卵を薄く広げた鉄板に、焼きたてのパラタを重ねる。卵が生地に貼りついたら裏返し、焦げ目のある鶏ケバブと玉ねぎ、ライムをのせて紙ごと巻く。コルカタのカティロールは、片手で食べられる形の中に、熱い生地、肉の香ばしさ、生の薬味の歯ざわりを一緒に閉じ込めた屋台料理です。
家庭で味を近づける鍵は、タンドールを用意することではありません。薄くのばしたパラタに油の層を作り、鶏肉を小分けにして焼き、仕上げにライムの酸味を重ねることです。日本のフライパンでも、鶏肉の焼き色と玉ねぎの歯ごたえを残せば、ソースに頼らない食べ応えのある一本になります。
アムチュールは、ライムだけでは出しにくい乾いた酸味をチャトニへ足す材料です。普段からインド料理を作る人なら少量ずつ使えますが、今回だけならライムで代用できます。商品ページで確認できるのは300g入りという容量なので、使い切れる頻度を考えて選んでください。
コルカタの屋台から広がった、包んで食べるケバブ
カティロール(kathi roll)は、パラタにケバブをのせて巻くコルカタの軽食です。地元メディアが紹介する基本形では、薄い生地の上に串焼きの肉を置き、玉ねぎ、青唐辛子、ライムを添えて紙で包みます。卵を先に焼いてパラタへ貼りつける形もあり、肉と薬味を片手で食べられる一食にまとめます。鉄串へ移る前に竹串を使っていたという話から、串を意味する「kathi」が名前に残ったとする説明も現地報道に見られます。Indian Expressは、コルカタのニザムズが1932年に創業し、料理の発祥店として広く語られていると紹介しています。
一方、ニザムズを発祥店とする話も、英国人客が手を汚さず食べたいと望んだことがきっかけだという逸話も、今回確認した記事では伝承として紹介されています。発明者や正確な年を決める同時代資料までは確認できないため、確定した起源としては扱いません。料理の魅力は、誰が最初に巻いたかだけでなく、串から外したケバブをパンと薬味で包み、通りを歩きながら食べられる形にしたところにもあります。
コルカタの店で出る具は一通りではありません。玉ねぎ、青唐辛子、ライムを中心にする店がある一方、卵を使うか、アムチュールやチリソースを添えるか、野菜を足すかは店や注文で変わります。コルカタ出身の料理ブログ筆者は、若い頃には「egg roll」と呼ぶ記憶が強く、きゅうりやケチャップを使う家庭の味も紹介しています。これは一人の記憶ですが、カティロールが固定された一つの配合ではなく、食べる人に合わせて具を変えられる料理であることが伝わります。NDTV Foodの現地記事も、ダンス教室の後や祭りの時期に行列ができた記憶と、店ごとの味の違いを記しています。
今回の家庭版では、ヨーグルトとスパイスで下味をつけた鶏もも肉、層を作って焼くパラタ、卵、玉ねぎ、ライムを組み合わせます。店の鉄板や串焼きの煙まで再現するのではなく、鶏肉の焼き色、パラタの層、生の薬味の酸味と歯ざわりを一口にそろえるのが狙いです。
日本の台所で作るときに残したい味
現地レシピでは、パラタにmaida(精製小麦粉)を使う例が多く見られます。日本の家庭では中力粉が扱いやすく、見つからなければ薄力粉と強力粉を同量混ぜると、薄力粉だけよりのばすときに破れにくくなります。現地のmaidaと同じ粉ではないため、焼き上がりは少し軽く、層のほぐれ方も変わります。水は一度に加えず、粉がまとまり、指に少し吸いつく柔らかさで止めると調整しやすくなります。
