バイン・ヌン|型模様の皮に、ナッツと砂糖漬け果実と塩漬け卵黄を包む
型の模様がくっきり残る薄い金色の皮と、なめらかではなく食感のある餡。かみごたえのある砂糖漬け果実、歯ざわりのよい種、香ばしいソーセージ、そして中央に座る塩気のある卵黄です。
中秋節(Tết Trung Thu)の夜、家族は先祖の祭壇に5種類の果物と祭りの菓子を供え、そのあとで満月の下、みんなで月餅を分け合う。ベトナム政府観光局(Vietnam Tourism)は、そんな風景を紹介しています。食卓に並ぶ菓子の名前は bánh trung thu。祭りの菓子をまとめて指す広い呼び名です。
この記事で作るのは、その中の bánh nướng、つまり焼き月餅です。型で押して、花や幾何学模様を金色の表面に浮かび上がらせます。中身は nhân thập cẩm、直訳すれば「五目」の餡。ナッツと種、砂糖漬けの冬瓜としょうが、中華風ソーセージ、調理済みの肉、柑橘の香りを合わせ、塩漬けアヒル卵黄をくるんでいます。柔らかくもち状の bánh dẻo は別の菓子なので、ここでは扱いません。
レシピは、ベトナム料理を紹介するソフィー・ファム(Sophie Pham)さんが Delightful Plate で公開している家庭向けの1配合に沿っています。1個約100gを8個作ります。難所は、餡の材料の多さと型押しです。個数と重さはレシピに書かれた値で、編集部で試作して確かめたものではありません。
bánh trung thu は「中秋の菓子」、bánh nướng は「焼いた菓子」、bánh dẻo は柔らかくて粘りのある菓子のこと。nhân thập cẩm は五目餡です。「Vietnamese mooncake」と一緒にこれらのベトナム語で検索すると、このタイプを探しやすくなります。
中秋節の食卓に並ぶ、二つの月餅
ベトナム政府観光局によると、中秋節は中国からベトナムに伝わり、いくつかの国で祝われています。ただしベトナムには独自の伝承があり、クオイ(Cuội)とガジュマルの物語が歴史ではなく民話として語り継がれています。収穫を終えて家族が一緒に過ごす時期の祭りで、子どもたちは提灯を持って行列し、通りでは獅子舞が練り歩きます。
同じ資料は、月餅を食べる前に先祖の祭壇へ5種類の果物と菓子を供える習慣も紹介しています。月餅には大きく2種類あり、小麦粉の皮を焼いた bánh nướng と、柔らかくて粘りのある bánh dẻo です。どちらも形、模様、味は甘いものから塩気のあるものまで幅広くあります。これは国の観光紹介にある説明なので、すべての家庭や地域に共通の決まりではなく、よく見られる習慣として読むのがよいでしょう。
同じ国の料理はベトナムのページでも紹介しています。
五目餡は、甘み・香り・肉・種が重なる
nhân thập cẩm に決まった配合はひとつではありません。ファムさんの配合では、砂糖漬け冬瓜(mứt bí)と砂糖漬けしょうが(mứt gừng)が甘みとかみごたえを、ラップチョン(lạp xưởng)、ローストチキン、豚肉でんぶが塩気と旨みを、カシューナッツ、かぼちゃの種、すいかの種、白ごまが歯ざわりを、オレンジの皮とこぶみかんの葉が柑橘の明るい香りを受け持ちます。肉の中でいちばん大切なのはラップチョンだと、ファムさんは考えています。
このレシピには、調整してよい部分がいくつかあります。塩漬け卵黄は省けます。ローストチキンや豚肉でんぶなど、肉の一部も省けます。ナッツと種の組み合わせも変えられます。餡は卵黄を含めて全体で約480〜500gを目安にしているので、何を変えても1個分の餡は60gにそろえます。砂糖漬けの果実がすでに甘いので、餡に砂糖は足しません。この記事では、載っている材料をすべて使い、卵黄も8個入れる版を基本にしています。
ほかのベトナム語のレシピは、また違う作り方をします。たとえば Unispice のレシピも、ナッツ、砂糖漬け冬瓜、ラップチョン、ライムの葉を使いますが、五香粉を加え、分量の比率が違い、焼きも3段階です。同じ名前でも、型、材料、焼き方は違います。そのため以下の分量と手順はひとつの配合だけに従い、ほかのレシピとは混ぜていません。
この料理に使える食材・調味料
道具
- 100g用の月餅型(花や幾何学模様のもの)
- 1g単位で量れるキッチンスケール
- 湯通し用の小鍋
- フライパンまたは中華鍋
- ナッツをパルスするフードプロセッサーまたはチョッパー
- 蒸し器
- ラップ
- ボウルと、生地を休ませるときのふた
- 麺棒(なくても指で代用できます)
