オジャクバシュ(Ocakbaşı)の炭火で焼かれたケバブが運ばれてくると、肉の脇には薄いラヴァシュとサラダ、そしてブルグルのピラフが添えられています。目を引くのは、トマトの色を吸ってほんのり赤く染まったトマト色の麦です。肉を頬張る合間に口へ運ぶと、粒の歯応えが脂を受け止めて、皿の入口はむしろこちらにあるのだと気づきます。
ブルグル・ピラフ(Bulgur pilavı)は、米ではなくブルグルで作るピラフです。今回はトマトを加えたDomatesli bulgur pilavıを作ります。粗挽きブルグルを野菜と炒め、水を吸わせたらふたをしたまま蒸らす、というのが大まかな流れです。4人分の付け合わせで、下準備に10分、調理と蒸らしに30分が目安になります。日本では粗挽きブルグルを探し、玉ねぎ、ピーマン、トマトは身近な材料でそろえます。
炭火の皿から家庭の鍋へ、トルコの麦の食卓
Turkey’s For Lifeが伝えるフェティエの記録によると、この土地ではブルグルが袋や大きな容器から量り売りされ、地元のスーパーでは米や乾燥豆と並んでいるそうです。あくまでこの地域での観察ですが、麦が日々の食卓の棚に自然に並んでいる様子が浮かびます。ブルグルは小麦を加熱処理し、乾燥させてひき割りにした穀物で、小麦粉から作るクスクスとは別物です。米ではなく小麦の粒だと思って鍋に向かってください。加熱処理済みとはいえ、今回の粗い粒は鍋の中で水を吸わせて仕上げるので、生の米のように前もって浸水させる必要はありません。
台所では、粒の大きさで使い分けがされています。ピラフに向くpilavlık bulgurは粗い粒で、köftelik bulgurは細挽きです。後者はクスルやレンズ豆のキョフテなどに使われます。同じブルグルでも粒が細かいほど食感も吸水も変わるので、細挽きをこの分量と煮込み時間のまま置き換えることはできません。料理名を覚えるより、買うときにcoarse、pilavlıkという表示を見つけるほうがずっと役に立ちます。
Domatesli bulgur pilavıは「トマト入りのブルグル・ピラフ」という意味で、ブルグル・ピラフがすべてこの赤い配合になるわけではありません。ピラフに向く粗い粒と、サラダに向く細かい粒も別物です。なお、ブルグル自体をクスクスと呼ぶことはありません。
トマト味の麦の鍋から少し足を延ばすと、ガズィアンテプのFirik pilavıに出会います。文化観光省の地域料理資料には、ブルグルとfirikという別の穀物を合わせ、羊肉、ひよこ豆、トマトと赤ピーマンのペーストを使う例が載っています。今回のトマト味のブルグルだけの鍋とは別の料理で、ガズィアンテプでは必ずこの配合になる、というわけでもありません。同じピラフの名前でも、穀物を混ぜたり、肉や豆を添えたりと、地域で変わる穀物と具があることが伝わってきます。起源の年代や発祥の地までは、ここでは語りません。
日本の台所で作る一鍋に戻りましょう。トマトペーストはdomates salçası、赤ピーマンのペーストはbiber salçasıと呼ばれ、後者を使うピラフもあります。トマトペーストで代用する現地のレシピもあります。今回はトマトペーストを使う家庭向けの配合です。赤ピーマンのペーストがなくても作れますが、その風味まで同じにはなりません。炒めた野菜の甘みと麦の歯応えを残したいので、強いスパイスの混合で味を埋めることはしません。

途中で見つける、味の決め手
ヨーグルトを添えると、麦の皿が食事になる
トマト入りのブルグル・ピラフは、焼いた肉やケバブの付け合わせになります。トルコには、無糖ヨーグルトを別皿で添える食べ方もあります。熱々の麦に冷たいヨーグルト、きゅうりやトマトのサラダを合わせる食卓はいかがでしょうか。ヨーグルトは別皿にして、炊き込みません。そうすれば、粒の食感と冷たい添え物がそれぞれ引き立ちます。献立を肉料理へ広げたくなったら、こちらもどうぞ。
具を増やすと、付け合わせだった鍋が一皿の料理に変わっていきます。マッシュルームと加熱済みのひよこ豆を加えるトルコの料理家のレシピがあります。ただし、下の表の追加量は家庭向けの提案で、地域に決まった配合があるわけではありません。加熱済みの豆を使うことが大切で、生の乾燥豆を、短いブルグルの吸水工程にそのまま入れることはしません。豆は水気を切ってから加えてください。野菜、豆、香りの変え方を5つ、下の表にまとめました。全部を一度に足すための表ではありません。
| 変え方 | 4人分で加える量・タイミング | 仕上がりと注意 |
|---|---|---|
| ひよこ豆を加える | 加熱済みひよこ豆100gを水切りし、熱湯と一緒に加える | 麦だけより食べ応えが出る。乾燥豆のまま入れない |
| きのこを加える | マッシュルーム100gを5mm厚に切り、野菜と炒めて水気を飛ばす | きのこの風味が加わる。水気を残したまま麦を炊かない |
| 甘いパプリカに替える | ピーマン60gを赤パプリカ60gに替える | ピーマンの青い香りが減り、甘みが増える |
