ムルネンミョン、暖かい冬の部屋で食べた冷たい一杯
この一杯で守りたいのは三つです。本当に冷えた澄んだ牛だし、そば麺の風味、そして大根・きゅうり・梨の甘酸っぱい歯ざわり。このレシピの手順は、すべてこの三つのためにあります。
床下から暖められたオンドルの部屋、低い卓の上には氷のように冷たい麺。韓国観光公社は、冷麺がまさにこういう場面で食べられてきたと紹介しています。凍えるような寒さの中で、汁は冬に甕から汲み出した、大根の水キムチ「トンチミ」の漬け汁だったそうです。いまは夏の食べものと思われがちですが、冷麺のルーツには冬の食卓があるのです。
冷麺(ネンミョン、냉면)は「冷たい麺」という意味で、一つのレシピではなく、韓国の料理のグループの名前です。この記事で作るのは、冷やしただしに麺を入れるムルネンミョン(물냉면)。辛いたれで和える汁なしのビビンネンミョン(비빔냉면)とは別の料理です。
作り方は、大韓民国の公式サイトKorea.netに載っている冷麺のレシピ1本に沿っています。だしはトンチミの漬け汁を使わず牛肉だけ。具は薄切りの牛肉、塩水に浸したきゅうり、浅く味をつけた大根、砂糖水に浸した梨、ゆで卵、松の実、糸唐辛子です。気を使うのは、牛肉を長く煮ることと、そのだしを安全に冷やすこと。食べる日よりずっと前から、だし作りに取りかかるつもりでいてください。
ムルネンミョンとは、だし・麺・具でできた汁麺
ムルネンミョンは冷たい汁に入った麺、ビビンネンミョンは辛いたれで和えた麺です。Korea.netも料理家のMaangchiもこの区別をしています。麺・だし・味つけのバランスが違うので、買い物の段階から分けて考えておくと迷いません。
だしの作り方は一通りではありません。韓国観光公社のムルネンミョンのレシピには、トンチミのだしでも牛だしでも食べられると書かれ、カルビのあとに食べる例が挙がっています。Maangchiは、伝統的なだしは牛のスープとトンチミの漬け汁を合わせるものだと説明しています。ここで使うKorea.netのレシピは牛肉だけで取る方法です。牛肉を青ねぎとにんにくと煮て、冷まし、脂を取り、しょうゆ、砂糖、酢、塩、発酵からしで調えます。
冬に食べられてきた冷麺、オンドルと甕と古い記録
韓国観光公社は、オンドルで暖めた部屋で冬に冷麺を食べ、冬のあいだ甕に保存したトンチミの漬け汁を汲んで使ったと紹介しています。ただし起源については慎重で、はっきりしないとしたうえで、北部の山間地方から来たという考えを「説」として挙げています。レシピが地域によって違うことにも触れています。
Korea.netは、朝鮮後期の記録『東国歳時記』が冬至に食べるものとして冷麺を挙げていると紹介しています。これはKorea.netによる要約です。冬との結びつきが古くからあることを示す手がかりとして読むのがよく、起源の年代を特定するものとは受け取らないでください。
平壌式と咸興式
Korea.netは、よく知られた二つの地方の型を紹介しています。
| 型 | 麺 | 特徴 |
|---|---|---|
| 平壌式 | そば粉が中心 | すっきり澄んだだし |
| 咸興式 | じゃがいもやさつまいものでんぷんが中心 | 弾力のある麺と辛みのある味つけ |
この記事のレシピは、そば麺と澄んだ牛だしという点で平壌式に近い側にあります。ただし、あくまで一つの公開レシピをもとにした家庭版です。特定の地方の伝統をそのまま再現すると言うつもりはありません。
日本で材料を選ぶときの判断
麺。 そば麺の乾麺を使います。韓国食材店で売っている冷麺用の麺には、そば粉が主体のものもあれば、でんぷんの割合が多いものもあります。原材料表示を見比べて選び、袋のゆで時間がレシピの2分と違うときは袋の表示に従ってください。手に入らなければ日本のそばで代用できますが、食感も弾力もそばの香りも別物になります。同じ料理とは考えず、あくまで代用品として扱ってください。
牛肉。 部位は brisket shank です。日本の牛すね肉など煮込み向きの部位でも近い味にはなりますが、出てくる脂やゼラチン質は同じではないので、だしのコクは少し変わります。
薄い色のしょうゆ。 日本の薄口しょうゆや特定の商品と同じだと決めつけないでください。しょうゆによって塩分が違うため、レシピの分量を先に変えるのではなく、冷やしただしを味見して判断します。
