青いバナナがほどける、バジェの大鍋
サンコーチョは一つのレシピではない
| 地域・呼び名 | 鍋に入りやすいもの | 食卓で見える違い |
|---|---|---|
| バジェ・デル・カウカ/sancocho valluno | 牛肉、牛あばら、青いプランテン、ユカ、hogao | アボカド、白いご飯、ajiを添え、ガインブラでは鶏と牛テールの組み合わせもある |
| バジェ・デル・カウカ/ガインブラの版 | 雌鶏、牛テール、青いプランテン、ユカ、香味野菜 | 鶏肉を取り出して焼き直す習慣や、とうもろこし・焼きプランテンなど家庭差がある |
| 太平洋岸/チョコ | 魚、塩漬け肉、燻製肉、鶏、青いプランテン、ユカ、じゃがいも | culantro cimarrón(シラントロ・シマロン)を使い、魚や燻製の香りが主役になる版がある |

途中で見つける、味の決め手
アボカドを添えて分かる、地域の食卓
サンコーチョの由来を一つの発祥地や固定された配合だけで説明するのは難しいです。コロンビア文化省の資料でも、サンコーチョは地域や家庭によって複数の形で記録されています。名前が同じでも、鍋に入る肉や魚、根菜、香草、添え物が変わる。だから、この料理を知るときは「正しい材料を一つに決める」より、どの土地の、どんな集まりで作られる鍋なのかを先に見る方が実像に近づきます。
大鍋は家族の集まりや祭り、mingaのように人が力を合わせる場と結びついてきました。完成した一皿を個別に仕上げる料理ではなく、肉と根菜を煮る鍋を囲み、取り分けた器へ熱いスープを注いで食べる料理です。アボカド、白いご飯、ajíは別皿に置き、最初は澄んだ肉だしと青いプランテンの粘り、ユカのほろりとした食感を確かめ、次の一口から辛味や酸味を各自で足します。ガインブラで記録される、煮た鶏肉を取り出して表面を焼き直す食べ方もありますが、これは今回の鍋に必ず加える工程ではありません。
地域差は、同じ名前の鍋へ何でも足してよいという意味ではありません。バジェ・デル・カウカのsancocho vallunoには牛肉や牛あばら、青いプランテン、ユカ、hogao、シラントロ類が記録され、ガインブラの版では雌鶏や牛テール、香味野菜と添え物の組み合わせが前に出ます。一方、太平洋岸チョコの記録には魚、燻製肉、塩漬け肉、鶏、根菜、culantro cimarrónが登場します。魚の湯気と牛テールの湯気は、同じ料理名で括っても別の土地の食卓を映します。
日本の台所では成鶏をそのまま手に入れにくいため、今回の4人分は骨付き鶏肉と少量の牛テールへ翻案しました。青いプランテンとユカは、甘いバナナやじゃがいもへ機械的に置き換えず、料理の輪郭を支える材料として残します。culantro cimarrónは香りの異なる現地の香草なので、入手しやすいパクチーを近似として使います。現地の一家庭の唯一の正解を再現するのではなく、肉だし、根菜、hogao、別添えの辛味と酸味という構造を日本の鍋へ移す。その線引きが、このレシピで守る部分です。

日本で材料を置き換えるときの線引き

鍋を翌日へ回すときのアレンジ














