スプーンの先で表面を軽くたたくと、琥珀色の砂糖が薄い板のように割れ、下から冷たくなめらかなバニラのカスタードが現れます。クレームブリュレのおいしさは、この落差にあります。卵黄とクリームにバニラで香りをつけて焼き、その上の砂糖を焦がして、割れやすいカラメルの殻にしたデザートです。フランス語の名前は「焦がしたクリーム」という意味です。
カスタード自体の材料は多くありません。仕上がりを左右するのは、どれだけ静かに火を入れるかと、砂糖をいつ焦がすかです。このレシピでは、湯煎でゆっくり焼き、しっかり冷やし、砂糖は食べる直前に焦がします。それぞれの段階に見分けのサインがあるので、手順の中で順に示します。
クレームブリュレに求められるのは、縁は固まり中央はまだやわらかいカスタードを冷やして出すことと、最後の瞬間に焦がした、スプーンで割れるほど薄い砂糖の層です。
クレームブリュレはフランスのデザートとして紹介しますが、この記事で作るのはケベック州の卵生産者団体(Fédération des producteurs d'œufs du Québec)が公開しているレシピです。よく整った家庭向けの一例であり、フランス全体の唯一の標準配合ではありません。ほかのレシピでは材料もオーブンの温度も違います。いくつかは後半で比べます。
材料選びと、替えないほうがよいもの
生クリーム。 乳脂肪分35%のホイップ用クリームを使います。表示は商品ごとに違うので、この数字に近いものを選んでください。このレシピのようにクリーム主体の配合は、濃厚で密度のあるカスタードになりやすく、牛乳を加える配合は軽い口当たりになりやすいといえます。このレシピの食感にしたいなら、クリームだけで分量どおりに作ります。一部を牛乳に替えると別のカスタードになり、同じ食感になるとは言えません。
バニラ。 バニラエクストラクトを、クリームと卵黄を合わせたあとに混ぜます。さやをクリームに煎じ出す方法は取りません。さやを使うレシピもありますが、それは別の作り方です。
砂糖。 カスタード用も表面用もグラニュー糖です。表面の砂糖の種類が変わるとカラメルの風味も変わるので、見た目だけでなく味も違ってきます。
入れないもの。 この基本の配合には、牛乳、リキュール、バニラのさや、でんぷんは入れません。
ラムカン。 125mlのものを4個使います。器の深さで焼き時間が変わります。浅いか、深さ約5cmかを先に確かめておいてください。時間は手順5に書いています。
ざらつく、緩い、苦い、湿る|うまくいかないときの戻し方
| 状態 | 考えられる原因 | 対処 |
|---|---|---|
| カスタードに小さな穴があく、ざらつく | オーブンが熱すぎる、焼きすぎ、深い器 | オーブンは160℃を守り、終わりの判断は揺れ方で行います。焼きすぎがざらつきの原因なので、中央がまだわずかに動くうちに取り出します。次回は浅いラムカンも有効です |
| 中央だけが液状 | 焼き不足、深い器、オーブンによる差 | 湯煎に戻し、5分程度の間隔で状態を見直します。決まった追加時間はありません。縁の固まり方と揺れを見てください |
| 表面が苦くて硬い | 砂糖が厚い、炎を一か所に当て続けた | 砂糖を薄く均等にふり、炎を動かし続け、琥珀色になったらすぐ止めます |
| 食べる頃には殻がやわらかくなっている | 焦がしてから長く置いた、冷蔵庫の湿気 | カスタードを先に冷やし、焦がすのは提供の直前にします。仕上がった殻は保存できません |
| トーチがない | 専用の器具がない | オーブンのグリルを使い、ラムカンをひとつの天板にまとめて、砂糖の色をよく見ます |
作り置きと保存
器具は清潔なものを使い、湯煎から出したカスタードは冷ましてから冷蔵庫に入れます。ケベックのレシピは、冷蔵で最低2時間、冷蔵庫で保存できるのは最長2日としています。これはレシピ自体の目安であり、すべての家庭の台所に当てはまる安全の保証ではありません。庫内の温度変化が大きい扉のポケットは避け、安定した場所に置いてください。
クレームブリュレは、カスタードと殻を別々の時間に作れるので、作り置きに向いています。先にカスタードを焼いて冷やし、覆いをして砂糖はのせずに保管します。砂糖を焦がすのは出す直前だけです。焦がしたらすぐ食べてください。殻は冷蔵庫に入れてもパリッとは保てません。
別のレシピとの違い|どれも別の作り方で、間違いの訂正ではありません