発酵からし。 韓国食材店で冷麺用のからしが手に入るなら、それが第一候補です。日本の練りからしでも作れますが、香りと辛みの出方が違うので、同じ分量とは考えないでください。
梨。 アジア梨(韓国梨)にいちばん近い味ですが、梨は個体によって甘みも水分も違います。ちょうどよい梨が見つからなければ、省いても構いません。
このレシピには卵、そば、大豆(しょうゆ)が含まれます。市販の麺には小麦やほかのでんぷんが入っていることもあるため、ラベルを確認してください。からしと松の実も、アレルギーのある方は確かめておきましょう。
うまくいかないときの直し方
| 困りごと | 考えられる原因 | 対処 |
|---|---|---|
| だしが脂っぽい | 温かいうちに脂を取った、または取っていない | しっかり冷やして脂を表面に固め、それをすくい取る |
| だしの味がぼやける | きゅうりや麺の水気で薄まった、または温かいまま味見した | きゅうりの水気を拭き、洗った麺もよく水を切る。味は冷えてから判断する |
| 麺がくっつく・やわらかい | 袋の時間より長くゆでた、またはゆでたあとに放置した | 袋の時間を確認する(原典の2分は一例)。ゆで上がったらすぐ冷水で洗い、盛りつけまで水を切る |
| 大根がキムチのような味になる | 唐辛子が多い、または置く時間が長い | レシピの分量と20分を守る |
保存について
麺、具、だしは別々の容器に分けて保存し、盛りつけた状態では保管しません。調理済みの食品は浅い容器に小分けして、すぐ冷蔵庫へ入れます。目安は2時間以内(気温32°C超なら1時間以内)で、冷蔵庫は4°C以下です。手順2と同じく、この時間は冷蔵庫に入れるまでの目安であり、その間に食品が4°Cに下がるという意味ではありません。
牛だしと調理した牛肉の保存期間は、このレシピの資料には書かれていません。早めに食べ切るつもりで作ってください。FoodSafety.govの一般的な表には、固ゆで卵の冷蔵保存は1週間までとありますが、卵もできるだけ早く使い切りましょう。
アレンジの例
以下は味や作り方が変わるため、Korea.netのレシピとは別の版として考えてください。
- トンチミの漬け汁を加える。 Maangchiが説明する、牛のスープとトンチミの漬け汁を合わせる伝統的なだしに近づきます。すでに発酵したトンチミを使う場合に限ります。Maangchiは発酵に4〜5日かかると書いています。この記事では試した配合比を示していません。
- 市販の冷麺だしを使う。 Maangchiが伝統的な方法と並べて紹介している、近道の版です。ここで作る牛だしとは別のレシピになります。
- 牛肉の代わりに野菜だしにする。 風味がかなり変わる、別の味わいの料理です。
- ビビンネンミョンにする。 だしを使わず、辛いたれで麺を和える別の料理です。この記事の手順は混ぜないでください。
- 日本のそばを使う。 入手のしやすさを優先した版です。冷麺用の麺とは食感も香りも違います。
韓国料理をほかにも作りたいときは、ひと皿で完結するビビンバ、春雨で作るのでまったく違う食感になるチャプチェ、韓国の食卓に添えるマンドゥも合わせてどうぞ。
よくある質問
冷麺とムルネンミョンは同じですか?
冷麺は韓国の冷たい麺料理の総称です。ムルネンミョンは冷たいだしに入れる型、ビビンネンミョンは辛いたれで和える型を指します。
そばで代用できますか?
冷麺用の麺やそば粉の麺が手に入らないときの代用としては使えます。ただし食感も弾力も香りも違うので、原典のレシピとは別の仕上がりになります。
トンチミは必要ですか?
このレシピには必要ありません。Korea.netの版は牛だしだけです。トンチミの漬け汁は、韓国観光公社とMaangchiが紹介している別の伝統的なだしの型で使われます。
作り置きはできますか?
だしは前もって作っておくのに向いています。だし、具、麺を別々の容器に分け、だしは浅い容器で冷まして2時間以内(気温32°C超なら1時間以内)に冷蔵庫へ入れます。冷蔵庫は4°C以下に保ってください。麺は食べる直前にゆでます。
ビビンネンミョンとはどう違いますか?
ムルネンミョンは冷たいだしを注いで食べます。ビビンネンミョンはだしがなく、辛いたれで麺を和えます。
