- 天板とオーブンシート
- 穴をあけるための細い串またはつまようじ
- やわらかい刷毛
- 実際のオーブン温度を確かめるオーブン温度計
選び方と代用
アジア食材店やベトナム食材店で探す価値があるのは、ラップチョン(lạp xưởng)、砂糖漬け冬瓜(mứt bí)、砂糖漬けしょうが(mứt gừng)、ローストすいかの種(hạt dưa)、塩漬けアヒル卵黄、玫瑰露酒(rượu Mai Quế Lộ)、そして100gの月餅型です。英語とベトナム語の一般名で探すのがいちばん見つけやすい方法です。
この配合の範囲で変えてよいのは、次のところです。
- ナッツと種: 手に入るものに合わせて組み合わせを変える。
- 肉: ローストチキンや、ほかの肉の一部を省く。
- 塩漬け卵黄: 省いてもよい。ただし餡1個分は60gのままにして、ほかの材料の量で調整する。
- 粉: 薄力粉にすると、皮がやや柔らかくなる。
ラップチョンと砂糖漬け冬瓜は、この餡の個性を作る材料です。これらを別の材料に置き換えた場合の味は確かめていないので、置き換えたらこのレシピではなく自分流のアレンジとして楽しんでください。蓮の実の餡など、ほかの地域の餡は別の月餅であり、この菓子の代わりにはなりません。
うまくいかないとき
| 困りごと | 考えられる原因 | 対処 |
|---|---|---|
| 餡がまとまらない | 油かつなぎが足りない | 油と炒ったもち米粉を少しずつ足し、握ってまとまるまで調整する |
| 卵黄が中央からずれる | 卵黄のまわりに餡が均等に付いていない | 卵黄の下に20〜25gを敷いてから、ラップを絞って球にする |
| 模様がぼんやりする | 生地が型の隅まで届いていない、または卵液が溝にたまった | 平らな面でハンドルを数回押す。卵液は薄く塗る |
| 包むときに皮が破れる | 生地を薄くのばしすぎた | 均等にのばし、無理なく餡を覆える厚さを保つ |
| 色が薄すぎる、濃すぎる | オーブンの温度が高め・低め、または天板の違い | オーブン温度計で確かめ、最後の焼きは時間だけでなく色で判断する |
ソフィー・ファムさんは、水を霧吹きせず、何度かに分けて焼いても、月餅にひびが入らなかったと書いています。これはこのレシピでのひとりの結果であり、決まりではありません。ほかのレシピやオーブンでは違うかもしれません。
意味のある変え方
- 塩漬け卵黄を使わない: ほかの材料の量を調整して、餡1個分を60gに保つ。
- ナッツと種を変える: 手に入る種に合わせて組み替える。
- 鶏肉なし: ローストチキンを省く。
- 皮を柔らかく: 中力粉の代わりに薄力粉を使う。
- 梘水(かんすい)の皮: 重曹ではなく梘水で作った皮にしたいなら、このレシピに混ぜず、梘水向けに作られた別のレシピを選ぶ。
よくある質問
bánh nướng と bánh dẻo の違いは何ですか?
ベトナム政府観光局は、bánh nướng を焼いた皮の月餅、bánh dẻo を柔らかくて粘りのある月餅として説明しています。この記事で扱うのは焼き月餅の bánh nướng だけです。
餡の肉やナッツ、種は全部必要ですか?
必要ではありません。ソフィー・ファムさんのレシピでは、塩漬け卵黄は省いてもよく、ローストチキンを含む肉の一部も省けて、ナッツと種の組み合わせも変えられます。何を変えても、餡1個分は60gにそろえてください。
梘水なしで皮は作れますか?
このレシピでは、梘水(かんすい)の代わりに少量の重曹を使います。まったく同じではありません。梘水の皮にしたいときは、方法を混ぜず、そのために書かれたレシピを選んでください。
型の模様をきれいに出すにはどうしますか?
型と手に打ち粉をして、平らな面でハンドルを数回押し、生地を隅まで行き渡らせます。卵液は溝を埋めないように、薄く塗ってください。
焼いてすぐ食べられますか?
ソフィー・ファムさんは、焼きたては皮が乾いていて、置いておくと柔らかくなると書き、涼しく乾いた場所でふたをして2〜3日後に食べるよう勧めています。そのあとの冷蔵の目安も示しています。ただしこの菓子には火を通した肉と卵が入っていて、こうした置き方や保存の助言は食品安全の基準と照らして確かめていません。そのため、常温で安全に保存できるとは案内しません。肉や卵を含む食品については、お住まいの地域の食品安全の指針に従ってください。
栄養成分はわかりますか?
この記事ではお伝えできません。この版では栄養計算をしていません。
















