パン・オ・ショコラ:薄い層がほどけ、芯にチョコレートがある
生地は冷たく、バターはしなやかでも溶かさないこと。折るたびに層を守り、成形したパンははっきり2倍にふくらんでふるふる揺れるまで発酵させてから、深い黄金色に焼きます。
朝、紙袋から長方形のペストリーを取り出すと、薄いかけらがぱらぱらと落ちます。午後には同じパンが、昼食と夕食のあいだをつなぐ軽い間食「ゴーテ(goûter)」として食卓に現れます。フランスのパン・オ・ショコラは、朝食にも、ゴーテの時間にも、ちょっとお腹がすいたときにも食べられていて、作り方を考える前から、あの長方形の姿はおなじみです。
家で作るときに難しいのは、ひとつの大技ではなく温度の管理です。イースト生地はふくらんで風味を育てる必要があり、バターの板はその生地と一緒に伸びるしなやかさを保ちながら、割れたりにじみ出たりしてはいけません。このレシピは、公開されているプロ向けの配合を一つ選び、ほかの版を混ぜずに最初から最後まで追います。各工程では時間だけでなく、何を見て判断するかも書きます。原典の仕上がりは16〜20個、全体の所要は16〜24時間で、その大半は冷やす時間と発酵の待ち時間です。この記事のために試作はしていないので、オーブンの時間は目安として、パンの様子を見ながら焼いてください。
パン・オ・ショコラとは? ショコラティンとの違い
名前に「パン」とつきますが、食パンのような生地ではありません。パン・オ・ショコラは、pâte levée feuilletée(パート・ルヴェ・フイユテ)と呼ばれる、イースト生地にバターを折り込んだ生地で作るヴィエノワズリー(菓子パン類)です。同じ生地のなかで、発酵と、バターを折り込むトゥラージュ(tourage)が重なります。イーストがふくらみと香りを、折り込みが薄い層を生み、その内側にチョコレートバトン(棒状のチョコレート)を巻き込みます。
フランスの多くの地域ではpain au chocolat(パン・オ・ショコラ)と呼びますが、南西部では同じ菓子をchocolatine(ショコラティン)と呼び、ほかにも地域ごとの呼び名があります。これは同じ菓子の地域ごとの呼び名で、別々のレシピではありません。どちらかを正解と決める必要もありません。
呼び名の違いは、地方ごとの語彙の違いです。南西部の人がショコラティンと言い、ほかの地域の人がパン・オ・ショコラと言っても、思い浮かべているのは同じ、チョコレートを巻いた折り込みのペストリーです。
朝食にも、ゴーテにも

フランスのパン屋さんの業界団体は、パン・オ・ショコラを朝食やゴーテの時間、あるいはちょっと小腹がすいたときに食べるものとして紹介しています。朝食、午後のゴーテ、ちょっとお腹がすいたときという幅広い場面が、この菓子の魅力です。一日を始めるのに十分な食べごたえがありながら、午後の一休みにも重すぎません。
職人のあいだでも決まった配合はひとつではありません。水を使う人も牛乳を使う人もいて、卵を入れる人も入れない人もいます。チョコレートバトンの本数もさまざまです。目指しているのは、発酵とバターとチョコレートのバランスです。再現しやすくするため、この記事では牛乳と水の両方を使う生地に、1個につきバトン3本という一つの版に絞ります。
起源はどこまで分かっている?
大きな流れとしては、ウィーンのパン作りの技法がフランスに広まって、ヴィエノワズリーが育ったと説明されます。パン屋さんの業界団体の資料にはこの話に関連してアウグスト・ツァング(August Zang)の名前が出てきますが、パン・オ・ショコラの発明者とは示されていません。団体自身もこの菓子の起源がはっきり定まっていないと述べています。発明者も年も確定していません。
「chocolatine」という言葉の由来にも複数の説があり、どれも確かなものではありません。こうした話は、証明された歴史ではなく物語として楽しむのがちょうどいいでしょう。
フランスの他の料理も知りたい方は、フランスのページもご覧ください。
この料理に使える食材・調味料
粉・バター・チョコレートの選び方
配合はすべて一つのレシピのもので、ほかの配合と組み合わせないでください。この版ではバター板に通常の無塩バターを使うため、バターの組に粉50gが入っています。この50gは生地用の粉とは別で、生地に入れるやわらかいバター30gも、バター板のバターとは別です。
このペストリーには小麦、乳、卵が含まれます。チョコレート製品には乳や大豆などのアレルゲンが含まれることがあるので、バトンの表示を確認してください。同じ工場で製造される場合などの注意書きも読みます。生地や卵液は生のまま味見しないでください。卵液は刷毛で塗る分だけを使い、余った卵液を焼いたパンにかけないでください。
粉
