骨まで火が通ってやわらかい鶏肉、とろりと煮詰めて肉にからむ赤ワインのソース、そして別に火を通して形を保った小玉ねぎときのこです。
冷える夜、厚手の鍋の蓋を開けると、赤ワインとタイム、ベーコンの香りが湯気と一緒に立ちのぼります。鍋の中では焼き色をつけた鶏肉が深い赤のソースに浸り、仕上げにバターで照りよく火を通した小玉ねぎと、別のフライパンで焼いたきのこを合わせると、ソースにつやが出ます。これが、鶏をワインで煮込むフランスの料理、コック・オー・ヴァンです。
重そうだとか、特別な材料が要りそうだとか、身構える人もいるかもしれません。でも芯になるのは、鶏肉、赤ワイン、ベーコン、数種類の香味野菜、そして仕上げの小玉ねぎときのこだけです。普通のスーパーで買える骨付きの鶏もも肉、厚切りベーコン、マッシュルームで十分組み立てられます。ここではブルゴーニュ風の赤ワイン煮を手本に、家庭の鍋で作りやすい分量にまとめました。
分量は公開されている複数のレシピを見比べてまとめた家庭向けの配合で、特定のレシピの写しではありません。この料理はレシピによって幅が大きく、Le Cordon Bleu Londonのものは鶏1.2kgに赤ワイン1L、だし500ml、アーカイブされたBBC Foodのジェームズ・マーティンのレシピは鶏2kgに赤ワイン500mlです。煮汁の量と鶏の火の通りは、数字を鵜呑みにせず、手元の鍋で見極めてください。
なぜ雄鶏を煮るのか ― 名前とブルゴーニュの話
「コック」は雄鶏、「ヴァン」はワインのこと。Le Cordon Bleuは料理名を文字どおり「ワインの雄鶏」と訳しています。年を重ねた雄鶏の硬い肉を、ワインで時間をかけて煮てやわらかくする料理として語られてきました。ただし同じ資料は、現代のフランスの家庭では若鶏を使うとも述べています。雄鶏は用意しなくて大丈夫で、鶏もも肉でおいしく作れます。
硬い鳥がワイン煮でやわらかくなる、という成り立ちは、この料理の魅力のひとつです。ただ、もともと農家の節約料理だったのかどうかは、今回あたった資料からは確かめられません。Côte-d'Or Tourismの長い煮込み時間の説明も、あくまで年を取った雄鶏の話です。この記事で使う若鶏にそのまま当てはめないでください。
ガリアの首長ヴェルキンゲトリクスがカエサルに雄鶏を送り、そこからこの料理が生まれた、という話がよく語られます。Côte-d'Or Tourismは、これを裏づける古代の史料はないとしています。
同じ地域資料によると、鶏をワインで煮る関連レシピは1864年の料理書に見られ、今日の料理は19世紀のブルジョワ階級の料理として定着しました。米国での普及には、1961年のジュリア・チャイルドの本とテレビ番組が一役買ったといいます。
代表例として紹介されることが多いのは、伝統的にピノ・ノワールで作るブルゴーニュの赤ワイン版です。ただしこれは型のひとつで、唯一の正解ではありません。Côte-d'Or Tourismは、アルザスのリースリング版、ヴァン・ジョーヌとモリーユ茸を使うジュラ版、オーヴェルニュやリヨネの地元ワイン版にも触れています。土地のワインで鳥を煮るという考え方が共通していて、各地の細かな作り方はこの記事では扱いません。フランスのほかの地方の食卓なら、アルザスのタルト・フランベ、別の煮込みならポトフ、南西部の豆と肉のカスレとも見比べてみてください。
この料理に使える食材・調味料
使う道具
- ふた付きの厚手の鍋(ココットやキャセロール)。静かな煮立ちを保ちやすいですが、厚底でふたのある鍋なら代用できます
- ふた付きの小鍋(小玉ねぎ用)
- フライパン(きのこ用)
- ざる(マリネ液や香味野菜を濾すとき)
- 調理用温度計(火通りの確認用)
- ふた付きで冷蔵庫に入る容器(マリネする場合)
材料の選び方と代用
渋みが強すぎない辛口の赤ワインで、自分でも飲みたいと思えるものを選びます。Côte-d'Or Tourismは、鍋に入れるのに高価なワインは要らず、上等な熟成ワインはグラスのために取っておくよう勧めています。
赤ワイン。 ブルゴーニュのピノ・ノワールが土地の軸です。手に入らなければ、タンニンの重くない辛口の赤で方向性は保てますが、香りや土地らしさは変わります。安価な料理用ワインは酸味、甘み、添加された香味に差があるので、ラベルを確かめてください。ワインと同等とは考えないほうが安全です。
ベーコン。 フランスのラルドンは塩漬けの豚肉で、厚切りベーコンは燻香が加わり、塩気も違います。塩は最後まで控えめに。
鶏肉。 骨付きもも肉はソースにコクが出ます。骨なしは食べやすい反面、火の通りが早く崩れやすいので、早めに確認してください(作り方の4)。1.2〜1.4kgの丸鶏をぶつ切りにしても作れます。
