エンパル・ゲプク:ココナッツミルクとスパイスを含ませた牛肉
牛肉はとても柔らかく、スパイス入りのココナッツミルクはほとんど残らないほど煮詰まっていること。そのあと少量の油で軽く揚げ、乾いてしまう手前で止めます。
2008年10月29日、インドネシア語の家庭料理ブログ「Dapur Gue」を書くLiaが、エンパル・ゲプクのレシピを投稿しました。Liaはこれを自分の料理として紹介していて、夫と義父に頼まれて作った一品だそうです。以下のレシピは、この一つの家庭版に沿っています。ある家庭のレシピであって、唯一の正解でも、専門家が検証した標準でもありません。世界ごはん紀行編集部では試作していません。
作り方は何段階かに分かれます。まず牛肉を半ば柔らかくなるまでゆで、引き上げて繊維に沿って切ります。ゆで汁は別の用途のために取っておきます。切った肉は、サンタン(ココナッツミルク)、塩、グラ・メラ(赤砂糖)、丸ごとの香味素材、すりつぶしたスパイスのペーストと一緒に鍋に入れ、いちばん弱い火で蓋をきっちり閉めたまま、肉がとても柔らかくなり調味液がほぼ乾くまで煮含めます。その後、必要なときだけ肉を軽くたたき、少量の油でさっと揚げて、野菜を添えて出します。
レシピには人数も調理時間も温度も書かれていません。各段階は「半ば柔らかい」「とても柔らかい」「ほぼ乾く」「乾きすぎない」という状態の目安で判断します。以下の手順でも、この目安をそのまま残しました。同じ国の料理はインドネシアの国のページもご覧ください。
*エンパル(empal)*は、香辛料で味つけして揚げた牛肉を指す呼び名で、ゲプク(gepuk)は「たたくこと」を指します。単にゲプクと呼ばれることもあります。材料名は、アジア食材店のラベルで目にするのがインドネシア語名なので、日本語とインドネシア語を並べて書いています。
ゲプクとは何か、エンパル・ゲントンとの違い
西ジャワ州の言語事務所が2023年に刊行した『西ジャワ料理辞典(Kamus Kuliner Jawa Barat)』には、ゲプクの項目があります。牛肉をゆで、香辛料で柔らかくなるまで煮て、たたいて揚げる料理と説明されていて、Liaのレシピの順序と一致します。ただしこの辞典が記録しているのは調理法で、どこか一つの都市を発祥地とも、決まった一つの配合とも書いていません。この記事もそうしています。
同じ辞典はエンパル・ゲントン(empal gentong)を別の料理として載せていて、チルボンのスープだとしています。名前は重なりますが、エンパル・ゲントンは汁物として食べ、エンパル・ゲプクは液体がほぼなくなるまで煮含めてから揚げる、切った牛肉の料理です。ゲントンのレシピにある煮汁、内臓、スープの味つけをこの料理に持ち込まないでください。
公開されている他のエンパル・ゲプクのレシピは、Liaの版とかなり違います。Primarasaのレシピはタマリンドとクミンを使い、牛肉を煮込む前にたたき、残りの煮汁と濃いサンタンで煮てから、たっぷりの油で揚げます。紹介文と材料表で牛肉の部位の名前も異なります。ResepKokiのレシピも先に肉をたたき、ゆで汁400mlを取り分けて煮込みに使い、炒めたスパイスペーストにインスタントサンタンと水、タマリンド水を加えます。調味料ブランドのDapur KOBEのレシピは、オイスターソース、ケチャップマニス、マーガリンを使い、ソースを塗りながら網で焼いて仕上げます。どれもそれぞれに成り立つレシピです。この記事ではLiaの版だけを使い、他の材料や工程は混ぜていません。
この料理に使える食材・調味料
道具
- 最初にゆでるための鍋
- ゆで汁を取り分ける別の容器
- 包丁とまな板
- 煮含め用の、蓋がきっちり閉まる鍋
- すり鉢とすりこ木(スパイスペーストをすりつぶすため。必要なら牛肉をたたくためにも)
- 仕上げに揚げるための平鍋
選び方と代用
牛肉。 daging bagian pahaは、もも部分の肉という意味で、特定の筋肉を指してはいません。精肉店で買うときは、ゆでて煮含めるためのもも肉がほしいと伝え、おすすめを聞いてみてください。
サンタン。 「santan」または「ココナッツミルク」と表示された商品を探します。特定のブランドや種類の指定はありません。インスタントサンタンについては、後ろのオプションの項で触れます。
ダウン・サラム。 サラム葉はインドネシアの葉で、ローリエ(月桂樹)とは別の植物です。同じものとして扱わないでください。
バワン・メラ、ガランガル、ウコン。 アジア食材店やスパイス売り場で、インドネシア語の名前で探します。インドネシアの小玉ねぎ、ガランガル、ウコンです。小玉ねぎを普通の黄玉ねぎに置き換えるのはやめましょう。
グラ・メラ。 インドネシア語名で探します。分量は大さじ1または好みでなので、甘さは自分で調整できます。
目安の見方
レシピに時間が書かれていないので、つまずきやすいのは次へ進むのが早すぎるときか、加熱が長すぎるときです。それぞれの目安が何を意味し、手順の中でどうすればよいかをまとめました。
| 見た目 | 意味 | 対応 |
|---|---|---|
| ゆでたあとも牛肉がまだ硬い | 半ば柔らかい状態に届いていない | そこに届くまでゆで続ける |
| 煮含めの鍋にまだ液体がたっぷりある | 調味液がほぼ乾いた状態ではない | 蓋をきっちり閉め、いちばん弱い火で煮含め続ける |
| 煮含めた牛肉がすでにほぐれている | たたく必要はない | たたかずに、そのまま揚げに進む |
| 平鍋で牛肉が乾きすぎてきた | 揚げる時間が長すぎる | 次回は早めに取り出す |
| ゆで汁を煮含めに足したくなる | ゆで汁は別の用途のためのもの | 入れない。煮含めに使うのはサンタンと調味料だけ |
レシピ作者のメモ:ココナッツ水とインスタントサンタン
ここからは、Liaの投稿と、読者のコメントへのLiaの返信に書かれていた内容です。基本のレシピを変えるものではなく、どれも分量は示されていません。
サンタンをしぼるときのココナッツ水。 Liaによると、おろしたココナッツからサンタンをしぼるときにココナッツ水を使うと、エンパルがより茶色く仕上がります。その場合は、砂糖を好みで減らします。ココナッツ水の割合も、砂糖を減らす量も示されておらず、材料表のサンタン350mlはそのままです。