たんぱく質がおよそ11〜12%のクロワッサン用粉(T55タイプ)と、およそ9〜10%の薄力粉を使います。粉の名前だけでは性質が分からないので、表示のたんぱく質量を確認し、同等品と思い込まないでください。強力粉しかない場合は、生地用の粉2種を、強力粉(パン用の白い粉)500gと薄力粉500gに置き換えられます。粉によって吸水が違いますが、この差は今回確かめていません。
バター板
第一候補は、プロ向けの折り込み用バター(Isigny Ste-Mère A.O.P.など)です。この記事では、通常の無塩バター500gに粉50gを混ぜるやり方を採ります。プロ用のシートバターを使う場合は、粉50gを加えません。通常のバターで作る板は、プロ用シートとは口どけが少し違うかもしれません。
チョコレート
製菓用のチョコレートバトンを探すと、1個ごとに芯がそろいます。板チョコを同じ幅の細切りにする方法もありますが、厚みやオーブンでの溶け方は確かめていません。
イースト
生イーストを使います。
分量
大きな仕込みです。始める前に、ミキサーで捏ねられる粉の量、冷蔵庫の空き、天板の枚数を確認してください。1枚の天板に約6個ずつ並べ、複数枚の天板に分けて焼きます。配合を勝手に縮小したり、一度に全部焼いたりしないでください。
道具
- スタンドミキサー(フック付き)
- めん棒
- 定規
- スケッパー
- ピザカッターまたは切れ味のよい包丁
- クッキングシート
- 天板(複数枚)
- 刷毛
- デジタル温度計(バターと発酵環境の確認用)
- オーブン用温度計
- お湯を入れる耐熱容器(発酵環境づくり用)
うまくいかないとき:バター、層、発酵、焼き色
折り込み生地のトラブルは、たいてい温度に戻ってきます。途中でうまくいかなくなったときは、押し切らずにまず冷やすのが基本の立て直しです。
| 困りごと | 考えられる原因 | 対処 |
|---|---|---|
| 生地の中でバターが割れる | バターが生地よりずっと冷たい | バターがしなやかになり、生地と同じやわらかさになるまで少し待ってから伸ばす |
| バターがにじむ、流れ出る | 生地や発酵環境が温かすぎる | 工程の合間に生地を冷やす。発酵では、お湯を使った環境でオーブンが熱くならないようにする |
| 層がつぶれる | 打ち粉が多い、強く押しすぎた、バターが溶けた | 打ち粉は最小限にして、一定の軽い力で均一に伸ばす |
| 小さいままで終わる | 発酵不足 | 時間だけで判断せず、2倍にふくらんでふるふるするまで待つ |
| 焼き色が薄い、底が重い | 使っているオーブンに温度や時間が合っていない | 指定の温度と「深い黄金色」の目安に従い、自分のオーブンのくせを観察する |
基本は変えずに楽しむ変化
- バトンを3本ではなく2本にする:職人によってバトンの本数は違いますが、2本にするとチョコレートの比率が変わるため、上の3本のレシピとは別の版になります。
- プロ用シートバター:折り込み用バターが手に入るなら、板に500gを使い、粉50gは加えません。
- 強力粉との組み合わせ:原典が認めているとおり、生地用の粉2種を、強力粉500gと薄力粉500gに置き換えます。
- 板チョコ:同じ幅の細切りにします。原典にない方法で、試作もしていないため、厚みや溶け方は変わる可能性があります。
- 断面を見比べる:冷めたら1個を割って、層とチョコレートの様子を見ます。レシピは何も変わりませんが、折り込みがどれだけきれいにできたかが分かります。
食べ方と保存
冷めてから、朝食か午後のゴーテにどうぞ。お好みでブラックコーヒーを添えます。焼いた当日がいちばんおいしい状態です。室温での安全な保存期間は、この記事では示しません。取っておきたい分は、品質を保つ方法として冷凍があります。食べる前にオーブンで温めると、層が元気を取り戻します。
よくある質問
パン・オ・ショコラとショコラティンは別のパンですか?
いいえ、同じ種類の菓子です。ショコラティンはフランス南西部で使われる名前で、ほかの多くの地域ではパン・オ・ショコラと呼ばれ、さらに地域ごとの別の呼び名もあります。
生地を一晩冷やすのはなぜですか?
原典は冷蔵庫で8〜15時間を勧めています(作者は12時間)。長く冷やすと風味が育ち、翌日の折り込みに向く、冷たくてしっかりした生地になります。
バター板は普通のバターで作れますか?
作れます。原典がプロ用の折り込みバターの代わりに示しているのは、通常の無塩バター500gに粉50gを混ぜる方法で、この記事で使っているのもその版です。
チョコレートバトンは1個に何本入れますか?
職人によって違いますが、このレシピでは1個につき3本です。巻き始めの端に2本、最初の重なりに1本を置きます。
最終発酵は何時間かかりますか?
目安は2.5〜3時間で、条件によっては5時間ほどかかることもあります。室温の差が大きいので、本当の判断基準は、約2倍にふくらんでふっくらし、ゆるやかに揺れることです。

















