三時間は鍋のそばで、いちばん大事な一瞬は丼の中で
だしは澄んだ香りを保ち、牛肉は硬くなる前に引き上げます。丼は食べる直前に一杯ずつ組み立てて、麺がやわらかいうちに、完全に沸騰しただしを注ぎます。
一日は、焦がすことから始まります。丸ごとの玉ねぎと厚みのある生姜の塊を直火の上で回し、皮がふくれて黒くなるまで焼きます。次に牛骨を冷たい水から鍋にかけて一度沸かし、濁った湯を捨てます。骨は新しい水に戻し、八角、クローブ、シナモンと一緒に煮ます。それから約3時間、鍋は弱い火で静かに煮立たせ、ときどきお玉でアクをすくうだけ。本当の仕上げは最後の最後、一杯ずつ丼に向かう場面です。平たい米麺、薄切りの牛肉、玉ねぎと香草を入れ、完全に沸騰しただしをお玉で注ぎます。
この記事で作るのは、牛骨のだしでつくるベトナムの牛肉フォー、フォーボー(phở bò)です。鶏肉のフォー、フォーガーとは主な具もだしも違う料理で、同じベトナムの牛肉麺でもブンボーフエとは別の一杯です。
レシピは、Andrea Nguyenの8人分の牛肉フォーに従います。2006年の著書『Into the Vietnamese Kitchen』に載せた家族のレシピで、ウェブサイトViet World Kitchenで公開されています。基本の分量、順序、レシピ中の時間はこの一つのレシピのものです。薄切り牛肉を十分に加熱する家庭向けの変更と、一般的な食品安全の目安は別に示します。ほかのレシピの分量は混ぜていません。時間はレシピ側の数字で、私たちの台所での計測ではありません。骨も鍋も火力も違うので、作り方には鍋の中で見るべき状態も書きました。
だしには5〜6 lbの骨と、容量12 US quarts以上の鍋、約3時間の煮込みが必要です。だしは前日に作っておけます。煮込んでいる間に、麺、薄切り牛肉、薬味を準備しましょう。
フォーボーとは — 麺の名前と、牛肉の二役
ベトナム観光局の説明では、phởという言葉は麺そのものを指します。牛肉で組み立てた丼がフォーボー、鶏肉の丼がフォーガーです。麺はバインフォー(bánh phở)という平たい米麺で、断面が丸い米のビーフンとは別物で、食感も違います。同局は、だしに使う一般的な香辛料として八角、クローブ、シナモンを挙げ、フォーは朝食にも、それ以降の時間にも食べられると述べています。
この記事の丼には、2種類の牛肉が入ります。一つは、だしで煮てから薄切りにするロースト用のようなかたまり肉。もう一つは、紙のように薄く切る別の部位です。食卓には、もやし、香草、唐辛子、ライムを盛った皿がつきます。こうしたたっぷりの薬味皿は、ベトナム観光局が南部らしい特徴として説明しているものです。
この料理に使える食材・調味料
道具
- 容量12 US quarts(約11.4リットル)以上の寸胴鍋。レシピの指定どおりの大きさです。8人分を小さな鍋に詰め込まないでください。
- 玉ねぎと生姜を焼くための焼き網かガスコンロと、長いトング。換気扇を回し、窓を開けて焼きます。
- 焼いた生姜の皮をむくペティナイフ。
- ゆでこぼした骨の水を切ってすすぐザル。
- アクをすくい、だしを注ぐお玉。
- 目の細かいこし器と、濾しただしを受ける清潔な別鍋。
- 乾麺を浸す大きなボウルと、一人分ずつ湯通しするための柄の長い網じゃくし。
- 薄切り牛肉を火にかけるための、小さな別の片手鍋。
- 薄切り牛肉の中心温度を測りたいときの食品用温度計。
- だしを冷まして保存するための浅い清潔な容器と、それを入れる冷蔵庫の余裕。
買い出しと代用 — 近所で揃うもの、探しに行くもの
ふつうのスーパーで、たいていは玉ねぎ、生姜、ロースト用のかたまり肉、薄切り向きの赤身、青ねぎ、香菜、もやし、唐辛子、ライム、海塩、黒こしょうが揃います。ホールの八角、クローブ、シナモンスティックも、スパイス売り場に置いてあることが多いでしょう。