ケバブは本来、串を使って強い熱で焼く形がよく知られていますが、家庭のフライパンでは鶏肉を一度に詰め込まないことが大切です。肉から水分が出ても蒸し煮にせず焼き色がつくよう、二回に分けて焼ける大きさのフライパンを選びます。肉は約2cmにそろえ、食中毒予防の目安として中心部を75℃で1分以上加熱します。温度計を使わない場合も、最大の一切れを割って中心まで白く火が通ったことを確認し、赤みや透明な肉汁が残るなら追加加熱してください。厚生労働省は家庭での加熱食品について、中心部75℃で1分間以上を目安に示しています。
途中で見つける、味の決め手
チャトニの食感で器具を選ぶ
青唐辛子やしょうがを細かくするだけなら包丁で刻めますが、ハーブとライムを一体にした濃いペーストを作るときは、すり鉢で押しつぶすと葉の粒が残りにくくなります。花崗岩の乳鉢セットは、チャトニやしょうが・にんにくのペーストを繰り返し作る家庭向けです。今回だけなら包丁、手持ちのすり鉢、小型ミキサーで代用できるので、出番の頻度が低い人は買い足さなくてかまいません。商品ページでは、すり鉢とすりこぎのセット内容に加え、置き場所に合う器の大きさを確認してください。
失敗したときは、食感の原因から直す
生地がのばす途中で縮むときは、こね不足ではなく休ませる時間が足りないことがあります。10分布巾をかけて置き、再び強く押さずにのばしてください。反対に、生地の縁が割れるなら乾燥か水不足です。手をぬらして表面をなで、5分置いてから扱うとまとまりやすくなります。
パラタが硬くなる原因は、粉の配合よりも、焼きすぎや焼いた後の乾燥が多くあります。両面の斑点が出たところで火から下ろし、重ねて布巾で包みます。冷めて硬くなった場合は、フライパンに数滴の水を散らしてふたをし、弱火で20〜30秒温めます。水を直接生地へかけるとべたつくため、蒸気で戻してください。
鶏肉が煮たように白くなり、焼き色がつかないときは、フライパンに詰め込みすぎています。肉をいったん取り出して水分を拭き、空いたフライパンを熱してから半量ずつ焼き直します。すでに中心まで火が通っている肉は、焼き色をつけるために長く加熱し続けず、熱したフライパンで表面だけ短く焼きます。中心が生なら、色だけで判断せず、75℃で1分以上になるよう弱火で追加加熱してください。
卵がパラタに付かずフライパンへ残る場合は、卵を広げすぎたか、表面が固まり切ってから生地を置いた可能性があります。次の一枚は油を薄く塗り、卵の縁が固まり始めた時点でパラタを重ねて、手のひらかへらで全体を軽く押さえます。巻いた後に生地が破れるときは、具の量を減らし、玉ねぎやきゅうりの水を拭いてからのせます。
店や家庭で変わる具の組み合わせ
カティロールは、肉とパラタの組み合わせを保ちながら、具の足し引きで印象を変えられます。NDTV Foodの鶏肉レシピはヨーグルトとスパイスで下味をつけ、家庭料理ブログでは玉ねぎ、きゅうり、ライム、ケチャップなどを使う例が紹介されています。屋台の味を手がかりにしつつ、家では手に入る野菜と辛さで調整できます。
- 卵チキンロール:このレシピの基本形です。卵をパラタに貼り、焼いた鶏肉、玉ねぎ、ライムを包みます。
- マトンロール:鶏肉を小さめのラム肉に替えます。厚みがそろうよう切り、中心まで十分に火を通してください。羊肉の香りが強いので、玉ねぎとライムを多めにするとまとまりやすくなります。
- パニールロール:鶏肉の代わりに角切りパニールを使い、緑のチャトニを多めにします。インドのベジタリアン向けレシピにも、パニールと青唐辛子・ミント・コリアンダーのチャトニを合わせる例があります。Dassana’s Veg Recipesはアムチュールやチャートマサラを酸味の選択肢として挙げています。
