チュニジアの家庭の台所。直火やオーブンで焼いたピーマン類の黒い皮をするりと外し、柔らかな果肉を包丁で刻んで、卵とツナを並べていきます。スラタ・メシュイア(Slata mechouia/salade méchouia)は、焼いてから刻むサラダです。野菜を焼いたあとで冷たい一皿に仕立てます。
香ばしさをつけるために野菜を焼き、黒く焦げた皮は取り除いて、中の果肉だけを使います。焦げをそのまま大量に混ぜる料理ではありません。日本でもパプリカとトマトは揃えやすく、つまずくのは水気と香辛料の扱いです。皮をむいて水気を切ること、キャラウェイを細かく潰すことが、家で再現するときの要点になります。4人分で下ごしらえが25分、加熱が35分、全体で約60分を見込んでください。オーブンの予熱と冷蔵の時間は別で、卵は野菜を焼いている間にゆでられます。
チュニジアのサラダは、火を通してから食卓へ
méchouiaは「焼いた」という意味で、サラダと聞いて思い浮かべる生野菜の皿とは出発点が違います。フランス語表記のsalade méchouiaとSlata mechouiaは、どちらも同じ料理を指します。名前に残る焼く工程どおり、野菜を焼き、皮をむき、刻んで、油で和える順に進みます。生のトマトやきゅうりを角切りにして混ぜるサラダとは、台所での手順がまるで別物です。
野菜が主役の皿に、ツナと卵が加わります。ツナ、固ゆで卵、黒や緑のオリーブ、ケーパーを添える例があり、毎回すべてを使うと決まっているわけではありません。刻んだ野菜を皿に広げて具を上に置けば、一口ごとに野菜と添え物の割合を変えて食べられます。大皿で出すときは、取り分けに清潔な取り箸かスプーンを使ってください。食べるときはパンを添えます。WPSUのレシピには平たいパンを添える指示があり、日本なら薄切りのバゲットなどを添える形がおすすめです(編集部提案)。
この料理の焼き方は、一つに決まっていません。チュニジアの現地レシピには、炭火で焼く方法も、コンロの火で焼く方法も、オーブンで焼く方法もあります。道具が変わっても、焼いた野菜の皮をむいて使う点は共通しています。米国WPSUのWorld Kitchenの料理資料も、オーブンまたは屋外グリルで焼き、包丁またはフードプロセッサーで刻む作り方で紹介しています。オーブンでも作れるので、海外の家庭の台所でも再現できる形で共有されている料理だと言えます。発祥の年や、どの民族が生んだ料理かといったことは、ここでは語りません。
現地のレシピには、mehrassというすり鉢で潰す方法と、手動や電動の道具で刻む方法の両方が紹介されています。特殊な器具を買い揃える必要はなく、包丁で細かく刻めば作れます。なめらかに潰すか、粒を残すかで口当たりは変わりますが、正統な食感が一つだけあるとは言い切れません。
唐辛子の辛さも、トマトの量も、家ごとに違う
現地の記録を見ると、甘いピーマン類を選ぶ案と、辛い唐辛子を選ぶ案があります。Binetnaの調理記録には、meski(あまり辛くないタイプ)とba9louti(辛いタイプ)という記述が出てきます。ただし、これが日本のピーマンと同じ品種というわけではありません。野菜を必ず辛くしなければならないこともなく、日本の甘いパプリカを主に使い、辛味は別に足せば、同じ皿を囲む人がそれぞれ好みに合わせられます。甘い野菜でも作れるのです。
トマトの割合も家庭によってまちまちです。現地の記録には、ピーマン類10個にトマト2個の案、4個にトマト3個の案、4個にトマト5個の案があります。野菜のサイズもそれぞれ違うので、個数の比をただ一つの正解とは考えないでください。配合を比べると、ピーマン類を多めにした案は果肉の味わいが前に出やすく、トマトを増やすと水分と酸味が増えます(編集上の見立てです)。都市別や南北別に決まった比率があるとは確認できず、家庭ごと、作り手ごとの違いと受け止めるのがよさそうです。今回の家庭向け配合は、パプリカ600gにトマト300gです。日本のパプリカは大きいので、現地の個数だけをそのまま合わせないでください。
香辛料の違いも、同じ料理の幅のうちです。carviはキャラウェイ、coriandreはコリアンダーで、どちらも別の香辛料です。クミンとも混同しないでください。キャラウェイとクミンは別物で、使う香辛料にはキャラウェイとコリアンダーを使う現地の案と、コリアンダーとパプリカ粉を使うWPSUの案があります。香辛料を増やすことが目的ではありません。この配合では、キャラウェイシードを軽く潰し、コリアンダーパウダーとともに各小さじ1/2ずつ使います。入れすぎたときは、油を足すより焼き野菜を足して薄めるほうが、配合を戻しやすくなります(編集部提案)。
