二度目の油から上がった手羽は、深い黄金色で衣がごつごつしています。コンロの脇の小鍋では、コチュジャンと米飴とケチャップで作ったレンガ色のソースがふつふつと泡立っています。熱い手羽を放り込んでほんの数秒からめ、ごまをふり、白い角切りのチキンム(大根のピクルス)と一緒に食卓へ。揚げたての衣に甘辛いソースをまとわせる、これが양념통닭(ヤンニョムトンダク)の一皿です。
手羽は二度揚げして衣をしっかり固め、熱いソースには食べる直前に短くからめるだけにします。数字は2つ、油の温度と肉のいちばん厚い部分の中心温度を、別々に管理してください。
양념통닭、カリッとした衣を覆う甘辛い赤いソース
양념통닭は、양념치킨(ヤンニョムチキン)とも呼ばれる、甘くて酸っぱくて辛いソースをからめた韓国のフライドチキンです。ひとくちに「韓国フライドチキン」といっても型はいくつかあり、この記事で作るのは、衣がしっかりしていてソースをからめるタイプです。分量と作り方は、韓国料理の書き手マンチ(Maangchi)が公開しているレシピに沿っています。
*양념(ヤンニョム)*は「味付け」「合わせだれ」といった意味です。*통닭(トンダク)*について、マンチは「丸ごとの鶏」と説明していますが、彼女のレシピで使うのは手羽肉です。名前から丸鶏を一羽まるごと使う料理と思い込まないでください。
家庭で作るときの難所は、油の温度を範囲内に保つことと、肉の中心まで火が通ったことを確かめることの2つです。温度計があればどちらも難しくありません。使いどころは手順のなかで示します。
二度揚げと、2つの温度
マンチのレシピでは、手羽を二度揚げします。一度目は鶏肉に火を通すため、二度目は表面を仕上げて衣をより硬くカリッとさせ、ソースに負けにくくするためです。
マンチの紹介文では、二度目のほうが高温だと説明されています。ところが書かれた手順では、一度目も二度目も同じ330〜350°F(約166〜177°C)です。このレシピは書かれた手順に従い、一度目のあとに油を同じ温度帯へ戻してから二度目を揚げます。揚げ時間は原典ではどちらも約12分です。
この330〜350°Fは油の温度で、鶏肉が安全に食べられるかどうかを直接示す数字ではありません。肉については、厚生労働省の目安をそのまま使います。肉の中心を75°Cで1分以上加熱するという基準です。米国農務省(USDA)は、鶏肉の安全な最低中心温度として165°F(73.9°C)を挙げています。揚げ時間は手羽の大きさや鍋、油の量で変わるので、12分は目安にとどめ、最も厚い部分の温度計の値で判断してください。
この料理に使える食材・調味料
日本での選び方と代用
| 材料 | 選ぶ目安 | 代替するなら |
|---|---|---|
| コチュジャン | 韓国のコチュジャン。ソースの辛みと発酵の深みを担う | 味噌と唐辛子では同じ味にならない |
| 米飴 | 「米飴」「ライスシロップ」「쌀조청」の表示のもの | 水あめは近い選択肢だが、甘さと粘度が違う。はちみつは香りが変わり、焦げやすい |
| ポテトスターチ | 「ポテトスターチ」「じゃがいもでんぷん」の表示 | 片栗粉は一般にじゃがいものでんぷんだが、同一と決めつけず表示を見る |
| 小麦粉 | 普通の小麦粉 | 薄力粉のようにたんぱく質の少ない粉でも作れるが、衣の食感は変わる |
| 塩 | kosher salt(コーシャーソルト) | 食塩は粒の大きさと塩味が違い、同じ容量では正確な置き換えにならない |
| チキンム | 任意。レシピ本体ではない | 見つからなければ省く |
コチュジャンと米飴は、このソースの味と艶を決める材料です。ここは普通の調味料で代用せず、できれば表記どおりのものをそろえてください。
道具
- 厚手で深さのある鍋か深めのフライパン(深さ約2インチの油を入れても、縁まで十分に余裕があるもの)
- 油温と肉の中心温度を測れる温度計(またはそれぞれ1本ずつ)
- 長いトング
- バットに載せる網
- 衣のかすをすくう目の細かい網じゃくし
- 衣をからめる大きなボウル
- 手羽をからめられる広さのフライパン(ソース用)
- 生の鶏肉用の皿と調理器具(盛り付け用とは別に)
油温と中心温度を別々に測るので、温度計は2本あると手が止まりません。1本で兼ねるなら、生の肉と火の通った肉のあいだでプローブを洗ってください。
火の通りと衣のカリッと感、うまくいかないとき

手羽を切ってみて、中心の肉が不透明で、生っぽい部分やピンク色の部分がなければ、よい兆候です。ただし色だけでは火が通った証拠になりません。骨を避けた最厚部の温度計の値で確かめてください。
衣がカリッと仕上がるかどうかは、3つの習慣で決まります。少量ずつ揚げて油の温度を範囲内に保つこと、揚げた手羽は重ねずに網で油を切ること、ソースには食べる直前に短くからめるだけにすることです。
| 困りごと | 考えられる原因 | 対処 |
|---|---|---|
| 衣がべたつく、しなっとする | 鍋に入れすぎて油温が下がった。ソースに長く置いた | 少量ずつ揚げ、油を330〜350°Fに保つ。二度目の揚げ直後にからめ、すぐ食べる |