- ポテトロール:ゆでたじゃがいもを粗くつぶし、クミンと塩で味をつけます。肉を使わない軽食にしやすく、きゅうりの歯ごたえを足すと重さを抑えられます。
- 卵だけのロール:鶏肉を省き、卵を2個使って生地に厚みをつけます。玉ねぎ、ライム、チャトニを増やすと、具が少なくても味がぼやけません。
辛さが苦手なら青唐辛子を抜き、チャトニを控えめにしてライムを添えます。ケチャップやチリソースを加える家庭版もありますが、最初は薬味を少量ずつ重ねると、肉のスパイスと生地の香ばしさを残せます。
食卓での食べ方、保存と温め直し
焼きたては生地の層がほぐれ、卵の香ばしさと肉の熱が立つうちに食べます。紙で包むと下側から具がこぼれにくく、屋台で歩きながら食べる形にもつながります。副菜を添えるなら、酸味のあるピクルスや薄切り野菜が合います。チャトニ、ライム、青唐辛子は別に出し、食べる人が辛さと酸味を調節できるようにします。
作り置きは、鶏肉、パラタ、薬味を別々に保存します。加熱した鶏肉は粗熱を長く室温に置かず、清潔な密閉容器に入れて冷蔵し、翌日までを目安に食べ切ります。再加熱は中心まで熱くし、温め直した肉を再び冷蔵して何度も出し入れしないようにします。パラタは冷めたら一枚ずつ紙を挟んで包み、冷蔵なら翌日まで、長く置く場合は冷凍します。フライパンで温めるときは、弱火でふたをして蒸気を少し当て、最後にふたを外すと表面が戻りやすくなります。
完成したロールは、チャトニの水分で生地が柔らかくなるため、巻いた状態での保存には向きません。持ち運ぶ場合は具と生地を分けて包み、食べる直前に組み立てます。生の鶏肉を扱ったまな板や箸は、焼いた肉や野菜に使う器具と分け、作業後に洗剤で洗ってください。
栄養情報(1本分の目安)
エネルギー約620kcal、たんぱく質約36g、脂質約23g、炭水化物約63g、食物繊維約3g、食塩相当量約2.2gです。鶏肉の部位や粉、油、チャトニの量で変わる概算で、製品表示に基づく数値ではありません。

よくある質問
パラタは市販のトルティーヤで代用できますか?
できますが、食感と香りは変わります。トルティーヤは層が少なく軽いため、フライパンで表面に油を薄く塗って焼き、卵をまとわせると具を包みやすくなります。層のほぐれるパラタらしさを重視するなら、このレシピの生地を使ってください。
アムチュールがなくても作れますか?
作れます。ライム果汁をチャトニに加えれば酸味が出ます。アムチュールは水分を増やさず乾いた酸味を足すための選択肢で、必須ではありません。ライムを使う場合は小さじ1ずつ加え、ハーブの香りが消えない量で止めます。
チャトニはミキサーで作れますか?
作れます。小型ミキサーへハーブ、しょうが、青唐辛子、塩、ライムを入れ、回らない場合だけ水を小さじ1ずつ足します。水を入れすぎるとロールが湿るため、スプーンからゆっくり落ちる濃さで止めてください。包丁で細かく刻み、ライムを混ぜる方法でも代用できます。
鶏肉はむね肉でもよいですか?
使えます。もも肉より脂が少なく乾きやすいため、厚みをそろえて焼き、中心まで火が通ったら加熱を止めます。ヨーグルトのマリネは保水の助けになりますが、加熱しすぎを補えるわけではありません。中心温度75℃で1分以上を守りながら、焼き続けないことが大切です。
作ったカティロールは保存できますか?
巻き上げた状態での保存は避け、鶏肉、パラタ、薬味を別々に密閉して冷蔵します。加熱した鶏肉は粗熱を長く室温に置かず、翌日までを目安に食べ切ってください。食べるときは鶏肉を中心まで十分に温め、生の鶏肉に触れた器具をそのまま使わないようにします。チャトニとライムは食べる直前に添えると、生地が湿りません。