クレームブリュレのレシピは、材料もオーブンの温度も、湯煎を使うかどうかも、かなりばらつきがあります。下の表のものはいずれも、それぞれ独立した完成したレシピです。分量や手順をこの記事のレシピに混ぜると、どれとも違うものになります。
| 出どころ | 使う材料 | 焼き方 |
|---|---|---|
| Fédération des producteurs d'œufs du Québec(この記事) | 乳脂肪分35%の生クリーム、卵黄、砂糖、バニラエクストラクト | 160℃の湯煎。器の深さにより25〜35分 |
| Éditions Larousse | バニラのさや、卵黄、牛乳、クレームフレッシュ、オレンジのリキュール | 150℃で約30分。冷やしたあと、グリルで砂糖を焦がす。湯煎の指定はなし |
| Trinity College Oxford | 全卵と卵黄、牛乳、ダブルクリーム、バニラ | 150℃、ラムカンの半分の高さまで湯を張って約30分、または固まるまで。そのあとトーチか熱したグリル |
| Ferrandi のレシピ(The Good Life France 掲載) | クリーム、卵黄、砂糖、バニラのさや、全脂粉乳、仕上げに黒砂糖 | カスタードを小鍋で83℃まで加熱してから、100℃で焼く |
Trinity College のように全卵を使ったり、Larousse や Trinity のように牛乳を加えたりすると、食感が変わります。どちらが本物ということではなく、単に別のカスタードです。この記事で説明した仕上がりを目指すなら、卵黄とクリームだけのレシピを守ってください。
MICHELINガイドのインタビューに答えたシェフのラファエル・フランソワ(Raphael Francois)氏は、クレームブリュレを、プロの厨房で早い時期に覚える定番のデザートと位置づけています。技術面の助言は、この記事の手順と重なります。卵黄と砂糖は淡い色になるまで混ぜる、温めたクリームはそっと加える、浅い器を選ぶ、ゼリーのようにわずかに揺れる状態で取り出す、焼きすぎるとざらつくので避ける、という内容です。表面にはトーチと熱したグリルの両方が挙げられています。
名前と、早い時期の印刷レシピ
「クレーム・ブリュレ」はフランス語で「焦がしたクリーム」。焦がした砂糖の表面をそのまま言い表した名前です。The Good Life France によると、クレームブリュレの名で印刷されたレシピは、1691年刊行のフランソワ・マシアロ(François Massialot)の『Le Cuisinier Royal et Bourgeois』に載っています。
これは、この名前が印刷物に現れた早い記録のひとつと読むのが適切です。このデザートがどこで生まれたかを証明するものではなく、当時のレシピが今と同じ姿だったことを意味するものでもありません。砂糖を焦がして仕上げる似たカスタードについては、ほかの地域も自分たちのものだと主張しており、起源の問題はこの記録だけでは決着がつきません。
よくある質問
湯煎は必要ですか?
このレシピでは必要です。ラムカンの半分の高さまで熱湯を張り、160℃で焼きます。ほかのレシピでは違います。Larousse のレシピは湯煎を指定せず、Trinity College のレシピは150℃で湯煎を使います。ひとつのレシピを選び、その温度・時間・方法を一式として守ってください。混ぜ合わせるのはおすすめしません。
トーチがなくても表面を焦がせますか?
焦がせます。元のレシピも、ミニトーチの代わりにオーブンのグリルを挙げています。冷やしたラムカンをまとめて天板にのせ、グリルの下に入れます。加熱中は砂糖から目を離さず、琥珀色になったらすぐに取り出します。
前日に作っておけますか?
カスタードの部分は、前もって焼いて冷やしておけます。ケベックのレシピは、冷蔵庫で最低2時間冷やし、冷蔵で最長2日保存できるとしています。表面の砂糖は、出す直前にふって焦がします。
全卵で作れますか?
全卵を使うレシピもあります。Trinity College のレシピは、全卵と卵黄に加えて牛乳とダブルクリームを使います。これは食感の違う別のレシピなので、卵黄だけのこのレシピに全卵を入れ替えるのはやめておきましょう。
殻がパリッとならないのはなぜですか?
砂糖の厚さ、カスタード表面の水分、焦がしてから食べるまでの時間を見直してください。薄く均等にふった砂糖を、出す直前にトーチで焦がすと、割れる殻になりやすくなります。
















