葉をほどくと現れる、ビンディンの黒くつやのある小さな菓子
ラーガイともち米で黒く、もちもちとした皮。緑豆とココナッツの甘い餡。そして、小さな塔のような先細りの形に折ったバナナの葉の包み。
バナナの葉をそっとめくると、中の菓子はほとんど黒に近く、やわらかなつやをまとっています。よく伸びるもち米の皮をかみ切ると、緑豆と細切りココナッツの餡が現れます。ベトナム中部のビンディン(Bình Định)では、この小さな甘いお菓子が食事の締めに出されます。ベトナムの文化を紹介する記事には、熱いお茶と一緒に楽しむと書かれています。
bánh ít という名前が指すお菓子は一種類ではありません。たとえばバイン・イット・チャン(bánh ít trần)は、葉で包まずにむき出しのまま蒸す菓子で、えびと豚肉の塩味の餡を入れることもあります。この記事で扱うのは、そのうちのひとつ、バイン・イット・ラーガイ(bánh ít lá gai)です。生地にラーガイ(ramie の葉)を混ぜて色と香りをつけ、緑豆とココナッツの甘い餡を入れ、バナナの葉で包んで蒸します。塩味の餡や、葉で包まずに蒸すタイプはここでは混ぜません。
レシピは、ホーチミン市の経済・観光系の専門学校 CET が公開している、ひとつの版に沿っています。そのページは製菓の講師の名前を挙げ、材料の分量と手順をまとめて載せています。ただし何個できるかは書かれていないため、この記事でも収量・個数・何人分かは示しません。このレシピは、まだ台所での試作をしていません。とくに、ゆでた葉が生地に持ち込む水分の量、1個あたりの重さ、最終的にできる個数は未確認です。
CET のページとは、小さく違う点が2つあります。手順には「少しの」しょうがと一緒に葉をゆでるとありますが、材料表にしょうがの分量がないため、ここでは代わりも立てずに省いています。また油は、バナナの葉の内側に薄く塗るためだけに使い、生地には入れません。
同じ国のほかの料理は、ベトナムのページからどうぞ。
この料理に使える食材・調味料
選び方と代用
ラーガイ(ramie の葉)はこのお菓子の核心で、ベトナムの外ではいちばん探しにくい材料です。ベトナムや東南アジアの食材店で「lá gai」と聞いてみてください。乾燥した粉末のラーガイもありますが、生葉500gを粉末に置き換える比率は確認できていませんので、重さをそろえて入れ替えることはできません。粉末を試すなら、この種の菓子に向けたメーカー自身の使い方が必要です。ヨモギなど色の似た葉で同じ仕上がりになるわけではありません。正体のわからない野草は絶対に使わないでください。
もち米粉は、まず「もち米粉(bột nếp)」と表示された粉を探します。日本のもち粉や白玉粉など、ほかのもち米系の粉は粒の細かさや吸水の度合いが違い、このレシピで同じように働くとは言えません。
緑豆は、皮をむいて割った緑豆(ムングダールとして売られることもあります)を使います。緑色の皮が付いた丸ごとの緑豆は状態が違い、作り方が変わってしまいます。
ココナッツは、成熟したココナッツの果肉を細く切ったものを使います。包装されたドライやデシケーテッドココナッツは水分量が違い、同じように使えるかは確認できていません。加糖のココナッツ製品は甘さも変わります。買う前にラベルを読んでください。
砂糖の150g+150gという分け方も配合の一部です。減らすと皮も餡も質感が変わり、別のレシピとして試し直す必要が出てきます。
バナナの葉は、アジア食材店の生または冷凍のものが包みに使えます。葉が破れたときにクッキングシートで形を保つことはできますが、葉の香りと見た目が失われるので、同等ではなく代案と考えてください。
道具
- 大きな鍋とざる(葉をゆでて水を切る)
- 包丁とまな板
- ブレンダーまたはフードプロセッサー
- 生地をこねる大きなボウル
- 餡を弱火で乾かすための鍋やフライパン
- 蒸し器(または蒸し台とふた付きの鍋)
- 葉に油を塗る小さなはけ
失敗したときの対処:生地・餡・蒸し
このレシピでいちばん確かめられていないのは水分です。ゆでた葉のペーストが生地にどれだけ水を持ち込むかは分かっておらず、まだ台所で試作していないため、実測にもとづく直し方は示せません。
| 問題 | 考えられる原因 | 対処 |
|---|---|---|
| 生地がべたついて成形できない | 葉のペーストに含まれる水分が、粉の吸える量より多い | 粉を足して様子を見る、という当て推量はしないでください。水を切った葉とペーストの重さを記録しておくと、このレシピを確定させる手がかりになります。成形できないときは、このレシピをつぎはぎするより、材料と手順がすべて明示された別のレシピを選ぶほうが確実です |
| 包むときに生地が割れる | こね足りない、または厚みが不均一 | なめらかで均一になるまでこね、丸く広げた生地の厚みを全体で同じにそろえる |
| 餡がべたついてだれる | 鍋での乾かし方が足りない | 弱火に戻してかき混ぜ、冷ましたときに形を保つまで乾かす。ココナッツを混ぜるのは冷ましてから |
| 餡が皮を突き破る | 皮の一部が薄い、またはとじ目が閉じていない | 丸く広げた生地の厚みを均一に保ち、丸める前にとじ目を強く押さえる |
