だしは煮え、麺は湯切りを終え、器の底には生野菜がこんもり積まれています。ここで、この料理でいちばん大事な決断が待っています。だしを何杓、注ぐか。ミークアン(Mì Quảng、Mỳ Quảngとも書き、英語ではQuang noodlesとも呼ばれます)は、ベトナム中部の麺料理です。器を汁で満たさず、少量の濃いだしを麺と具にかけるのが特徴です。ベトナム国家観光局は、幅広く平たい米麺にだしをひと杓、そこに青菜、バナナの花、香草を合わせる一杯として紹介しています。ダナン市の観光ポータルも、庭でとれた青菜をたっぷり敷いた上に、だしを浅く張る料理だと説明しています。
名前はクアンナム省(Quảng Nam)と結びついていて、ダナンやホイアンでも食べられています。ダナン市の公式観光ポータルによると、家庭でも、家族の行事でも、食堂でも食べる料理で、軽い食事にも、しっかりした一食の代わりにもなります。麺は白いものも黄色いものもあり、だしにはえび、魚、鶏、豚が使われるので、「これが正解」という一杯はありません。この記事で作るのは、ベトナム出身の家庭料理家Vicky Phamの豚肉とえびの一杯です。豚骨と、炒めたえび頭で取っただし、別々に火を通した豚バラとえび、ターメリックで黄色い米麺を合わせます。
読み終えるころには、だしと具を並行して仕上げる段取り、日本で麺やせんべいを探すときの考え方、そして一杯ごとのだしの量の見極め方がわかるはずです。
幅広く平たい米麺、生野菜のベッド、豚バラとえび、そして全体にまとわせる分だけの濃いだし。汁物になる手前で注ぐのを止めてください。
ミークアンとは。汁を張らない、クアンナムの麺
ミークアンは、主役が汁ではなく麺の料理です。フォーは器いっぱいの汁に麺が泳ぎますが、ミークアンは重ねて作ります。底に青菜、その上に平たい麺の山、さらに肉と魚介をのせ、最後に少しの濃いだしを回しかけると、だしが下まで流れていきます。食べ方の違いであって、どちらが優れているという話ではありません。
食感も味のうちです。ダナン市の観光ポータルは、ピーナッツと焼いた米せんべいをこの一杯の特徴的な要素に挙げています。せんべいは麺の上で砕いても、そのまま横に添えて歯ごたえの違いを楽しんでも構いません。生の青菜や香草は、やわらかい麺に対してシャキッとした歯触りを添えます。Vicky Phamは、庭の香草が豊かな夏に楽しむ料理だと書いていますが、これは一人の料理家の楽しみ方で、季節限定の料理という決まりではありません。
地域や家庭による違いも、この料理の一部です。公的な観光資料には、白い麺と黄色い麺、豚・鶏・えび・魚・卵といった具が出てきます。ベトナム中部では、バナナの花や各種の庭の青菜もよく使われます。どれかが「偽物」になることはありません。この記事では、手順と分量がぶれないよう、豚肉とえびの一つのレシピに絞ります。ほかのベトナム麺と比べたいときは、ホイアンのカオラウ、牛肉の辛いスープ麺ブンボーフエ、鶏のフォーフォーガーも合わせて読んでみてください。
中部ベトナムで見られるバリエーション
| 要素 | 公的資料に見られる幅 | このレシピでは |
|---|---|---|
| 麺 | 幅広く平たい米麺。白または黄色 | 黄色いクアンナムの米麺 |
| だしのベース | えび、魚、鶏、豚 | 豚骨と炒めたえび頭 |
| 具 | 豚、鶏、えび、魚、卵 | 豚バラとえび |
| 青菜・薬味 | 庭の青菜、バナナの花、香草、ピーナッツ、米せんべい | レタス、キャベツ、もやし、香草、ピーナッツ、ごま米せんべい |
道具
- えび頭とだしに使う大きめの寸胴鍋
- 豚バラ用のフライパンと、えび用のもう1枚(同じものを洗って使ってもよい)
- お玉
- 生の豚肉と生のえびを別々に入れるボウルや容器
- 生の肉・魚介用と、野菜・香草・ゆでた麺用で、まな板と器具を分ける
- キッチンペーパー
- 麺の湯切り用のざる
- ごま米せんべいをふくらませる電子レンジ
- 豚肉とえびの中心温度を測る調理用温度計
- 目の細かいあく取り(あれば便利ですが、必須ではありません)
麺・えび・骨・せんべいの選び方と代用
麺。 まず探したいのは、ミークアン用、またはクアンナムの黄色い米麺として売られているものです。見つからない場合は、乾燥の平たいフォーの麺を使えます。色、幅、弾力は専用の麺とは違います。生のチャウファン(河粉)系の米麺は繊細で切れやすいので、代用には向きません。どの麺でも、戻し方やゆで方は袋の表示に従ってください。黄色を強めたくても、ターメリックを勘で足すのはやめて、色の薄い麺はそのまま楽しみましょう。
えび。 頭付きの大きなえびが第一候補です。頭が、だしの赤橙色とえびの奥行きを生むためです。頭のないむきえびでも具としては問題なく火が通りますが、頭から出る色と風味は得られません。原レシピは代案として、市販の蟹・えびのペースト(約5 oz)も挙げています。塩気や中身が商品ごとに違うので、同量で置き換えるのではなく、別バージョンとして考えてください。
豚骨。 首の骨、または脚の骨・髄のある骨でだしを取ります。原レシピには、豚のスペアリブでも作れるという注記があります。食べられる肉が増える一方で、だしの濃さは変わります。市販の鶏がらスープに水を足す時短案も紹介されていますが、骨とえび頭を煮込むだしとは風味が離れるので、別の簡易版と考えてください。