途中で見つける、味の決め手
パンを添えると、野菜の一皿が食事になる

刻んだ柔らかい野菜と油をパンにつけ、卵やツナ、オリーブを少量ずつ合わせて食べます。パンで野菜をすくうように食べると、大皿が食事になります。パンは食べる直前に添えると、水分でべたつきにくくなります。日本では、パンを軽く温めたり薄切りにしたりして添えるのがおすすめです。現地固有の儀礼や、決まった時刻の食べ方として紹介しているわけではありません。
前菜や副菜として、焼いた魚や肉に添えるのも食卓での提案のひとつです。ツナと卵を使った揚げ物のブリックと合わせるなら、サラダ側のツナや卵を減らして、重なりを調整できます。具は別添えにもできるので、組み合わせる料理に合わせて出し方を変えてください。似た野菜を使うモロッコのタクトゥーカは、焼いたピーマン類とトマトを煮て仕上げる料理です。焼いて刻み和えるメシュイアとは工程が違うので、次に作り比べてみるのも楽しいはずです。
味を変える5つの食べ方
| 変え方 | 4人分の調整 | 味・食べ方の違い |
|---|---|---|
| 辛味を控える | 辛い唐辛子を加えず、基本配合の甘いパプリカで作る | 焼き野菜の味を中心にする |
| 野菜だけで食べる | ツナ140gと卵2個を省く | 前菜・副菜向き。基本配合と栄養は異なる |
| 赤いパプリカで作る | パプリカ600gをすべて赤にする | 色と甘味が変わる家庭向けアレンジ |
| トマトを多めにする | トマトを100g増やし、パプリカを100g減らす | 酸味と水分が増えるため水切りを延ばす |
| パンにのせる | パン200gを薄切りにし、具とサラダを食べる直前にのせる | 手に取りやすい。長時間のせておかない |
表の5案は家庭向けの調整案で、特定の都市や家庭に伝わる伝統のレシピではありません。辛くしたいときは、刻んだ生唐辛子を別皿で用意し、少量ずつ自分の取り皿に混ぜてください。全体へ足す前に、少量で確かめます。唐辛子は種類によって辛さが違うため、固定した量で同じ辛さになるとは言えません。
作り置きと、失敗したときの直し方
完成したサラダは、清潔な浅い容器にふたをして、4℃以下で冷蔵します。調理後2時間以内に、気温が約32℃を超える場所では1時間以内に冷蔵庫へ入れてください。4℃以下で早く冷蔵することが、作り置きの前提です。FoodSafety.govが示す、卵やツナを含むサラダの一般的な目安は冷蔵で3〜4日です。ただ、家庭では調理や取り分けの条件が一定ではないので、ここでは翌日までに食べ切る提案にとどめます。翌日なら必ず安全、という保証ではありません。ツナと卵は食べる分だけ直前に添えると、野菜の部分を扱いやすくなります。食卓に長く置いた残りは、新しく冷やした分と混ぜないでください。
冷蔵の条件を守れなかったものは食べないでください。味見や匂いだけで安全を判断しないことです。レモンや油を足しても、不適切に放置した食品が安全に戻るわけではありません。このサラダには卵と魚が含まれ、パンには小麦が含まれます。ツナ缶、オリーブ、ケーパーといった加工品も、原材料表示を確認してください。該当するアレルギーがある人は、その材料を除き、器具や取り分けのときの接触にも気をつけます。
| 困った状態 | 起こりやすい原因 | 戻し方 |
|---|---|---|
| 汁が皿に溜まる | トマトの汁や天板の汁を混ぜすぎた | 和える前にざるへ戻す。和えた後は余分な液体をスプーンで取る |
| 苦い | 黒い皮、焦げたにんにくが多い | 和える前に除く。混ざった後は取り除けないので追加の焼き野菜で薄める |
| 塩辛い | ツナ・オリーブ・ケーパーの塩気を足し算した | 調味前の焼き野菜を加える。油だけで薄めようとしない |
| 粒がなく水状 | ミキサーの連続運転 | 元の粒には戻らない。別に刻んだ焼きパプリカを加える |
| 野菜が硬い | 大きさや機種に対して加熱不足 | 刻む前にオーブンへ戻し、5分ずつ追加加熱する |
卵とツナを合わせたサラダは、冷凍に向きません。作り置きが目的なら、完成品を大量に冷凍するより、食べる量に合わせて仕上げるほうが扱いやすくなります。卵とツナは食べる直前に添えてください。野菜だけを冷凍した例は現地の調理記録にありますが、解凍すると水分が出て、食感が変わることがあります。冷凍の日数や品質については、保証できる目安を示せません。
よくある質問
キャラウェイがないと作れませんか?
