クア・バルン:葉と根のスープで煮る、骨付き豚スペアリブ
骨付きの豚スペアリブ、ひとつかみの丸ごとの葉とレモングラス、そして根菜、シャロット、唐辛子を挽きたてのまま合わせた1つのペースト。油もだしも野菜も使いません。味は、水に入れたスペアリブと香味素材とペーストから出てきます。
Iga babi(イガ・バビ)は、インドネシア語でそのまま「豚のあばら肉」のことです。豚スペアリブの料理法は1つではないので、この記事では、はっきり名前のついた1つの形を選びました。それがクア・バルン(Kuah Balung)です。骨付きの豚スペアリブを、裂いたカフィアライムの葉、インドネシアンベイリーフ、たたいたレモングラスといっしょに水で煮て、にんにく、シャロット、ターメリック、ガランガル、カーリーレッドチリ、塩、しょうがを挽いたペーストを加え、弱火で煮るバリのスープです。イガ・バビと呼ばれる料理がすべてスープだと言っているわけではありません。
このレシピは、2019年にインドネシア芸術大学デンパサール校(Institut Seni Indonesia Denpasar)の出版センターと、バリ島ギャニャール県の商工局が共同で出した書籍『Sejarah Kuliner Gianyar』(ギャニャールの料理史)の、クア・バルンの項に従っています。同書はクア・バルンを、バリの伝統的なおかず(side dish)として紹介しています(S1)。これとは別に、インドネシアの食情報サイトdetikFoodは、バルンを、肉が少し残った豚のあばら肉や骨をだしで柔らかくなるまで煮て、basa genepで味付けした料理と説明し、ガルンガン(Galungan)の料理の1つに挙げています(S2)。
世界ごはん紀行編集部では、このレシピを台所で試作していません。分量と手順は、同書のクア・バルンの項に従っています。同書には人数、調理時間、飾りの記載がないため、この記事でも加えていません。
クア・バルンとは、そしてこの記事が混ぜないもの
これは汁を中心にした豚スペアリブ料理で、焼いたりグレーズしたりする料理ではありません。 同じ「Iga Babi Bali」の名前で、米国の食品会社Griffith Foodsは、現代的なバリ風の骨付き肉を紹介しています。ドライラブをすり込んで低温でじっくりオーブンローストし、甘い旨みのグレーズを塗ってブロイラーで焼き、ごまのブリットル(砕いた飴がけ)とコリアンダーで仕上げる料理です(S3)。これは別の調理法で、その材料も手順も、ここでは使いません。バリのbabi guling(豚の丸焼き)も別の料理です。このスープをインドネシアのほかの料理の中に位置づけたいときは、インドネシアのページから入ってください。
同書の記述は短く、飾り気がありません。クア・バルンの項には、材料表が1つと、手順が2つあるだけです。まず水を沸かし、スペアリブをライムの葉、レモングラス、ベイリーフとともに火が通るまで煮ます。次に挽いた香辛料を加え、火を弱め、味がなじんで肉に火が通るまで煮ます。温かいうちに供します(S1)。同じページの隣には、未熟なジャックフルーツを使うクア・バルンのレシピも載っていますが、それは別のレシピで、ここには混ぜていません。
同書の材料表にはiga babi(豚のあばら肉)とありますが、手順の最初の文にはiga sapi(牛のあばら肉)と書かれています。この記事は、材料表の豚肉と、項に書かれた料理の名前に従います。これは編集上の判断で、著者や出版元が確認した訂正ではありません。塩の行は「2 sendok the garam」と印刷されています。これはsendok teh(小さじ)の誤りと読んで、小さじ2のまま、グラムには換算せずに使います(S1)。
detikFoodの説明は、同書のレシピより幅があります。basa genepの味付けに触れており、ジャックフルーツ、豆、シダなどの野菜が入る版もあるそうです(S2)。バルンの変わり方を知る手がかりにはなりますが、下の分量つきレシピに、そうした野菜は入りません。
この料理に使える食材・調味料
選び方と代用
インドネシアの葉と根が、このスープの香りの大部分を担っています。下に代わりの案を挙げたものは、いずれも味が変わります。1対1の置き換えではありません。
- 豚スペアリブ:骨付きの豚スペアリブを、肉屋で切り分けてもらってください。牛肉には替えないでください。
- daun jeruk(カフィアライムの葉): 同じ葉として売られている冷凍品なら使えます。直接の代用品は確認されていません。入れないと柑橘の葉の香りが弱くなり、ベイリーフ(月桂樹の葉)では代わりになりません。
- daun salam(インドネシアンベイリーフ): 普通のヨーロッパ系のベイリーフではありません。インドネシア食材店にあれば、サラムの葉を使ってください。正確な代用品はなく、省くと香りが変わります。
- レモングラス:東南アジア食材店で、生や冷凍が売られています。しょうがだけでは同等になりません。
- シャロット:インドネシアのシャロットを使います。ほかに手に入らなければ小ぶりの赤玉ねぎで代えられますが、大きく、甘くなります。専門店で手に入るシャロットのほうが、求める味に近づきます。味の調整は、書かれたとおりに一度作ってからにしてください。
- 生のターメリック:生の根を使います。パウダーに置き換える正確な分量は示せません。生のターメリックがなければ、色と香りが変わります。
- ガランガル:アジア食材店で、生や冷凍が売られています。しょうがは、ガランガル特有の、鋭く、松や柑橘を思わせる香りがないため、直接の代用にはなりません。しょうがは別の材料です。