次のものは、肉屋、東南アジア食材店、輸入食材店まで足を運ぶ価値があります。
- 牛スープ骨。 レシピが求めるのは髄の骨と関節の骨です。すね骨(shank bones)など別の骨に替えると骨の組み合わせが変わります。同じだしではなく、自分なりの変更として考えてください。
- バインフォー。 幅約⅛ inchの平たい米麺を、乾麺か生麺で探します。ビーフンは断面が丸く食感も違うので、別の丼になります。
- 魚醤。 だしの塩味とうま味を支えます。しょうゆは同じ働きの代わりにはなりません。魚アレルギーのために魚醤を抜くのは、レシピからの変更です。
- 黄氷砂糖(đường phèn)。 アジア食材店で探します。白砂糖が同じ結果になるとは確認できていません。使う場合は、「変えて楽しむ」の項を見てください。
- ベトナムの香草。 スペアミント、タイバジル、ノコギリコリアンダー(ngò gai)は、同じ名前では見つけにくいことがあります。なくてもよい薬味なので、手に入らないものは省きましょう。ふつうの香菜は、これらと同じ風味ではありません。
表の水6 quartsは、だしを煮る水だけの量です。骨をゆでこぼす水、骨をすすぐ温水、麺を戻す水とゆでる水、薄切り玉ねぎをさらす冷水、煮た肉を浸す清潔な水は、すべて別に用意します。これらは6 quartsから引きません。濾しただしの味を整えるときに足す塩、魚醤、黄氷砂糖、水も、最初の分量に上乗せする分です。
魚醤は魚から作られます。牛肉と、体質に合わない香草がないか、ラベルを確かめてください。調理器具、ゆで湯、盛り付けの皿を通じて、アレルゲンが移ることもあります。生の牛肉に使ったトング、まな板、皿は、加熱済みの食品、麺、香草に使うものと分けておきましょう。
うまくいかないとき — 濁る、苦い、しょっぱい、硬い、のびる
| 症状 | 考えられる原因 | 対処 |
|---|---|---|
| だしが濁る | ゆでこぼしの湯を捨て切れていない、骨と鍋をすすいでいない、だしを強く沸かした、アクをすくっていない | 最初のゆで汁は完全に捨て、骨も鍋もすすぎます。だしはゆるやかな煮立ちを保ち、アクをすくいます。濁りを抑える助けにはなりますが、澄んだだしになる保証はありません |
| 焦げた苦い香りがする | 玉ねぎと生姜を全体が黒くなるまで焼いた | 焼くのは皮だけにします。鍋に入れる前に、黒い皮と焦げた端を取り除きます |
| だしが濃すぎる、塩辛い | 味が濃くなった、または調整の途中で足しすぎた | レシピの勧めどおり、水で薄めます。麺と具を丼に入れてから、もう一度味を見ます |
| 煮た牛肉が硬い | 鍋に入れたままにした時間が長すぎた | 1½時間は、確認を始める目安で、決まりではありません。食べられる程度に火が通ったら、硬くなる前に取り出します。レシピは部位や大きさによる違いを測っていません |
| 麺が切れる、のびる | ゆですぎた、または早くゆでた | 戻したあと、食べる直前に一人分ずつ短く湯通しします。袋の表示も確認してください |
変えて楽しむ
- 簡素な、ハノイ寄りの丼。 ベトナム観光局は、ハノイ式のフォーを澄んだだしと控えめな薬味と説明しています。青ねぎ、香菜、玉ねぎ、こしょうだけで出し、薬味皿を省くこともできます。これはレシピの変更ではなく、出し方の変更です。
- 南部風にたっぷりの薬味皿。 もやし、タイバジル、ミント、ノコギリコリアンダー、唐辛子、ライムを多めに用意して、各自が丼を仕立てます。
- 煮た牛肉だけにする。 生の薄切り牛肉は使わず、煮た肉の薄切りだけを丼にのせます。薄切りの生肉を使う場合は、作り方6のように別鍋で火を通してください。
