とうもろこしの粒が、豆とかぼちゃをまとめる鍋
鍋の中で、乾いたとうもろこしの粒が水を吸い、豆の皮が少しずつやわらかくなります。かぼちゃを加えると、角のある煮汁に甘みが溶け、最後に葉野菜を落としたところで、粒・豆・野菜の境目がゆるくつながります。カテマックは、香辛料を重ねて味を押し出す煮込みではありません。素材を柔らかくする時間と、別添えの辛いサンバルで、ひと鍋の味を組み立てます。
カテマック(Jagung Katemak)は、インドネシア領の西ティモールを含む東ヌサ・トゥンガラで伝えられてきた、とうもろこしと豆、かぼちゃ、葉野菜の料理です。現地の食文化資料では、硬いとうもろこしは先に煮、若い粒ならかぼちゃや豆と一緒に火を入れる作り分けが紹介されています。日本で乾燥粒を使う場合も、この順番を守ると、かぼちゃが崩れる前にとうもろこしへ火を通せます。NTTの食文化資料が挙げる豆の呼び名は地域で変わるため、ここでは緑豆と黒目豆を使って再現します。
乾燥とうもろこしが見つからないときは、甘いコーン缶ではなく、粒の厚みを残したホミニーを使うと、食感の方向を外しにくくなります。下処理を短くできる一方、乾燥粒の香ばしさや芯の残り方は同じではありません。
ホミニーを選ぶのは、乾燥とうもろこしを一晩浸す時間が取れない人、または近所で食用の硬い粒が見つからない人です。購入時は内容量と缶詰のセット内容を確認し、上の材料表で使う量だけを汁切りして、残りは缶の表示に従って扱います。甘いスイートコーンしかない場合は、この代替を無理にせず、豆とかぼちゃの煮込みとして別料理にしたほうが味の芯が残ります。

西ティモールの食卓で、粒と豆は一緒に主役になる
東ヌサ・トゥンガラの乾いた土地では、とうもろこしは粉や飾りではなく、食卓の量を支える穀物です。資料に記されたカテマックの五つの主材料は、とうもろこし、かぼちゃ、kacang nasi、kacang polong、かぼちゃの葉。ほかの野菜、唐辛子、肉、塩魚を足す場合もあります。日本のレシピで黒目豆を選んだのは、豆の種類を断定するためではなく、煮崩れにくく、粒の存在感を残せる代替として扱うためです。
カテマックとよく似た料理として、国境の向こうの東ティモールにはバタール・ダーン(Batar Da'an)があります。英語の現地ガイドやレシピ資料でも、とうもろこし、緑豆、かぼちゃ、葉野菜を煮る料理として紹介されています。ただし、バタール・ダーンは東ティモールの料理名であり、今回のカテマックはインドネシア領西ティモールの料理名です。材料が近いからと一つにまとめず、島の同じ気候帯に似た鍋料理がある、と捉えるほうが正確です。Air UniversityのTimor-Leste field guideも、バタール・ダーンを東ティモールの食事として記しています。
また、同じ西ティモールのとうもろこし料理でも、ジャグン・ボセは別の表情を持ちます。とうもろこしの皮を除く下処理をして豆と煮込み、ココナッツミルクを加えて粥に近づける料理です。カテマックは粒と野菜を残し、サンバルを別に置く。その違いが、同じ土地のとうもろこし料理を食べ分ける手がかりになります。
途中で見つける、味の決め手
サンバルを粗く仕上げる道具
サンバルを粗くつぶす道具があると、唐辛子・玉ねぎ・バジルの香りを残したまま短時間で仕上げられます。
天然花崗岩のスパイス乳鉢セットを選ぶ条件は、サンバルを何度か作り、包丁で刻むより粒の大きさをそろえたい場合です。乳鉢や包丁があれば買い足し不要です。買う前に商品ページで鉢の内径・すりこぎの付属・洗浄方法を確認し、少量の唐辛子を粗くつぶします。完全なペーストにすると香りと食感が重くなるため、初回は包丁で作ってから必要性を判断しても構いません。
粒の硬さと煮汁を調整するコツ
とうもろこしの芯だけが硬いとき
水分が足りないまま強火にすると、粒の表面だけが割れて鍋底が焦げます。熱湯を足し、ふたを少しずらして弱火で10分ずつ延長してください。豆とかぼちゃがすでに柔らかい場合は、具を一度すくってとうもろこしだけを煮、戻せば崩れすぎを防げます。
ホミニーを使ったのに芯が硬い場合は、缶の種類が食感の強いものか、加熱が足りない可能性があります。とうもろこしの代わりに甘いコーン缶を足しても、煮汁へ甘みだけが出やすいため、まずは湯を足して鍋全体を温め直します。
かぼちゃが先に崩れたとき