次の2枚の写真は、この考え方を図で示したものにすぎません。ココナッツ水をどのように、いつココナッツに加えるのかは書かれておらず、しぼるための布やこし器などの道具も示されていません。


インスタントサンタン。 読者がインスタントサンタンについて尋ね、Liaは使ってよく、風味は*グリ(gurih、うまみのある味)*のままだと返信しています。袋の分量も薄め方も示されていないので、インスタントサンタンの量が基本の350mlと同じになるとは考えないでください。同じ返信でLiaは「blender dan cemplung」(おおよそ「ブレンダーにかけて、ぽんと入れる」)とも書いていますが、何をブレンダーにかけるのか、手順のどこに入るのかは説明していません。

食品衛生と残りもの
レシピ自体は保存について触れていません。以下は厚生労働省が示す、家庭での一般的な食中毒予防の目安です。エンパル・ゲプクに限った話ではなく、上の火通しの目安の代わりになるものでもありません。
- 生の肉は、下ごしらえのあいだ、ほかの食品と分けて扱う。
- 食品は十分に加熱する。一般的な目安は、中心温度75°Cで1分以上。
- 残りものは浅い容器に小分けして早く冷まし、冷蔵する。
- 残りものは十分に再加熱する。汁物は沸騰させる。
この料理について安全な保存期間は確かめられていないので、ここでは示しません。
よくある質問
ゆで汁は、サンタンで煮含めるときに入れますか?
入れません。Liaのレシピは、ゆで汁を別の用途のために取っておくとしていて、煮含めに戻すことはありません。ゆで汁を再利用する他のレシピもありますが、それはそのレシピの作り方で、このレシピのものではありません。
エンパル・ゲプクとエンパル・ゲントンは同じ料理ですか?
別の料理です。西ジャワ料理辞典はこの2つを別に載せています。エンパル・ゲントンはチルボンのスープで、ゲプクは牛肉を香辛料で柔らかく煮て、たたいて揚げる料理です。
牛肉は必ずたたかないといけませんか?
必要なときだけです。Liaは、牛肉がすでにかなりほぐれていることが多く、その場合はたたかなくてよいと書いています。
インスタントのココナッツミルクを使えますか?
Liaは読者のコメントへの返信で使えると答え、味はうまみのあるままだと付け加えています。分量も薄め方も示されていないので、量は自分で決め、味を見ながら調整してください。
サラム葉の代わりにローリエを使えますか?
サラム葉と月桂樹は別の植物で、このレシピは代用品を示していません。ダウン・サラムはアジア食材店で探してください。
何人分で、どのくらい時間がかかりますか?
レシピには書かれていません。人数も、下準備・加熱・全体の時間も示されていないので、この記事でも示しません。
何日保存できますか?
レシピは保存期間を示していません。上の一般的な目安に従い、残りものは浅い容器で早く冷まして冷蔵し、十分に再加熱してください。
















