ボー・ヌーン・ラー・ロット:炭火の煙と、温まった緑の葉と、味つけした牛肉
味つけした牛ひき肉の具、光沢のある面を外に向けて巻いたlá lốtの葉、そして葉を香ばしくする炭火の熱。中の牛肉には必ず中心まで火を通します。葉が焦げているだけでは、中まで焼けたかどうかは分かりません。
2015年、VTVはホーチミン市のストリートフードを取り上げた番組で、トンドゥックタン通りを訪ねました。そこでは、牛ひき肉をlá lốtの葉で巻いたものが炭火で焼かれていました。焼き上がった巻きは、食卓でさらにライスペーパーに青菜や米麺と一緒に包み、mắm nêm(発酵魚のたれ)につけて食べます。この放送が伝えるのは、ある年のある通りの情景です。すべての屋台や家庭に当てはまる決まりではありません。それでも、煙の香る緑の葉、味のついた牛肉の具、みんなで自分の分を巻く食卓という、この料理の魅力はよく伝わってきます。
ボー・ヌーン・ラー・ロット(bò nướng lá lốt)は、レモングラス、にんにく、エシャロットで味つけした牛ひき肉をlá lốtの葉で巻いて焼く料理です。bò lá lốtやbò cuốn lá lốtと書かれることもあり、料理や葉を探すときは、この3つの名前で検索すると見つけやすくなります。この記事では、VnExpressに掲載された南部(Nam Bộ)式のレシピを1つ選んで紹介します。この料理を誰がいつ最初に作ったのかは、今回使った資料では確定できないため、推測では書きません。
初めて作る人がほぼ必ず迷うのは3つです。「ベテルの葉」と呼ばれるのはどの葉なのか。巻くとき、葉はどちらを向けるのか。葉で包んだひき肉に、どうやって火が通ったと確かめるのか。以下の節で順に答えます。ほかのベトナム料理はベトナムのレシピからもご覧いただけます。
世界ごはん紀行では、このレシピを台所で試作していません。分量と手順は採用したレシピに沿っていて、そこに食品安全のための追加を一点だけ加えています(後述)。
葉の話:lá lốt は噛むベテルの葉ではない
英語ではlá lốtを大ざっぱに「betel leaf(ベテルの葉)」と呼ぶことがありますが、この呼び名が取り違えのもとになります。Ton Duc Thang University(トンドゥックタン大学)薬学部は、ベトナムのlá lốtをPiper sarmentosumと同定し、ベトナム薬局方で使われる同義名としてPiper lolotを記録しています。USDA(米国農務省)の索引に載る解剖学的研究も、Piper sarmentosum(同義名 P. lolot)とPiper betleを、見た目の似た別種として扱っています。アレカの実や消石灰と一緒に噛む「ベテル・クイド」に使われる葉は、WHO/IARCによればPiper betleの葉です。
つまり、この料理に使うのはlá lốt、すなわちPiper sarmentosum / Piper lolotです。「betel leaf」とだけ書かれた葉は、噛むクイド用のPiper betleかもしれず、それは別の植物です。買う前に種を確かめてください。また、今回使った資料では、同じ仕上がりになる代用の葉は確認できていません。
採用したレシピと、その違い
採用したのは、VnExpressの「Cách làm bò nướng lá lốt kiểu Nam Bộ」(執筆:Bùi Thủy)です。牛ひき肉600 gと豚の背脂(mỡ thăn)150 gが土台になっています。このページには、脂身が巻きの乾燥を防ぐという説明があります。牛肉はヒレ(thịt bò thăn)のようなやわらかい部位を選び、刻むか挽くよう勧めています。ほかの選択肢として網脂(mỡ chài)にも触れていますが、分量が書かれているのはmỡ thănだけなので、この記事ではmỡ thănを使います。