- 黄氷砂糖なしで作る。 ふつうの砂糖で同じ結果になるとは確認できていません。使う場合は自分の調整として扱い、少しずつ加えて味を見るようにしてください。
- 香草が揃わない。 手に入るものを別皿で添えます。香菜やほかの香草を、元の香草と同じものとは考えないでください。
ベトナムのフォー — 歴史と地域の丼
ベトナム観光局は、ナムディン(Nam Định)を料理の地理的なゆりかご、ハノイを心のふるさととして紹介しています。同局の説明では、牛骨は19世紀末に使われるようになり、1930年代にはフォーが屋台の担ぎ売りで売られていました。1954年以降は南部に広がり、だしが甘くなり、香草や調味料も増えたといいます。これは観光局による歴史の語りで、フォーの起源が定まっているわけではありません。
同局は、澄んだだしと控えめな薬味のハノイ式フォーと、香草やもやしがたっぷり添えられる南部の丼とを対比しています。これは作り方と味つけの違いであって、優劣ではありません。この記事の丼は、南部で見られるような薬味皿を添えた牛肉フォーです。ある家庭のレシピであり、全国で唯一の標準ではありません。また同局は、屋台の流れも伝えています。熱いだしを米麺と肉に注ぎ、客が好みの薬味を加える形で、この記事の最後の作り方もそれに沿っています。別のベトナムの麺の食事を知りたい方は、ブンチャーもどうぞ。同じ国のほかの料理は、ベトナムのページから探せます。
保存と温め直し
組み立てるのは、すぐ食べる分の丼だけにします。だし、肉、麺は別々に保存します。だしは浅い清潔な容器に分けて早く冷まし、冷蔵庫に入れてください。大きな鍋のまま長く室温に置いてはいけません。火を通した牛肉も、清潔な容器に入れて冷蔵します。
FoodSafety.govのCold Food Storage Chartでは、肉入りのスープやシチューは、4°C以下の冷蔵で3〜4日、−18°C以下の冷凍で2〜3か月が目安です。冷凍の期間は品質の目安で、この数字は表に書かれた保存条件が前提です。扱いが不適切だった分の保証にはなりません。温め直すときは、厚生労働省の一般的な目安に従い、75°C以上に再加熱し、スープは沸騰させてください。麺は、食べる分ごとに新しく用意します。
よくある質問
フォーガーとの違いは何ですか?
フォーガーは鶏肉のフォーです。この記事のフォーボーは、牛肉と牛骨のだしを使います。平たい米麺は共通ですが、主な具とだしが違うので、別の料理です。
乾燥米麺はどう戻しますか?
熱い水道水に15〜20分浸し、やわらかく不透明になったら水を切ります。食べる直前に一人分ずつ沸騰した湯に10〜20秒くぐらせます。袋の表示が違う場合は、袋の表示を優先してください。
だしは前日に作れますか?
作れます。レシピでもそのように作れるとしています。濾しただしを浅い容器で冷まして冷蔵し、固まった脂を取り除き、沸騰するまで温め直してください。
八角が苦手です。変えてもいいですか?
レシピには代わりのものが示されていません。基準になる量は、ホール5個です。減らすのは自分なりの変更で、だしの香りが変わります。粉末の八角で代用しないでください。
生の牛肉に熱いだしを注ぐのが心配です。
作り方6のとおり、薄切り肉を別の小鍋のだしで、中心75°Cで1分以上を目安に完全に火が通るまで加熱し、清潔なトングで丼に移してください。生肉に注ぐ元の方法では、肉が何度に達するのかは示されていません。煮たかたまり肉だけをのせる方法もあります。
栄養成分は分かりますか?
計算していません。部位、骨、使う製品によって変わるため、数値は載せていません。
















