ブイヨン・ダワラ:復活祭の家族を支える橙色の鍋
この鍋で守りたいのは、アワラの果肉の深い橙色、長くじっくり煮る時間、塩漬けや燻製の肉の旨み、そしてたっぷりの野菜です。材料はそれぞれ入れるタイミングが決まっているので、分量と同じくらい順番が大切です。
フランス領ギアナのレシピサイト「Ti Molokoy」を書くサブリナ・フランソワ=ヴァンサンさんは、家族の復活祭をこう振り返っています。実を集め、果肉から汁を取り、その液を大鍋に入れて薪火で一晩煮る。朝になったら燻製肉を加え、甲殻類や貝類は別の鍋で煮る。そして昼に、家族みんなで食卓を囲む。これはあくまでこの家族の記憶で、すべての家庭の決まりではありません。それでも、時間と大きな鍋と分け合う人を必要とする料理だということは伝わってきます。
ブイヨン・ダワラは、現地のクレオール語で bouyon wara と呼ばれます。主役は、アワラヤシ(Astrocaryum vulgare)の果肉です。熟した実は橙色で、果肉は生で食べたり、このクレオール風のブイヨンに使ったりします。フランスの公式観光サイト France.fr は、アワラの果肉で作るブイヨンを、フランス領ギアナの典型的でよく知られた料理の一つに挙げています。
同じ筆者によると、いまはペーストを買ったり家族から分けてもらったりして、ふつうの家庭用コンロで煮ることもあるそうです。このあとのレシピは、筆者が公開している家庭版の分量、順番、時間をそのまま写したものです。一つの家庭のレシピであって、唯一の正解ではありません。
途中で見つける、味の決め手
選び方と代用
二つの「きゅうり」は、ふつうのきゅうりではありません。 concombre piquant と concombre longe は、直訳すると「辛いきゅうり」「長いきゅうり」に見えますが、どちらの読み方も当たっていません。
- concombre piquant:レシピ筆者は Cucumis anguria と同定しています。表面に小さなとげのある小さな果実です。piquant はこのとげを指す言葉で、辛さや唐辛子のことではありません。この料理が辛くなるわけでもありません。ナイフでとげをこすり落とし、四つ割りにして種を取り、すすいでください。
- concombre longe:学名 Lagenaria siceraria、英名 bottle gourd(日本名ではユウガオ)で、食用の長形ユウガオ類にあたります。ただし、日本で売られているユウガオ類が同じ品種で、同じ食感だという保証はありません。皮をむいて種を除きます。
どちらも、300gのふつうのきゅうりに黙って置き換えるのはやめてください。別の鍋になってしまいます。
アワラペーストには代わりがありません。 風味と色の両方を担っていて、根拠のある代用品は見つかっていません。フランス領ギアナの外でアワラペースト、燻製鶏、燻製魚をどこで買えるかは確認できていないので、店や商品は挙げません。ペーストが見つからないときは、工夫して代用するより、手に入るまで待つほうがよいでしょう。
boucané は「燻製にした」という意味です。 燻製鶏はローストチキンとは別のものです。何を買う場合も、ラベルで「加熱してから食べる」製品かどうかとアレルゲンを確認してください。
ほうれん草(épinards)を使います。現地で使われるすべての葉物と同じだとは言えません。
道具
鍋の底から混ぜられる大きくて厚手の鍋が要ります。
- 大きな厚底鍋:ペースト、肉、魚、野菜がすべて入り、混ぜる余裕も残る大きさ
- 鍋底まで届く木べらか耐熱ヘラ
- 豚尾を一晩浸けるボウル
- 包丁とまな板
このレシピはふたをしない通常の鍋で煮る前提で、圧力鍋用には書き換えていません。
うまくいかないとき
鍋底の焦げつきや塩辛さが気になるときは、底から混ぜることと前夜の塩抜きを確認してください。
| 困りごと | 考えられる原因 | 戻し方 |
|---|---|---|
| 鍋底が焦げつきそう | 濃いペーストが底に溜まっている | 長い煮込みのあいだ、原典のとおりときどき鍋底から混ぜる |
| 塩辛い | 豚尾の塩抜きが足りない | かぶる量の水に冷蔵庫で一晩浸し、水を捨ててすすぐ。原典に塩加減の調整はないので、塩を足す前提にしない |