- カーリーレッドチリ:赤唐辛子は辛さに大きな幅があります。見つかれば、似た種類の中くらいの赤唐辛子を6本使ってください。種を除くと辛さは下がりますが、仕上がりも変わります。バードアイチリ(小粒の激辛唐辛子)は同等ではありません。
- 塩:小さじ2の塩を使います。食卓での追加の塩は任意です。
道具
- 1,500 mlの水とスペアリブが入る、丈夫な鍋
- ペースト用のすり鉢とすりこぎ、または小型のブレンダー
- 包丁とまな板
- 食品用の温度計
- 木べらとおたま
- 盛り付け用の器
鍋が思いどおりにならないとき:やわらかさ、塩、辛さ、香り
次の表で、やわらかさ、味付け、香りを見直してください。
| 状態 | 何が起きているか | 対処 |
|---|---|---|
| スペアリブがまだ固い | 骨付き肉は部位によって違う | そっと煮続けて、もう一度確かめる。時計だけで止めない |
| スペアリブがやわらかく感じる | やわらかさは食感の目安にすぎない | それでも、いちばん厚い部分の中心が75°Cで1分以上に達したか確認する |
| スープが薄く感じる、または味が強く感じる | スープの濃さと味付けの見直しが必要 | 初めて作るときは、書かれた水とペーストの分量を守る。変更は次に作るときに |
| 塩辛すぎる、または塩気が足りない | 塩の粒の大きさは製品によって違う | 最初の1鍋は小さじ2のままにする。足したいときは食卓で |
| 辛すぎる | カーリーレッドチリは大きさも辛さも違う | 次回は、似た大きさのもっとマイルドな唐辛子を選ぶか、種を一部除く。ただし仕上がりは変わる |
| 香りが平坦、または「違う」 | 葉が足りない、またはベイリーフ、しょうが、パウダーのターメリックで代えた | 柑橘の葉、サラム、ガランガルの香りが弱まるか、違ってくる。次回は、インドネシアの葉と生の根をアジア食材店で探す |
同じ名前をめぐる違いと比較
ここでの比較は背景の話で、上のレシピに加える手順ではありません。
- スープとロースト: クア・バルンは汁で煮ます。Griffith Foodsが紹介するIga Babi Baliは、ドライラブをすり込み、低温でじっくりローストし、グレーズを塗ってブロイラーで焼き、ごまのブリットルとコリアンダーで仕上げます。その記事は、ブランド製品を使う商業的なインスピレーションで、完全なレシピではありません(S3)。
- スープの濃さと幅:同書のレシピが使うのは、葉、レモングラス、挽いた1つのペーストだけです。detikFoodは、バルンをbasa genepで味付けし、ジャックフルーツ、豆、シダといっしょに煮ることもあると説明しています(S2)。同書には、このレシピの隣に、ジャックフルーツ入りのクア・バルンも別に載っています(S1)。
- 肉の部位:このレシピは、骨付きで切り分けたスペアリブを使います。肉と骨の比率で、器1杯の肉の量と、やわらかくなるまでの時間が変わります。
- 葉: daun jerukとdaun salamが手元にあるかどうかが、ほかのどの選択よりも香りを変えます。
- 唐辛子:カーリーレッドチリ6本が配合ですが、辛さは唐辛子によって違います。同じ本数でも、ロットが変わればかなり違う味になりえます。
よくある質問
イガ・バビとクア・バルンは同じ意味ですか?
同じ意味ではありません。 Iga babiは豚のあばら肉のことで、料理は1つに限りません。この記事は、『Sejarah Kuliner Gianyar』のスープ料理クア・バルン(S1)という名前のついた1つの形を選んでおり、それが選択であることを明記しています。
イガ・バビは、普通は焼いたりローストしたりする料理ではないのですか?
ローストしてグレーズを塗る版もあります。Griffith Foodsは、オーブンでローストしてグレーズをかける、現代的なバリ風のIga Babiを紹介しています(S3)。ギャニャールの書籍に書かれたクア・バルンはスープです(S1)。どちらも同じ名前を名乗りますが、別の料理です。
daun jerukやdaun salamが見つからないときは?
どちらも、正確な代用品は確認されていません。省くこともできますが、柑橘の葉やサラムの香りがなくなります。ヨーロッパ系のベイリーフは、daun salamと同じではありません。冷凍のdaun jerukは、同じ葉として売られているものなら使えます。
どのくらい煮ればよいですか?
同書には書かれていない(S1)ので、この記事は時間を示しません。スペアリブがやわらかくなるまで煮て、いちばん厚い部分の中心が75°Cで1分以上に達したことを温度計で確かめてください。この数値は、日本の厚生労働省の家庭向けの案内によるものです(S5)。米国のローストの表にはスペアリブのオーブン時間が載っています(S4)が、それはローストの時間で、この鍋で煮るスープには当てはまりません。
野菜を入れてもよいですか?
このレシピでは入れません。detikFoodは、ジャックフルーツ、豆、シダ入りのバルンに触れています(S2)が、ギャニャールの書籍で分量が示されたクア・バルンに、野菜は入っていません(S1)。
本の手順に牛肉とあるのに、なぜ豚肉なのですか?
同書の材料表には豚のあばら肉とあり、手順には1か所だけ牛のあばら肉と書かれています(S1)。この記事は、材料表の豚肉と、料理としての名前に従っています。これは編集上の読み方で、同書の著者や出版元が確認した訂正ではありません。




















