ジェラートは、すくってからあっという間になくなります。器のふちが少しずつゆるみ、スプーンを動かす手が自然と速くなって、数分で食べ終わってしまう。ところが家で作ろうとすると、時計の進み方がまるで違います。牛乳をバニラとレモンの皮で温め、卵黄を温度に慣らし、ベースを急いで冷まして、冷蔵庫で4時間以上寝かせる。食卓の数分の裏には、台所の長い時間があるのです。
ジェラートは、食卓では数分、台所では何時間
牛乳の香り、バニラとレモンの皮の軽い香り、卵黄の丸み。この記事では、複数のレシピを混ぜずに、ひとつのクレマ(crema)配合を公開どおりに作ります。
この記事が追うのは、その台所の長い側です。使うのは、イタリアのジェラテリア「Gelato d'Essai」が家庭向けに公開しているクレマのレシピ。全脂肪牛乳、少量の生クリーム、卵黄、砂糖、ブドウ糖、脱脂粉乳でつくる1kg分の配合です。作り方のあいだに、イタリアの街で冷たい菓子がどう暮らしに入ってきたのか、そして「ジェラート」がなぜひとつの配合ではなく、いくつもの型の総称なのかも見ていきます。
ジェラートとは何か、そして今日作るのはどれか
ジェラートは、ひとつの決まったレシピではありません。イタリアのジェラートには、牛乳を主体にしたフィオル・ディ・ラッテ(fior di latte)、卵黄を使うクレマ、果実と水を基調にしたソルベット(sorbetto)などの型があります。出発点のベースがそれぞれ違うので、ある型のレシピをそのまま別の型に当てはめることはできません。
同じクレマでも、公開されているレシピは一様ではありません。今回使うGelato d'Essaiの配合は、牛乳を約75℃まで温めて卵黄を温度に慣らし、合わせたベースを85℃まで加熱します。いっぽう、Great Italian Chefsに載っているクリスティーナ・ボウアーマン(Cristina Bowerman)のクレマは、分量が異なり、シナモンで香りをつけ、混ぜ始めが45℃、85℃で5分加熱という別の手順です。これは別のレシピなので、材料も工程もこの記事には混ぜません。
ですからここで紹介するのは、クレマのはっきりした一例であって、唯一の正解のジェラートではありません。よそで別の温度や割合を見かけたら、別の配合の話だと考えてください。
この料理に使える食材・調味料
うまくいかないときの見直し方
| 症状 | 見る点 | 戻し方 |
|---|---|---|
| 粉がダマになる | 粉類を一度に入れた、または砂糖と先に混ぜていない | 砂糖、ブドウ糖、脱脂粉乳を乾いたまま混ぜ、少しずつ散らしながら泡立て器で混ぜる |
| 卵が粒状に固まる | 火が強すぎる、混ぜる手が止まった、卵黄を急に温めた | 手順3で温かい乳液をゆっくり卵黄へ注ぎ、手順4では混ぜ続ける。温度計を使い、85℃を超えて煮立たせない |
| ベースが凍ってメーカーに入らない | ベースを冷凍庫に入れた | 公開元は冷蔵庫で寝かせてからブレンダーにかけ、メーカーへ入れる。冷蔵庫に置く |
| 硬い、氷っぽい | メーカーの容量、予冷、冷凍庫の条件 | 砂糖を減らさない。メーカーの容量、予冷、撹拌の説明書に従う。家庭の機器や冷凍庫には差があるため、原因をひとつに絞ることはできない |
| アイスクリームメーカーがない | — | Gelato d'Essaiは、製氷皿でベースを凍らせ、そのキューブを強力なブレンダーで撹拌する案を示している。機械で撹拌したものと同じ食感は期待しない |
基本の配合からの5つの変化
どれも基本の配合からの変更で、レシピの一部ではありません。
- バニラなし: バニラビーンズを省き、牛乳と卵黄のクレマを前面に出します。
- レモンの皮なし: 皮を省き、牛乳とバニラの香りに寄せます。
- ブドウ糖なし: 公開元の案どおり、ブドウ糖の代わりに追加の砂糖25gを使います。甘さや凍り方が変わることがあります。
- 季節の果物を添える: 果物は別添えにします。ベースには混ぜず、変えるのは配合ではなくお皿です。