調味料。 魚醤(ヌックマム)、ターメリック粉、パプリカ粉が柱です。魚醤を同量の醤油に替えるのはやめてください。味わいが違います。化学調味料や鶏のブイヨンを任意で足す方法もありますが、この基本のレシピには含めていません。
せんべいと青菜。 パリッとした食感には、ごま入りの米せんべい(bánh tráng mè、bánh đa)を探します。なければ、ほかの米せんべいでも歯ごたえは出せますが、同じ材料ではありません。ベトナム中部では、バナナの花や各種の庭の青菜、rau răm(ベトナムコリアンダー)などの香草がよく登場します。手に入りにくければ、レタス、キャベツ、もやしを中心に青菜を組み立ててください。クアンナムの一杯とは香りが違いますが、麺、少量のだし、生の青菜という骨格は変わりません。
この料理には、えび(甲殻類)、魚醤(魚)、ピーナッツが入ります。ごま入りの米せんべいには、ごま、小麦などが含まれている場合があるので、表示を確認してください。麺や加工品の表示も、同じ設備で作られているかどうかの注記を含めて読んでください。
食べ方。混ぜて、砕いて、搾る

食べ始める前に、麺を軽く混ぜて、少量のだしを底の青菜まで行き渡らせます。ダナン市の観光ポータルによると、せんべいは器の中で砕いても、横に添えて食べてもよいので、最初から割り入れても、ひと口ごとにかじっても構いません。レモンやライムを搾り、香草やピーナッツを好みで足してください。だしをもっと欲しがる人がいれば、別の鍋で温かく保っておき、食卓で足します。最初から器をだしで満たさないほうが、この料理らしく食べられます。
うまくいかないとき
| 困りごと | 考えられる原因 | 対処 |
|---|---|---|
| 器の中のだしが多すぎる | 汁物のように満たして注いだ | 最初から少なめに注ぐ。余っただしは別の容器に取り、食べながら足す |
| 味がぼやける | 調味を控えめにした、またはだしだけで味見をした | 魚醤や塩を少量ずつ足し、そのつど味見する。具や薬味でも味が加わることを念頭に置く |
| 麺が切れる、くっつく | 袋の表示と違うゆで方をした、または湯切り後に長く置いた | 使う麺の表示に従い、湯切り後は早めに盛りつける |
| えびが硬い | 火が通ったあとも加熱し続けた | 中心温度を確認したら火から下ろす。時間だけを安全の根拠にしない |
| せんべいが湿る | 早く割って器にのせすぎた | 食べる直前に割る、または横に添える |
| だしが煮詰まりすぎた | 強火で沸かし続けた | 静かな煮立ちを保ち、煮ながら量を見る |
アレンジ
上のレシピは豚肉とえびの一つに絞っています。ここで挙げるのは、試してみる方向性で、詳細が固まっていない部分はそう書いてあります。
- 白い麺で作る。 公的資料には、白い米麺も使われるとあります。色と香りは変わりますが、麺、少量のだし、たっぷりの青菜という骨格は同じです。
- 鶏肉で作る。 公的資料には鶏の型の記載がありますが、この豚骨レシピの豚肉を鶏肉に替えるだけで成り立つという確認はありません。別のレシピとして、別の資料にあたる必要があります。
- 魚で作る。 魚もだしと具として挙げられています。ただし魚の種類や加熱時間は、参照した資料では特定されていないため、具体的な配合は示しません。
- 青菜を替える。 バナナの花やrau rămが手に入らなければ、レタス、キャベツ、もやしを中心に組み立てます。食感と香りは変わります。
- 麺を替える。 専用の麺の代わりに乾燥の平たいフォーの麺を使えます。色と歯ごたえは変わります。
保存と再加熱
具とだし、麺、生の青菜、せんべいは、別々に保存してください。それぞれの食感を保ちやすくなります。一般的な家庭の食品衛生の指針に従い、残ったものは浅い容器に入れて早めに冷まし、冷蔵庫に入れます。この料理に特有の保存期間は、参照した資料では確認できていないため、日数は示しません。
再加熱するときは、だし、豚肉、えびの中心が75℃になるまで十分に熱します。青菜と、ふくらませたてのせんべいは、食べる直前に合わせてください。
よくある質問
ミークアンとフォーはどう違いますか?
ミークアンはベトナム中部、クアンナム省とダナン周辺の料理で、幅広く平たい米麺、生の青菜、具、そして麺にまとわせる少量のだしでできています。汁を飲む一杯ではなく、麺をだしと青菜に絡めて食べます。
黄色いクアンナムの麺が見つからないときは?
原レシピに従い、乾燥の平たいフォーの麺を使います。専用の麺とは色や食感が違うので、調理はその麺の袋の表示どおりに行ってください。
だしはどのくらい注ぎますか?
少量から始め、麺と具にまとわったところで止めます。原レシピの盛りつけ例は1杯あたり約1カップですが、公的な説明はひと杓なので、少なめから始め、足りなければ足してください。
バナナの花の代わりは何になりますか?
レタス、キャベツ、もやしを組み合わせます。香りは違いますが、麺の下に敷く、みずみずしくシャキッとした層は残せます。
ピーナッツやせんべいを省いてもよいですか?
家庭の選択として省けますが、香ばしさと歯ごたえはなくなります。食べる人にピーナッツ、ごま、小麦のアレルギーがある場合は、安全を最優先して省き、せんべいなど加工品の表示も確認してください。
