小玉ねぎ。 手に入らなければ、できるだけ小さい玉ねぎを使います。普通の玉ねぎを大きく切っても作れますが、食感は変わります。
きのこ。 ブラウンマッシュルームでもかまいません。香りが強く、色が濃くなります。
だし。 塩分の入った顆粒やキューブを使うなら、最後の塩を減らしてください。
タイム。 乾燥なら小さじ1/3程度が目安で、香りは穏やかになります。
バター。 付け合わせは油でも作れますが、乳のコクは軽くなります。
小麦粉。 グルテンを避けるなら省き、ソースを煮詰めてとろみをつけます。
前日のマリネ(任意)
鶏を一晩マリネする作り方もあり、マリネ時間は12〜24時間が目安です。マリネを省く家庭も多く、下の作り方はマリネなしでも成り立ちます。前日に時間があるときの足し方を紹介します。
粉をつけていない鶏肉を、赤ワインの一部、玉ねぎ、にんじん、にんにく、タイム、ローリエと一緒にふた付き容器に入れ、冷蔵庫で6〜12時間置きます。生の鶏肉を室温に置いたままにしないでください。
調理するときは、鶏肉をワインから取り出して水気を拭きます。粉をつけるのは焼く直前だけで、粉をつけた鶏肉をワインに戻さないでください。マリネ液を鍋で使うなら、しっかり沸騰させてから使います(作り方の3)。生の鶏肉に触れたものは洗ってください。

うまくいかないとき
| 症状 | 考えられる原因 | 直し方 |
|---|---|---|
| 皮に焼き色がつかない | 鶏が濡れている、または鍋が混んでいる | しっかり水気を拭き、数回に分けて焼く |
| 肉が締まる、または崩れる | 強く沸かしすぎている | 蓋をして、小さな泡が上がる程度の弱火にする |
| 小玉ねぎやきのこがくたくた、ソースが水っぽい | 付け合わせを早く煮込みに入れた | 別に火を通し、最後に加える |
| ソースが薄い | 煮詰め方が足りない | 具を取り出してソースを煮詰める。粉は追加しない |
| 塩辛い | ベーコンやだしの塩気が強い | 味つけは最後に。塩分入りのだしなら塩を減らす |
この料理の食感は、火加減でほぼ決まります。焼く段階では乾いた表面と鍋の余裕が要りますが、煮る段階はその反対で、蓋をして低く安定した火が必要です。付け合わせを最後まで入れないでおくと、ソースをきれいに煮詰められ、具も崩れません。
残りものと翌日
Côte-d'Or Tourismは、コック・オー・ヴァンは翌日に食べてもおいしいと伝えています。翌日に回す場合や残った場合は、具とソースを浅い容器に分け、早く冷まして冷蔵庫に入れます。温め直すときは、中心まで十分に熱くなるよう全体を加熱してください。この記事では具体的な保存日数を示していないので、残りは早めに食べきりましょう。
アレンジ
- 赤ワインを減らしてだしを増やす: 軽くなりますが、ワインの香りと色が弱まります。液体を変えたときは、同じ煮込み時間が通用するとは限りません。やわらかさと温度計で判断してください。
- 骨なしもも肉: 食べやすく早く火が通りますが、ソースのコクは控えめです。40分ごろから確認を。
- マッシュルームをブラウンマッシュルームに: 香りが強く、色が濃くなります。
- ベーコンを減らす: 燻香と塩気が弱まり、鶏とワインの味が前に出ます。
- きのこをモリーユ茸に: 高価な乾燥きのこで、ジュラ地方を思わせます。ただし、ヴァン・ジョーヌで作るジュラ地方のコック・オー・ヴァン・ジョーヌと同じものではありません。
よくある質問
雄鶏が必要ですか?
要りません。名前は雄鶏を指しますが、Le Cordon Bleuは、現代のフランスの家庭では若鶏を使うと述べています。骨付きの鶏もも肉でおいしく作れます。
マリネは必須ですか?
必須ではありません。代表的なレシピには一晩のマリネが入っていますが、家庭のレシピには省くものも多くあります。前日に準備できるときの選択肢と考えてください。マリネするなら冷蔵庫に置き、鶏は水気を拭いてから粉をつけ、マリネ液を使うときはしっかり沸騰させます。
ブルゴーニュ以外のワインでもいいですか?
かまいません。渋みの強すぎない辛口の赤なら料理の方向性は保てますが、香りや土地らしさは変わります。
アルコールは飛びますか?
加熱だけで、ワインのアルコールがすべてなくなるとは言い切れません。誰が食べるかを考えて判断してください。
何を添えればいいですか?
ソースを受け止めるものがよく合います。蒸す、またはゆでたじゃがいも、マッシュポテト、タリアテッレなどの麺、パンなどです。
