| バターで仕上げる | オリーブオイルを15mlに減らし、蒸らし後にバター10gを混ぜる | 乳の風味が加わる。乳アレルギーの場合は行わない |
| レモンを添える | 食卓でレモン汁小さじ2を4人分に分ける | 酸味を後から調整できる。煮る水に混ぜず、食べる直前に添える |
ブルグルのサラダであるクスルには、細挽きが使われます。粗挽きピラフの残りを、同じ工程でそのまま使えるわけではありません。サラダも作りたくなったら、粒の細かさの違いと、別の戻し方を知る入口としてこちらをどうぞ。
硬い粒、水っぽい鍋を直すには
仕上がりの目安は、ふくらんだ粒、硬い芯がないこと、鍋底の汁がほぼないことの三つです。水が消えただけでは完成と言えません。粒が硬い場合とやわらかすぎる場合では、するべき操作が逆になります。やわらかくなった粒は、追加加熱で元の歯応えには戻せません。硬さと汁を別に見ることが、鍋を立て直す近道です。
| 状態 | 起きやすい条件 | 戻し方 |
|---|---|---|
| 汁がなく粒が硬い | 蒸発が多い、粗い粒に時間が足りない | 熱湯大さじ1ずつ、ふたをして弱火で2分ずつ追加 |
| 汁が残り粒も硬い | 加熱時間が足りない | 水を増やさず弱火の吸水を続ける |
| 粒がやわらかく汁が残る | トマトの水分、ふたの違い、細かい粒 | ふたを外して弱火で1〜2分ずつ。粒を混ぜ潰さない |
| 塩味が濃い | 有塩だしやペーストの塩分 | 薄味の別の麦料理や野菜を添え、一口で食べる量を調整。砂糖で塩分は減らせない |
| トマトの酸味が強い | トマトの熟度や製品差 | 無糖ヨーグルトを別皿で添える。甘味を大量に足してピラフ全体を変えない |
次の一鍋に生かすために、袋の粒度、使ったトマト、加えた熱湯の量、吸水後の粒の状態を並べて覚えておきましょう。水の比率を一律に決めるだけでは、うまくいきません。次は同じ鍋、同じ粒で、加える水をほんの少し調整してみてください。具を増やす変更と水分の変更を、同時に大きく動かさないことです。一度に変えるのは少量にとどめると、何が効いたのかがわかります。
よくある質問と保存
ブルグルは小麦が原料で、グルテンを含みます。小麦アレルギーやセリアック病などで、小麦やグルテンを避ける必要がある人には適しません。加熱してもアレルゲンはなくなりません。だしやペーストの原材料表示も確かめ、調理器具からの交差接触にも気をつけてください。ヨーグルトには乳が含まれるので、乳を避けるなら添えないでください。野菜だけの配合だからといって、アレルギー対応の料理とは言えません。
細挽きブルグルやクスクスでも作れますか?
細挽きは吸水が速く、この粗挽き用の煮込みではやわらかくなりすぎやすいので、細挽きならクスルなど、その粒に合うレシピを選んでください。クスクスはブルグルとは異なる食品です。米も吸水と加熱のしかたが違います。同じ水量で置き換えないようにして、200g・350ml・8〜12分をそのまま転用しないでください。
辛い料理ですか?
基本の配合はトマトペーストと少量の黒こしょうで、唐辛子は入れません。黒こしょうは省いても作れます。biber salçasıを使う別の配合では、製品によって辛さが違うので、辛口か甘口かの表示を確かめてください。今回の配合には加えません。
水の代わりにだしを使えますか?
熱い野菜だしや鶏だし350mlで置き換えることはできます。有塩のだしなら、材料の塩を1gから始め、水を加える前にだしの塩味を確かめてください。鶏だしを使うと、植物性の材料だけの料理ではなくなります。市販のだしは、アレルゲン表示も確認しましょう。
作り置きと冷凍はできますか?
残ったら小分けにして速やかに冷まし、調理後1〜2時間以内に冷蔵庫へ入れます。鍋いっぱいのままゆっくり冷ますことはしません。冷蔵庫は0〜5℃が目安です。冷蔵は48時間以内に食べ切り、食べ切れない分は早めに冷凍してください。ヨーグルトや生の添え物は、別に保存します。冷凍は1食分ずつ密閉し、調理日を書いておきます。解凍は冷蔵庫で行い、完全に解凍してから24時間以内に使い切ってください。このレシピ固有の冷凍可能な日数は、ここでは示せません。
温め直すときは、中心まで湯気が立つほど十分に熱くします。冷たい部分を残さず、再加熱は一度だけにしてください。電子レンジなら途中で混ぜて、中心に冷たい塊が残っていないか確かめます。乾くときに少量の水を足すのは食感の調整であり、安全な加熱の代わりにはなりません。長時間常温に置いた料理は、再加熱すれば必ず安全になるとは考えないでください。いつ調理して冷蔵したのかわからないものは、食べないでください。
栄養の目安は?
frontmatterの値は、ピラフのみ1人分の概算で、約260kcal、たんぱく質7g、脂質8g、炭水化物45gです。ヨーグルトや肉、アレンジで加える豆やバターは含みません。ベースレシピの栄養目安に、計量したオリーブオイル大さじ2を4等分して加味した編集上の概算なので、製品や野菜の量で変わります。実測値としては扱わないでください。糖尿病の予防、血糖値の抑制、体重減少などの効果をうたうものではありません。