作れます。コリアンダーパウダーを合計小さじ1にする代替案がありますが、キャラウェイの香りまでは再現できません。香りの代替には違いがあると考えてください。生のパクチーやクミンを、同じものとして置き換えることはしません。
オーブン以外でも作れますか?
現地には、炭火やコンロの火で焼く方法があります。日本の魚焼きグリルを使うなら、野菜や天板、アルミホイルが使えるかどうかと、火からの距離を説明書で確認してください。オーブン220℃で25〜35分という目安を、そのまま転用することはできません。普通のフライパンで弱く炒める方法もありますが、焼いた皮の香ばしさは変わります。
トマトを生のまま混ぜてもよいですか?
生のトマトを混ぜると、食感も水分も別のものになり、基本の「焼いて皮をむくサラダ」とは変わってしまいます。火を通したトマトを使い、水切りしてから和えてください。
辛い料理ですか?
基本の配合では、辛い唐辛子を使いません。現地には、甘いピーマン類を使う案も、辛いものを使う案もあります。辛味が欲しい人だけ、取り皿で加えてください。
前日にどこまで準備できますか?
野菜を焼き、皮をむいて水切りした段階までなら準備できます。清潔な浅い容器に入れ、4℃以下へ速やかに冷蔵してください。翌日に刻んで和え、ツナと卵は食べる直前に添える進め方がおすすめです。前日は野菜まで準備するにとどめ、常温で一晩置くことはしないでください。
すり鉢やフードプロセッサーは必要ですか?
包丁で3〜5mmに刻めるので、専用の機器は必要ありません。キャラウェイシードは、小さいすり鉢か、袋と麺棒で潰せます。電動の機器を使うときは、数秒ずつ状態を見てください。粒がなくなるまで回してしまうと、別の料理になります。
栄養の目安
1人分は基本配合の1/4で、約270kcal、たんぱく質12g、脂質20g、炭水化物17g、食物繊維4.5gです。主要な材料からの概算で、パンは含めず、ツナと卵、オリーブは含めています。計算では、赤と緑のパプリカを各300g、油27g、卵の可食部100g、油漬けのホワイトツナ140g、緑オリーブ50gを仮定しました。緑のパプリカは青ピーマンの値で近似し、微量の香辛料とケーパーは計算に入れていません。パンを含まない概算で、材料の重量と食品成分データベースの値から出したもので、実測値ではありません。生野菜の値を使っているため、皮むきや水切りで失われる成分は反映していません。ツナが油漬けか水煮か、汁をどれだけ切るか、加工品の塩分によっても数値は変わります。この数値を、医療的な効果や健康面での優位性に結びつけることはしないでください。
油の分量を増やせば脂質と熱量が増え、卵とツナを省けばたんぱく質も変わります。アレンジ表の分量に変えた料理は、基本配合と同じ数値としては扱えません。減塩したいときは、塩の残りを加える前に、ツナやオリーブ、ケーパーを含む一口で味を見てください。添え物の塩気を確かめることが、塩を加減する手がかりになります。治療中で食事の制限がある人は、医師や管理栄養士の指示を優先してください。













