熱したグリルの下から串が出てきます。鶏の縁には焼き色がつき、ところどころ軽く焦げています。別の鍋では、炒めた玉ねぎ、しょうが、にんにく、粉スパイス、ヨーグルト、トマトがストックと一緒に煮詰められ、とろみがついてきました。串から外した鶏をそのソースにそっと混ぜ入れ、すぐに食卓へ。串焼きの鶏ティッカを、別に作ったマサラソースと合わせる。これがチキンティッカマサラのかたちです。
焼いた鶏を、別鍋のソースへ戻す料理
鶏とソースは、最後まで別々に作ります。鶏は強い火で焼き色をつけ、ソースは炒めた玉ねぎ、スパイス、ヨーグルト、トマトでじっくり作ります。温め直したソースに焼いた鶏を入れたとき、はじめてこの料理がまとまります。
この記事は、マドゥール・ジャフリーの著書『Curry Nation』から公開されたレシピに沿っています。4〜6人分で、骨なし鶏もも肉675gを使います。この配合では、鶏をレモン、塩、香味野菜、スパイス、生クリームに漬けてから焼き、ヨーグルトはマリネではなくソースに使います。ジャフリーは英国で広く食べられている料理として紹介し、起源ははっきりしないと述べています。数ある作り方のひとつで、この料理の唯一の標準ではありません。
ひとつの起源話では決まらない
最も知られているのはグラスゴーの説です。シーシュ・マハル(Shish Mahal)の説明では、店主アリ・アハメド・アスラム(Ali Ahmed Aslam)が1970年代、チキンティッカに合うものを求めた客に応じて、トマトスープ、クリーム、スパイスを合わせたとされます。これは店側が語る話です。アスラムの死後に出た2022年の報道も、起源の論争が決着したのではなく、再び話題になったと伝えています。
同じ報道によると、グラスゴーにこの料理の保護された地位を与えようとした申請は、ほかの複数のレストランの異議を受けて退けられました。南アジア起源を主張する人もいます。チキンティッカ自体も、南アジアの広い地域で食べられている料理として説明されています。考案者も場所も、まだ決着していません。
はっきり説明できるのは、一口大に焼いた鶏と、別に煮たスパイス入りのトマトソースを最後に合わせる構造です。家庭で作るときには、起源の物語以上に、この組み立てが仕上がりを左右します。
タンドリーチキンは焼いた鶏そのものが主役で、別のソースはありません。ムルグ・マカニ(バターチキン)はバターを含むトマトソースを土台にした別の料理です。レストランの味や名前が互いに近づくこともありますが、この記事のレシピはバターを使わず、鶏のマリネも生クリームとスパイスが中心です。
この料理に使える食材・調味料
選び方と代用のポイント
- 鶏肉: もも肉が向いています。胸肉でも作れますが乾きやすいため、同じ大きさに切り、安全な中心温度を満たしながら加熱しすぎないようにします。
- 塩: 粗塩と細塩では同じ匙量でも塩気が変わります。重さに換算せず、ソースは最後に味を見て調整します。
- レモン汁は市販の果汁も使えますが、香りは弱くなります。
- しょうがやにんにくのチューブ入りペーストは香りが丸くなり、しょうがのペーストは水分も多くなります。同量での置き換えは出発点とし、製品に合わせて加減してください。
- ホールのクミンは使い方が異なるため、クミンパウダーの単純な代わりにはなりません。
- パプリカは甘口を使います。スモークパプリカでは燻製の香りが前に出て、別のアレンジになります。
- チリパウダーは製品で辛さが異なるため、少ない量から始めます。カイエンペッパーは同量で置き換えず、少しずつ足してください。
- 生クリームは乳脂肪分によって焼き色とコクが変わります。乳製品を使わない代替品は同じ仕上がりにならず、ここでは同等品として紹介しません。
- ガラムマサラは無塩の配合を選びます。カレー粉は配合も香りも異なり、同じ料理にはなりません。
- 油はクセのない植物油でも作れます。オリーブ油は独自の香りが加わります。
- 玉ねぎは黄玉ねぎか茶玉ねぎを使います。赤玉ねぎでは色と香りが変わります。
- ターメリックを省くとソースの色が淡くなります。カレー粉で代えると、スパイス全体のバランスが変わります。
- ヨーグルトは無糖のプレーンを使います。ギリシャヨーグルトは固いので、加えながら少しずつ伸ばしてください。
- トマトは完熟したものが向いています。缶詰は水分や酸味が異なるため、同等の置き換えとせず、ソースの煮詰まり方を見ます。
- ストックは無塩か低塩だと調整しやすくなります。顆粒を使う場合は、その塩分に合わせて塩を減らします。