崩れたかぼちゃは失敗ではありません。煮汁に自然なとろみがつき、粒を包む方向へ味が変わります。ただし豆が硬い段階でかぼちゃが溶けた場合は、追加のかぼちゃを入れずに、熱湯を足して豆へ火を通します。次回は豆の中心が柔らかくなってから、かぼちゃを入れる時間差を長くしてください。
水っぽい、または重すぎるとき
水っぽい場合は、ふたを外して弱火で5〜10分煮詰め、かぼちゃを一片だけつぶします。重すぎる場合は熱湯を少しずつ加えます。小麦粉や片栗粉でとろみを足すと、とうもろこしと豆の煮汁ではなく、別のスープの口当たりになるため使いません。
保存するとき
サンバルと煮込みは分け、煮込みが温かいうちに大きな鍋のまま放置せず、浅い保存容器へ小分けします。粗熱が取れたら冷蔵し、冷蔵は3〜4日、冷凍は2〜3か月を目安にしてください。FoodSafety.govの冷蔵・冷凍保存表でも、野菜や肉入りのスープ・シチューは冷蔵3〜4日、冷凍2〜3か月とされています。再加熱は中心まで熱くし、冷凍したものは一度に食べる分だけ温めます。
ココナッツミルクを加える地域差と、買う判断
カテマックの標準版は、とうもろこしと豆のだしを水で伸ばし、かぼちゃの甘みと葉の香りを残します。ココナッツミルクを足すと、同じ材料でも口当たりが丸くなり、ジャグン・ボセのような粥寄りの方向へ近づきます。これはカテマック全体に共通する必須条件ではなく、家庭や地域の変化として扱うのが安全です。
ココナッツミルク 400ml 缶を使う場合は、煮込みの水を200ml減らし、かぼちゃを加える段階でココナッツミルク200mlを加えます。リンク先では缶の容量とセット数を確認してください。買う価値があるのは、カレーやラクサにも使い回し、開封後を数回の料理で使い切れる場合です。余りを別の香りへつなげるなら、ナシ・ウドゥックのようなココナッツ料理にも回せます。今回だけ軽い煮汁を作りたいなら、牛乳や豆乳で代用せず、カードを見送って水仕立てにしてください。乳製品の甘い香りは、この料理の地域差とは別の味になります。
食卓での盛り付け
深めの器へ、とうもろこしと豆を先にすくい、かぼちゃと葉を上に置きます。煮汁だけを多く注ぐとスープに見えるため、粒を一口に複数残すのが盛り付けの目安です。サンバルは小皿に置き、塩魚を使った場合は別添えにします。
カテマック自体に穀物と豆が入るので、白いご飯を必ず添える必要はありません。煮汁を多めにした軽い仕上げなら少量のご飯と合わせてもよいのですが、その場合はバタール・ダーンのような近隣地域の食べ方と混ざりやすくなります。どの料理として食べるかを決めてから、水分量を調整すると、食卓の説明も味もぶれません。

カテマックについてのよくある質問
カテマックはどこの料理ですか?
インドネシア領の西ティモールを含む東ヌサ・トゥンガラの料理です。資料では、クパン、ティモール・テンガ・スラタン、ティモール・テンガ・ウタラ、ブル、マラカなどインドネシア側の地域と結び付けて説明されています。国名を省いて「ティモール料理」とだけ書くと、東ティモールのバタール・ダーンと区別しにくくなるため、記事では西ティモールと記します。
バタール・ダーンと同じ料理ですか?
同じ料理ではありません。とうもろこし、豆、かぼちゃ、葉野菜を煮る構成は近いものの、バタール・ダーンは東ティモールの料理名です。The Southeast Asian Tableの英語資料やCRS Rice Bowlのレシピを見比べると、同じ島の気候帯で似た食材が使われることは分かりますが、国・料理名の説明は分けておくべきです。
乾燥とうもろこしを一晩浸さず作れますか?
ホミニーなら浸水を省けます。材料表の水分量と手順4の投入順を守り、豆だけは戻してください。生のとうもろこしや甘いコーン缶は火の通りと甘みが違うため、乾燥粒版の代わりとして同じ時間で煮ることはできません。
肉や魚を加えてもよいですか?
資料では肉や塩魚を加える場合があるとされています。最初の一鍋は、とうもろこし・豆・かぼちゃ・葉の関係を確かめるため、魚はサンバルへ少量だけ使う設計にしました。肉を加えるなら別鍋で火を通してから、完成前に合わせると、乾燥豆の煮え具合を見失いません。
カテマックはヴィーガン料理ですか?
煮込み本体は、塩魚を使わず、野菜だしまたは水で作れば植物性にできます。バジルと唐辛子のサンバルも魚なしで作れます。ただし、ホミニー缶や市販のだし、調味料の原材料は商品表示を確認してください。












