湯気の立つ澄んだスープの中に、折り目をぴたりと押さえた淡い色のパスタが浮かんでいます。ひとつ切り開くと、ほうれん草の緑が散った柔らかな豚肉の具。ドイツ南西部、シュヴァーベン地方の詰め物パスタ、シュヴェービッシェ・マウルタッシェン(Schwäbische Maultaschen)です。
マウルタッシェン、スープでも、鍋で焼き色をつけても
薄くても破れない卵入りのパスタ生地、しっかり閉じた縁、豚肉・燻製ベーコン・ほうれん草にナツメグをほんの少し効かせた具。約7cm角の生地を半分に折り、長方形に仕上げます。
この記事のレシピは、バイエルン州の食文化遺産プロジェクト「GenussErbe」が公開している4人分のレシピ1本に沿っています。小麦粉・卵・油と少量の水で固めの生地を作り、具は炒めた玉ねぎとベーコン、豚ひき肉、卵、ほうれん草、パン粉、パセリを、塩・こしょう・ナツメグで調えます。生地は約7cm角に切って具を包み、塩水で12分ゆでる、という流れです。
鍋から上げたあとの食べ方も、この料理の一部です。地域の資料には、スープに入れる食べ方、ゆでたあとに玉ねぎと一緒に鍋で焼き色をつける食べ方、翌日に切って卵と炒める食べ方が紹介されています。この記事ではまずスープで仕上げ、ほかの食べ方は「アレンジ」の節にまとめました。
ドイツ料理をほかにも作ってみたい方は、ケーゼシュペッツレ、ガイスブルガー・マルシュ、ホッホツァイツズッペも合わせてどうぞ。
断食期に肉を隠した修道士の話は、伝承として伝わる
いちばん有名な由来話は、史実ではなく起源の伝承です。 GenussErbeは、マウルタッシェンを、ほうれん草が具の特徴であるシュヴァーベンの料理と説明しています。マウルブロンの修道士が断食の時期に肉をパスタの中に隠した、という話は、語り伝えられている起源譚のひとつとして紹介されており、事実としては扱われていません。同じ資料が文献として挙げているのは、1831年の「シュヴァーベンの詰め物入り麺」という記述です。
GenussErbeは、「Schwäbische Maultaschen」が2009年にEUの地理的表示(PGI、ドイツ語でg.g.A.)として登録されたことを記しています。EU官報に載った申請書には、対象となる地域、生地や具に使える材料の範囲、形やサイズの複数の基準、ゆでるか焼いて食べることが書かれています。さらに、もともとは聖木曜日(復活祭前の木曜日)の伝統食で、のちに一年中食べる料理になったとも説明されています。
ただし、これらの規則は保護された製品名についての取り決めです。家庭の台所で作った料理を何と呼んでよいかを、簡単に判定する基準ではありません。
シュヴァーベンの家庭では、形は家ごとの習慣です。アルプシュタットの観光局は、生地を折る家と巻く家があること、配合や大きさも家庭によって違うことを紹介しています。折るか巻くかは家ごとの流儀で、この記事ではGenussErbeのレシピに合わせて、折りたたんだ長方形に作ります。
この料理に使える食材・調味料
材料選びと代用のこと
小麦粉: こねて固くなめらかな生地になる、一般的な小麦粉を使ってください。
ベーコン: 燻製のベーコンなら、具に強めの燻香がつきます。燻製していない豚の脂身に替えると、燻香は弱くなります。
ほうれん草: 生の葉200gを洗い、水気をしっかり切って細かく刻みます。冷凍品を使うなら解凍して水気を絞りますが、重さと水分量が変わります。
パン粉: 乾燥パン粉が粗いときは、細かく砕いておくと具の中に均一に散ります。
豚ひき肉: 牛豚合いびき肉に替えたり、ほうれん草をほかの青菜に替えたりすると、このシュヴァーベン風レシピではなく、家庭でのアレンジになります。
使う道具
- 麺棒(パスタマシンがあれば使ってもかまいません)
- 包丁
- ボウル
- フライパン
- 卵黄を塗る小さなハケかスプーン
- 縁を押さえるスプーン
- ゆでるための大きくて広い鍋
- 網じゃくし
- 生肉用に分けたまな板と道具
- 中心温度を測るための調理用温度計
失敗したときの直し方
| 困りごと | 考えられる原因 | 直し方 |
|---|---|---|
| 生地がぼろぼろ、伸ばすと割れる | 水が足りない | 水を少しずつ足して、もう一度こねる |
| 閉じ目が開く | 縁に粉が残っている、詰めすぎ、縁に具がのっている | 粉を払い、卵黄で湿らせる。縁に具をのせず、スプーンでしっかり押さえる |
| 具が水っぽくゆるい | ほうれん草の水切り不足 | 洗ったあと、刻む前に水気をよく切る |
| 鍋の中で破れる | 湯が強く沸きすぎている | 一定にぐつぐつ泡立つ程度に火を弱め、包みをそっと動かす |
| 中まで火が通ったか不安 | 厚い包み、鍋に入れすぎ | 中心が75°Cで1分以上に達したか確かめ、足りなければ静かに加熱を続ける |
生の肉と卵は、加熱しない食べ物から離しておき、使ったまな板、包丁、ボウルは洗ってください。具は生で食べないでください。ゆでたマウルタッシェンを取っておく場合は、浅い容器に入れて急いで冷まし、すぐに冷蔵庫へ入れます。温め直すときは、中心まで熱くなるまで加熱してください。保存日数や冷凍の方法は、ここでは案内していません。
アレンジ、スープ、玉ねぎ、卵、別の形
| アレンジ | 作り方 | 備考 |
|---|---|---|
| スープ仕立て | ゆでた包みを澄んだ肉または野菜のスープに入れる | この記事の仕上げ |
| 玉ねぎ焼き | ゆでたあと、炒めた玉ねぎと一緒に鍋で焼き色をつける | 地域の資料に紹介されている食べ方 |
| 翌日の卵炒め | ゆでたマウルタッシェンを切り、卵と炒める | 翌日の食べ方のひとつ |
| 野菜の具 | EUのPGI資料には野菜の具も認められている | 別のレシピ。豚肉を抜くだけではベジタリアン向けになりません |
| 折らずに巻く | 家庭によっては、折らずに生地を巻く | 角形に合わせた生地と具の比率は、巻く形には合わないことがあります |
よくある質問
何個できますか?
分量は4人分です。できる個数は、生地をどれだけ薄く伸ばすか、1枚にどれだけ具をのせるかで変わります。
スープに入れず、焼いてもいいですか?
はい。手順8のようにゆでてから、炒めた玉ねぎと一緒に鍋で焼き色をつけます。残ったものは、翌日に切って卵と炒めることもできます。
マウルブロンの修道士が本当に作り出したのですか?
その話は、この料理について語られている起源譚のひとつで、確かな事実ではありません。文献としては、1831年に「シュヴァーベンの詰め物入り麺」が記されていることが挙げられています。
具を変えてもいいですか?
変えられますが、味と性格が変わり、このシュヴァーベン風のレシピではなく、自分なりのアレンジになります。ここで触れた2009年のEU申請書には、保護された名称についての地域と材料の条件が書かれています。現在の法的な扱いや、変えた料理を何と呼べるかは、この記事では確定していません。
冷凍できますか?
冷凍の方法や保存期間は、ここでは案内していません。ゆでたものを取っておく場合は、浅い容器で急いで冷まし、すぐ冷蔵庫に入れ、温め直すときは中心まで熱くしてください。
同じ国の料理は、ドイツの料理もご覧ください。
