- カシューナッツ、ココナッツミルク、バター、カスリメティ(乾燥フェヌグリークの葉)は別のレシピに使われますが、この配合には入りません。ナンは任意の付け合わせで、料理本体の材料とは別です。
鶏もも肉、プレーンヨーグルト、レモン、玉ねぎ、トマト、生クリームは、通常のスーパーで探せます。ガラムマサラ、パプリカ、チリパウダーは小袋で十分です。辛さの表示を確かめて選んでください。
このレシピには鶏肉と乳(生クリーム、ヨーグルト)が含まれます。添えるナンには小麦が入っている場合があります。スパイスの配合品やストックは、アレルゲン表示や同じ工場で扱う原材料の表示を確かめてください。
使う道具
- マリネ用の、酸に反応しないボウル(ガラスなど)
- ふた付きの大きめのフライパンかソテーパン
- 長めの金属串
- 串を渡し、肉が天板に触れないよう支えられる天板かラック。使うグリルに収まるか、始める前に確かめます
- 鶏の中心温度を測るプローブ式か瞬間式の温度計
- 生の鶏肉用のまな板、ボウル、トング。加熱済みの食品用とは分けます
竹串はグリルの熱源の近くで焦げることがあります。使う機器に合うと確認できている場合を除き、おすすめしません。
うまくいかないときは
| 状態 | 考えられる原因 | 対処 |
|---|---|---|
| 鶏に焼き色がつかない | 串に詰めすぎた、または表面にマリネが厚く溜まっている | 肉の間をあけ、余分なマリネを落とす。家庭のグリルは火力が違うので、焼き色と中心温度の両方を見る |
| 鶏がぱさつく | 肉の大きさがそろっていない、または火が通ったあとも色をつけようと焼き続けた | 肉を均一に切る。中心が75℃で1分保たれたらソースに移す。やわらかさのために安全の基準を下げない |
| ソースが水っぽい | トマトが煮崩れていない、またはトマトの水分が多い | ストックを加える前にトマトを果肉がくずれるまで炒め、ふたをして弱火で煮る。それでも緩ければふたを外して短く煮詰める。時間は様子で判断する |
| ヨーグルトがざらつく | 一度に入れた、または強く沸騰させた | 大さじ1ずつ混ぜ入れ、激しく沸かさない |
| 辛すぎる | 辛いチリパウダーを使った | 次回はチリパウダーを減らし、マリネは少ないほうの量から始める |
変化をつける
- 辛さを控えめに: チリパウダーを減らします。料理の構造は保たれますが、辛さだけでなく味わいも変わります。
- 胸肉を使う: 脂が少なく、もも肉よりぱさつきやすくなります。均一に切り、中心温度をよく確かめてください。
- オーブンの上火を使う方法は、出典のグリル工程に近い家庭向けの方法です。棚の位置と時間は使うオーブンによります。
- グリルが小さければ少量ずつ焼けますが、串と天板が安全に収まることが前提です。どの回も温度で火の通りを確かめてください。
- パンはソースをすくうのに、ご飯はソースを吸わせるのに向いています。ナンは別のレシピで、任意の付け合わせです。
食卓へ

出典のレシピは、ナンなどのインド系のパンか、ご飯を添えることを勧めています。鶏をソースに入れたら、焼いた面にまだ歯ごたえがあるうちに、すぐ食卓へ運びます。
よくある質問
チキンティッカマサラはグラスゴーで生まれましたか?
グラスゴーのシーシュ・マハルが語る、アリ・アハメド・アスラムの話が最も知られた説です。ほかのレストランはこの説に異議を唱えていて、南アジア起源を主張する人もいます。起源は決着していません。
バターチキンと同じですか?
この記事の定義では別の料理です。レストランの味は近づくことがありますが、このレシピはバターを使いません。鶏は生クリームとスパイスに漬けて焼き、玉ねぎ、トマト、ヨーグルトのソースと合わせます。ムルグ・マカニは別の料理として扱います。
辛さは調整できますか?
できます。チリパウダーを減らせば辛さは下がりますが、元の味わいからは少し離れます。
鶏は何分焼けばよいですか?
出典のレシピは片面約6分ですが、グリルによって違います。決め手は、最も厚い1切れの中心が75℃に達してから1分以上保たれていることです。
乳製品なしで作れますか?
生クリームとヨーグルトを抜くと、味も鶏の焼き色のつき方も変わります。検証した乳製品なしの作り方はここでは紹介していないので、代用品を使ったものを同じレシピとは扱わないでください。
マリネの時間を短くできますか?
このレシピは、塩とレモンの段階のあと、冷蔵庫で6〜8時間置くことを求めています。引用元は短いマリネの時間を示していないので、ここでも示しません。
インドの料理一覧でも、ほかのレシピを紹介しています。