ページの中には、1か所だけ食い違いがあります。材料のまとめにはmắm(魚醤)とある一方で、分量つきの手順ではnước tương(xì dầu)=しょうゆ大さじ1を使います。この記事は分量のある手順に従い、具に使う調味料はしょうゆだけで、魚醤は足しません。
レシピページに分量の書かれていないものもいくつかあります。葉、香味野菜、脂身をゆでるときの米酒とエシャロット、塗る油、仕上げのピーナッツ、青ねぎ油、つけだれです。青ねぎ油(mỡ hành)や2種類のたれの作り方も、ページには載っていません。そのため、ここでは出来合いの薬味として扱い、配合は作りません。
ページには4〜5人分、55分(約30分のマリネを含む)とあります。巻きの数、1本の大きさ、焼き時間、グリルの温度は書かれていません。人数と時間は、実測した収量ではなく、ページ自身の表記として受け取ってください。
ページでは、具を約30分休ませます。この記事では、その休ませる時間を冷蔵庫の中で過ごします。さらに、中心温度75°Cで1分以上という確認を加えます。どちらも、ひき肉料理についての厚生労働省の案内に基づくものです。案内では、ひき肉の内部に病原体が入っていることがあると注意しています。これは家庭の台所向けに加えた食品安全の確認で、ベトナムのレシピにある時間や温度ではありません。焼き時間に換算することもできません。
この料理に使える食材・調味料
道具
- 生肉用の包丁とまな板。盛り付け用の道具と皿は別に用意する
- 脂身を湯通しする小鍋
- ボウルと計量スプーン
- 竹串(xiên tre)
- 炭火のグリル(屋外の開けた場所で使う)
- 刷毛(油を塗る用)
- 巻きの中心を確かめる調理用温度計
選び方と代用:まず葉を探す
lá lốtは、風味と包み、両方を決める唯一の材料です。ほかの買い物より先に探してください。探すときの名前はlá lốt、Piper sarmentosum、Piper lolotです。店で「betel leaf」とだけ表示された葉は、種を確認してください。Piper betleはこの葉ではありません。ぶどうの葉やほかの葉は、この料理の代わりになりません。lá lốtが手に入らないときは、同じ名前で味の違う巻きを作るより、見送るほうが誠実です。
買うときは、巻き用に大きさのそろった、破れていない大きな葉を選びます。破れた葉や若い葉も、具に刻み入れるので無駄になりません。
調味顆粒(hạt nêm)は、いつも使っている鶏、豚、牛のどれでもかまいません。日本のだしとは別物です。しょうゆは製品によって違うので、小麦や大豆などのアレルゲンも含め、使うものの表示を確認してください。オイスターソースや出来合いのたれも同じです。
生の牛肉と豚の脂身は、使う直前まで冷蔵庫に入れておきます。生肉に使ったまな板や道具は、盛り付けに使うものと分けて扱ってください。
焼くときのトラブル対処
| 困りごと | 考えられる原因 | 対処 |
|---|---|---|
| 具がぱさつく | 脂身を入れていない、または焼くときに油を塗っていない | 背脂150 gを具に入れたままにする。焼きながら葉に油を軽く塗る |
| 片面だけ白っぽく、もう片面が焦げる | 返していない | 串を返して、両面を炭火に向ける |
| 葉は黒いが中心が温度に届いていない | 巻きの太さに対して火が強すぎる | 中心が75°Cで1分以上になるまで焼き続ける。次回は巻きをやや細く、均一にする |
| 巻きが硬くてぱさぱさになる | 焼きすぎ | 途中で温度を確かめ、安全な温度に届いたら火から下ろす。そこに届く前に止めてはいけない |
| 巻くときに葉が裂ける | 破れた葉や若い葉を巻き用に使った | その葉は具に使い、巻き用には大きく破れていない葉を取っておく |
| 焼いている途中で葉がほどける | 左右の端を折っていない、または1本の串に刺した巻きが少ない | 巻く前に左右の端を内側に折り、1本の串に数個の巻きをまとめて留める |
レシピの範囲でできるアレンジ