| 折るときに葉が破れる | 葉のやわらかさが足りない | 割れずに曲がるようになるまで、もう一度温める |
| 葉が菓子にくっつく | 葉に油を塗っていない | 包む前に、葉の内側へ油を薄く塗る |
蒸し時間の約30分は目安として示された時間で、中心温度は示されていません。葉の色だけでは火が通った証拠になりません。包み全体が中まで熱く、皮がまとまっていることを確かめてください。
保存
できれば蒸したてを食べてください。すぐに食べない分は手早く冷まして冷蔵庫に入れ、早めに食べきります。見た目・におい・手ざわりに違和感があるとき、少しでも不安があるときは、捨ててください。
冷蔵で10日もつという案内もありますが、包み方や温度の条件が示されていないため、ここでは採用しません。保存期間や再加熱の時間は確認できていないので、書きません。
地域や作り方による違い
蒸してから包む方法。SCOV の文化記事は、場所によっては葉で包まずに蒸し、あとから包んでバナナの葉の緑を保つと書いています。ビンディン省の地方紙は、トゥイフオック(Tuy Phước)にあるバー・ズー(Bà Dư)の作業場がこの方法で作っていると伝えています。葉をゆでて砂糖と粉と一緒につき、生地を約30分蒸して冷まし、切って、ココナッツを混ぜた緑豆の餡を入れ、火であぶってやわらかくしたバナナの葉で包む、という流れです。餡を入れる前に生地へ火を通すため、上のレシピに差し替えられる手順ではなく、別の作り方です。
ブレンダーではなく、つく方法。昔ながらの説明では、ゆでたラーガイをつき、もち米と砂糖も一緒につき合わせると書かれています。このレシピでは葉はブレンダー、生地はこねて作ります。
バイン・イット・チャンなど、ほかのバイン・イット。同じ名前でも、ラーガイを使わないものがあり、むき出しで蒸すものや塩味のものもあります。それらの餡や作り方を、この甘い葉包みのタイプと混ぜないでください。
バイン・ガイ。北部には、名前の似たバイン・ガイ(bánh gai)という菓子もあります。この記事では両者の細かい比較はしません。
甘さの調整。砂糖の150g+150gを変えると、皮と餡の両方の質感が変わります。減らすときは小さな調整ではなく、新しいレシピとして試してください。
ビンディンのバイン・イット・ラーガイ:お茶、祝い事、そして塔

バイン・イット・ラーガイは、ビンディンの名物として語られています。CET は、旧正月(テト)などのお祝い、結婚式、法事、そして宴席のあとの甘いものとして出されると記しています。SCOV の記事は、熱いお茶と一緒に食べるデザートだと述べています。甘い菓子で、つけだれなどはなく、そのまま食べます。
ビンディンの地方紙が引くよく知られた民謡は、おおよそこんな内容です。「バイン・イット・ラーガイが食べたければ、ビンディンの人のもとへ嫁ぐこと。道のりが長いのが怖いけれど」。この歌は、菓子とふるさとの省を強く結びつけています。
塔のような形にも、土地の意味づけがあります。SCOV の記事は、ピラミッド形の包みを、トゥイフオックに集まるチャム族の塔群に結びつけています。これは地域の象徴であり、人々がこの菓子を語るときの言い方であって、形の由来が証明されたわけではありません。同じ記事は名前についても一つの話を紹介しています。義母に持ち帰るため、菓子をほんの少しだけ買った女性の話です。これは伝説として語られているもので、名前の由来が確定したものではありません。
トゥイフオックを取材したビンディンの地方紙の記事は、この菓子が土地の手仕事でもあることも伝えています。技が受け継がれ、作る人たちのチームで工程を分け合っています。
よくある質問
バイン・イット・ラーガイとバイン・イット・チャンは同じものですか?
違います。bánh ít は広い名前です。バイン・イット・チャンはむき出しのまま蒸し、えびと豚肉の塩味の餡を入れることがあります。バイン・イット・ラーガイは、ラーガイで黒く染めた皮に、緑豆とココナッツの甘い餡を入れ、バナナの葉で包みます。この記事で扱うのはラーガイのタイプだけです。
ラーガイの代わりに何が使えますか?
同等の代用品は確認できていません。乾燥したラーガイの粉末は売られていますが、生葉500gの代わりに使う比率は確認できていないため、メーカー自身の使い方が必要です。ヨモギなどほかの葉では、同じ色や香りにはなりません。
何個できますか?
CET のレシピは収量を示しておらず、このレシピもまだ試作していないため、個数は示しません。生地と餡は、好きな大きさで同じ数に等分してください。
なぜしょうがを入れないのですか?
CET の手順には、少しのしょうがと一緒に葉をゆでるとありますが、材料表に分量がありません。確かな分量がないため、この版ではしょうがを完全に省いています。
包む前に蒸すこともありますか?
あります。SCOV の記事は、むき出しで蒸してから包み、葉の緑を保つ地域があると述べています。ビンディンの地方紙は、トゥイフオックの作業場が先に生地を蒸すと伝えています。このレシピは、包んでから蒸します。2つの方法は混ぜないでください。
何と一緒に食べますか?
熱いお茶です。ソースなしで、食事のあとの甘いものとして食べます。

