- エスプレッソを添える: エスプレッソを別に添えて、温かさと冷たさの対比を楽しみます。液体はベースに混ぜません。

雪と氷と、街のなかの冷たい菓子
冷凍庫がなかった時代、冷たい菓子は雪や氷に頼っていました。ジェラートの機械を手がける企業グループが運営するカルピジャーニ・ジェラート博物館(Carpigiani Gelato Museum)は、その歴史を段階に分けて示しています。氷と雪を使った冷たい食べ物、16〜18世紀のジェラートと専門職の登場、19〜20世紀の街頭販売と冷凍技術、そして20世紀の機械化と衛生管理です。ただし博物館の概説なので、確定した起源の物語というより大まかな流れとして読むのがよいでしょう。ジェラートの始まりを、ひとりの人物やひとつの都市に結びつけることはできません。
もう少し近くから見られるのが、18世紀のナポリです。ケンブリッジ大学ゴンヴィル・アンド・キーズ・カレッジが紹介している歴史家メリッサ・カラレス(Melissa Calaresu)の研究は、この街のソルベッテリア(sorbetterie)を人々が集まる社交の場として、また街頭で売られた冷たい菓子と、上流層に限らない幅広い消費者に目を向けています。その背後には、雪や氷を集め、街へ運び、貯蔵する仕事がありました。暑さ、氷の供給、人が集まる場所が、冷たい菓子が街に届く道すじを形づくっていたのです。当時の氷菓やソルベは今日のジェラートと同じものではなく、現代のジェラテリアのカウンターをそのまま歴史に重ねて読むことはできません。
通じて言えるのは、イタリアの冷たい菓子が、誰が氷を手に入れられたか、どこで買って食べたか、のちに機械と衛生の決まりが製造をどう変えたかといった条件とともに姿を変えてきたことです。クレマ、フィオル・ディ・ラッテ、ソルベットと、今日の多彩な型は、その長い流れの先にあります。ジェラートはほかの形でも食卓に現れ、ブリオッシュにジェラートをはさんだ「brioche con gelato」は、それ自体がひとつの別の料理です。
保存とアレルギー
- 冷やす: 加熱したベースは浅い容器で急いで冷まし、室温に置いたままにしません。
- 温度: 日本の厚生労働省は、冷蔵庫は10℃以下、冷凍庫は−15℃以下を目安として示しています。
- 冷凍: できあがったジェラートは、清潔なふた付きの容器に入れて冷凍庫へ。家庭の冷凍庫では品質が変わることがあります。食べる分だけ取り出し、長く室温に出さないでください。
- アレルゲン: 乳と卵を含みます。表示を確認し、共用の器具では交差接触にも注意してください。
よくある質問
ジェラートとアイスクリームは何が違いますか?
脂肪分や空気の含み方だけで簡単に分けられる答えはありません。どちらも配合、作り方、出し方に幅があり、ここで使った資料も、数値で示せる単一の定義を裏づけてはいません。はっきり言えるのは、ジェラート自体がクレマ、フィオル・ディ・ラッテ、ソルベットなど、いくつもの型を含むということです。
アイスクリームメーカーがなくても作れますか?
Gelato d'Essaiは、ベースを製氷皿で凍らせ、そのキューブを強力なブレンダーで撹拌する方法を示しています。作れる方法ですが、機械で撹拌したものと同じ食感になるとは限りません。
ブドウ糖を砂糖に替えられますか?
替えられます。公開元はブドウ糖30gの代わりに追加の砂糖25gを提案しています。甘さや凍り方はいくらか変わると考えてください。
何人分ですか?
公開元はこのレシピを約1kg分として示しています。人数は書かれていません。器やスプーンの大きさで変わるためです。
卵黄は何℃まで加熱しますか?
公開元のレシピでは、牛乳を約75℃で卵黄に注ぎ、合わせたベースを沸騰させずに85℃まで加熱します。保持時間は書かれていません。日本の一般的な食中毒予防の指針に基づく家庭向けの追加確認として、ベース全体を混ぜながら測り、75℃以上が1分以上続くことを確かめてください。85℃を超えて煮立たせないようにします。