- 炭火の代わりにオーブンやエアフライヤーを使う方法です。代替としてどちらも挙げられていますが、時間や設定は示されていません。使うなら、中心75°Cで1分以上という温度計での確認だけを頼りにしてください。炭火の煙の香りは失われます。
- 五香粉は小さじ1/2の任意です。入れなければ、レモングラスと葉の香りが前に出ます。
- つけだれは、mắm nêmかnước mắm chua ngọtのどちらかを出します。2つを混ぜず、1種類を選んでください。
- 破れた葉や若い葉は具に入れます。そうすれば、lá lốtの香りが外側だけでなく、中にも広がります。
- 卓上には、ライスペーパー、米麺、生野菜をすべて出しても、食卓の好みに合わせてどれかを中心にしてもかまいません。青菜は手元にあるものから選びます。
食卓にて:屋台の一品であり、牛肉づくしのコースの一皿でもある
2015年のVTVの番組は、ボー・クオン・ラー・ロットをホーチミン市のなじみ深いストリートフードとして紹介しています。牛ひき肉に脂身、レモングラス、にんにく、干しエシャロット、調味料、砂糖、五香粉を合わせ、炭火で焼き、ライスペーパーで青菜、米麺と一緒に包んでmắm nêmで食べる、という説明です。採用したVnExpressのレシピは、つけだれにmắm nêmとnước mắm chua ngọtの2種類を挙げているので、必ずこれと決まったたれがあるわけではありません。
この料理は、海を越えても食べられています。2014年のSouthern Foodways Allianceのインタビューで、テキサス州ヒューストンにあるSaigon Pagolacの店長Jacklyn Phamさんは、「betel leaf」で巻いた牛肉をbò lá lốtと紹介しました。店の人気料理であること、そして特別な機会の食事とされる牛肉七品のコース(bò bảy món)の一皿であることが語られています。これはベトナム系アメリカ人のレストラン1軒の話であり、ベトナムのすべての家庭の様子を表すものではありません。それでも、同じ巻きがホーチミン市の路上にも、お祝いの食卓にもあることは伝わってきます。
よくある質問
「ベテルの葉」として売られている葉なら、何でも使えますか?
確かめずには使えません。この料理に使うのはlá lốt、つまりPiper sarmentosum(同義名 Piper lolot)です。噛むクイドのベテルの葉はPiper betleで、別種です。これは、下の参考文献に挙げたTon Duc Thang University、USDA、WHO/IARCの資料に基づきます。同じ仕上がりになる代用の葉は、これらの資料では確認できていません。
具に魚醤は入りますか?
この版では入れません。VnExpressの材料のまとめにはmắmとありますが、分量のある手順ではしょうゆ(nước tương)大さじ1を使います。この記事は分量のある手順に従い、具には魚醤を加えません。食卓のたれ(mắm nêmかnước mắm chua ngọt)が、それぞれの風味を添えます。
何本できますか?
レシピページには4〜5人分とありますが、巻きの数や大きさは書かれていません。本数は葉の大きさや具の量で変わるため、ここでは数字を示しません。
オーブンやエアフライヤーでも焼けますか?
採用したレシピは両方に触れていますが、時間も温度も示していません。試すときは温度計を使い、いちばん太い巻きの中心が75°Cで1分以上になるまで加熱してください。
30分休ませるとき、なぜ冷蔵庫に入れるのですか?
レシピでは具を約30分休ませます。この記事では、肉を冷蔵で保管し、二次汚染を避けるという厚生労働省の案内に沿って、冷蔵庫の中で休ませます。ひき肉料理の中心温度を75°Cとする根拠も、同じ案内です。
残ったら、どのくらい日持ちしますか?
今回使った資料には、焼いた巻きの保存期間も、冷凍や再加熱の案内もありません。そのため、この記事では日数を示しません。


