| 野菜がまだ硬い | 時間は目安であって保証ではない | 食感で判断する。手順8の前に、なす、ウリ類、青菜が十分柔らかくなっているようにする |
| 魚がくずれる | 入れたあとに強く混ぜた | そっと混ぜ込み、火は弱火のままにする |
| 燻製肉に火が通っているかわからない | 製品によって違う | ラベルに従う。加熱が必要なら中心まで熱くする |
原典の範囲での変え方
- 任意の豚バラを省く。 原典は燻製豚バラ(boucané)500gを任意としていて、この基本版では省いています。手順3の燻製豚バラ200gは別の必須材料なので、残します。
- 家庭用コンロで作る。 筆者の家族の記憶では薪火で一晩ですが、公開されている版は家庭用コンロです。
- 甲殻類や貝類を別鍋で。 筆者の家族は、甲殻類や貝類を別の鍋で煮ていたそうです。これは別の家庭の習慣で、このレシピの材料表には入りません。
- アワラがなければ、ブイヨン・ダワラにならない。 ペーストの根拠ある代用品がないので、この記事では代用を勧めません。
復活祭、家族、共同体
ギアナ大学(Université de Guyane)は、ブイヨン・ダワラを、復活祭のころに用意され、家族や共同体を結びつける料理として紹介しています。アワラヤシを研究する同大学のWARAプロジェクトは、この料理の作り方や周りの習わしを記録しています。復活祭との結びつきが強いからといって、ほかの時期に食べないとは限りません。ただ、資料はそこまでは述べていません。
IRD(フランス開発研究所)の資料庫にある、フランス領ギアナのボニ(Boni)の人びとの植物利用の記録には、Astrocaryum vulgare の現地名として Awara が挙がっています。熟した実が橙色であること、果肉を生で食べるか、クレオール風のブイヨン・ダワラに使うことも記されています。ギアナ観光局の郷土の味の案内は、この料理をアワラの実を使うクレオール料理の一つとして紹介し、米と生・塩漬け・燻製の肉や魚がギアナの食卓によく並ぶと説明しています。France.fr は、フランス領ギアナの料理を複数の大陸の影響を受けたものとして紹介していますが、これは料理全体についての一般的な説明で、この鍋の由来を語るものではありません。
名前の由来も、考案者も、単一の歴史的な起源も、これらの資料では確かめられていません。そのため、この記事では何も断定しません。家庭ごとに違うのは、果実から汁を取る方法、薪火か家庭用コンロか、どんな燻製肉や野菜を入れるか、甲殻類や貝類を加えるかどうかです。ギアナ地域のほかの鍋と比べてみたいときは、ガイアナのメテムギーと、祝いの席のスリナムのポムもどうぞ。
よくある質問
アワラとは何ですか?
アワラヤシ(Astrocaryum vulgare)の実です。熟すと橙色になり、その果肉がブイヨンに使われます。この記事ではアワラペーストの形で使います。
何人分ですか?
原典のレシピは人数の欄が空欄なので、人数は示していません。大鍋1回分の分量と考えてください。
どのくらい時間がかかりますか?
原典は準備40分、調理3.5時間としています。個々の工程(約1時間30分、約30分、約30分、30〜40分、約20分)を足すと、約3時間20〜30分です。豚尾の塩抜きは前夜に、別に済ませておきます。
concombre piquant は辛いのですか?
辛くありません。piquant は小さな Cucumis anguria の実に生えているとげのことで、調理前にこすり落とします。唐辛子のことではありません。
えびやかにを入れますか?
このレシピでは入れません。筆者の家族は甲殻類や貝類を別鍋で煮ていたそうですが、公開されているレシピには含まれていません。
アワラペーストの代わりになるものはありますか?
根拠のある代用品は見つかっていないので、勧められるものはありません。
圧力鍋は使えますか?
原典の器具欄には出てきますが、圧力の設定は書かれていません。作り方はふたをしない鍋のためのもので、この記事もその形で紹介しています。
残りは保存できますか?
レシピに保存の案内はありません。一般的な家庭の食品衛生に従い、浅い容器に小分けして早く冷まし、冷蔵し、十分に再加熱してください。この料理について示せる保存期間はありません。
