| 衣が急に濃く色づく、油に衣のかすが浮く | 油が熱すぎる。はがれた衣が鍋で焦げている | 温度計を見て火加減を調節する。バッチのあいだにかすをすくう。焦げた油は使い続けない。小さい鍋では一度に揚げる量を減らす |
| 外は黄金色なのに中の温度が足りない | 手羽が大きい、不ぞろい。油が低温、または入れすぎ | 油に戻し、最厚部が75°Cで1分以上になるまで揚げる |
| ソースが濃く固い | 加熱しすぎ | 弱火で短く温めるだけにし、からめたらすぐ火から下ろす。水で薄めるのは原典から外れる方法で、味が軽くなる |
変えて楽しむ
どれも、盛り付けや下ごしらえを調整する案です。原典から外れるものは、その旨を添えています。
- ソースを別添えにする:ソースを小鉢に入れ、つけて食べます。最後の一切れまで衣のカリッと感が残ります。
- 揚げただけの手羽とソースをからめた手羽を並べる:一部はソースをからめずにそのまま盛り、残りをからめます。2つのタイプの違いを同じ食卓で味わえます。
- 辛さを控える:コチュジャンを減らすと辛みは下がりますが、甘み・酸味・辛みのバランスも変わります。原典の比率から外れるので、少しずつ調整してください。
- 部位をそろえる:手羽先だけ、または手羽元だけにすると、大きさがそろいます。揚げ時間の調整が必要なので、バッチごとに温度計で確認してください。
- チキンムと一緒に:冷たくて酸っぱい大根が、甘辛い鶏肉のあいだの口直しになります。
韓国の「チキン」と食べ方

韓国民族文化大百科事典(韓国学中央研究院)によると、韓国語の*치킨(チキン)*は、鶏肉一般ではなく、揚げた鶏料理を指す言葉として一般に使われます。同事典は、電気オーブンで丸焼きにした鶏の流行から、切り分けたフライドチキンへの移り変わりを説明しています。1977年のリムズ・チキン(Lim's Chicken)の名を挙げ、양념치킨が人気になったのは1980年代の中ごろから後半だと述べています。
韓国観光公社の公式サイトVISITKOREAは、揚げ鶏が1970年代に広がったと説明しています。同記事も1977年のリムズ・チキンと、1981年のペリカナ(Pelicana)に触れています。マンチは、양념통닭が1980年代初めに広まったという記憶と、チキン店やテイクアウトの思い出を語っています。時期の捉え方は資料ごとに違うので、特定の発明者や起源の年を一つに決めないほうがよいでしょう。
VISITKOREAは、フライドチキンをスポーツ観戦や祝日、祭りの食べ物として紹介しています。ビール(맥주)と合わせる*치맥(チメク)*も紹介しています。同じ機関は、大邱(テグ)を鶏肉産業の中心として説明していますが、それは大邱についての話で、韓国風フライドチキンのすべてが大邱から生まれたという意味ではありません。
VISITKOREAの記事は、衣の厚いカリッとしたタイプと、衣の薄い「エンボ(embo)」タイプも区別しています。このレシピは、衣が厚く、ソースで仕上げるタイプです。
マンチは、チキンムとビール、またはアルコールを含まない飲み物を添える食べ方を勧めています。ビールはよくある組み合わせですが、必須ではありません。家族の食卓なら、ソフトドリンクでもまったく問題ありません。
VISITKOREAは、丸鶏を使い、衣もソースも異なる、独自のヤンニョムチキンのレシピも公開しています。材料にはしょうがの絞り汁やいちごジャムが含まれます。別のレシピなので、その分量はこのレシピには混ぜていません。
似た料理との違い
- 닭강정(タッカンジョン)は別の揚げ鶏料理です。マンチは別のレシピとして公開しており、양념통닭と同じではありません。
- 닭갈비(タッカルビ)は、揚げず、炒めて作る鶏料理です。
- 안동찜닭(アンドン・チムタク)は、鶏を煮込む料理です。揚げる調理と比べるとよい対照になります。
辛みと発酵の味がもっと並ぶ韓国の食事にするなら、キムチチゲがよく合います。
よくある質問
片栗粉だけにして、小麦粉は省いてもいいですか?
原典は両方を使い、でんぷんを主に、小麦粉で衣の骨格を足しています。でんぷんだけにすると原典からの変更になり、衣の仕上がりも違ってきます。最初は書いてあるとおりに作ってください。
二度揚げを省けますか?
二度揚げはこのレシピの中心です。一度目で鶏肉に火を通し、二度目で衣を固めてソースに耐えられるようにします。一度だけの揚げは原典の方法ではなく、衣が柔らかくなりやすいでしょう。どう揚げても、肉のいちばん厚い部分が75°Cで1分以上になる必要があります。
辛さを控えられますか?
コチュジャンを減らすことはできますが、甘み、酸味、うまみのバランスも変わり、原典からは離れます。ソースを別添えにして、食べる人が量を決める方法もあります。
手羽以外の部位でも作れますか?
原典は手羽肉を使います。ほかの部位は大きさや厚みが違うため、揚げ時間も変わります。12分を目安にせず、バッチごとに最厚部を温度計で確認してください。
作り置きできますか?
揚げてソースをからめたばかりのときがいちばんおいしく、ソースをからめたあとは放っておくほど衣が柔らかくなります。このレシピは、加熱済みの鶏肉の冷蔵時間や保存期間を示していません。残りを温め直すときは、カリッと感と安全を別々に考えてください。食感は完全には戻りません。中心まで温め直し、温度計で確認してください。














