・ピカは別の料理ですか?
いいえ。Kadun、Kadon、Kådun は同じ料理の綴りの違いです。グアム日本人会は、kadon はシチュー、pika は辛いという意味だと説明しています。
ココナッツミルクは必須ですか?
家庭によって違いますが、この記事がもとにした版は、火を止めてからココナッツミルク1/2 cupを混ぜます。
唐辛子は何本入れればよいですか?
原典は赤唐辛子2〜4本です。辛さは品種や個体で大きく変わるので、まず2本から始めるのが無難です。
どのくらい煮ますか?
原典は、ふたをして弱火で1時間煮ます。火が通ったかどうかは、いちばん厚い身の中心を温度計で測って判断します。このレシピでは、75°Cで1分間以上です。
何と一緒に食べますか?
資料に挙がっている例は、温かい白いご飯です。ほかの組み合わせは確認できていないので、おすすめしません。













